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ステファン・クラセン「サハラ以南アフリカの貧困と格差を測る」

Stephan Klasen “Measuring Poverty and Inequality in Sub-Saharan Africa: Knowledge Gaps and Ways to Address them“(blogs.worldbank.org, 29 July, 2014)

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ケニア、キベラにあるスラムを岩の上に座って見下ろす少年
​@Gates Foundation

アフリカ中の家計調査の質と量の向上のためにここ数十年費やされた数億ドルにも関わらず、私たちはサハラ以南アフリカにおける貧困と所得格差の水準と傾向について、非常に大雑把にしか把握していない。この残念な事態は多くの理由に起因している。

第一に、アフリカ諸国の統計能力は未だに弱く、調査の資金は援助者のお金に強く依存している。そのせいで調査作業の質、調査プログラムの当事者意識、そして何よりも深刻なことに調査の一貫性と比較可能性が低下しているのだ。この点について援助者は役に立っていない。彼らは大抵、調査の設計について独自の優先順位や目標(これは年によって変わり、それが調査票に反映される)、スケジュールを持っているうえ、時には貴重な国内の人的資源を彼らの調査プログラムに割かせることによって統計能力を損なうことすらある。

当事国政府もまた、持続的な統計能力を育て、自国の調査プログラムについて当事者意識を発揮することについてはあまりにも少なすぎる関心しか抱いていない。さらに、調査に一貫性がない場合、そうであってほしい方向へ数字をいじる余地も増すことになる。

最後に、貧困と格差についての統計はアフリカで作り上げるにはとりわけても難しいものだ。ほとんどの貧乏人にとって、強い季節性や不規則なショックのせいで所得は非常に不規則なものであり、したがって補足するのが難しい。所得の代替として支出を使うことによってより信頼性のある情報がえられる可能性はある。しかしここでもまた、支出の重要な面(自己所有の家に住むことによる「帰属支出」1 や、自宅以外での食料への支出、自家消費2 への支出など)をどうすれば正確に把握できるかという問題や季節性によって、正確な計測は難しくなる。

所得分配の頂点にも格差の計測をとても難しくしてしまう深刻な計測問題がある。お金持ちは調査に参加しないことがよくあるのだ。彼らの所得を推定するのに納税情報を使用することによっても、この問題は回避できない。彼らの所得と財産の多くは海外に保有されており(おまけに富裕国の金融制度と国際タックスヘイヴンによる複雑さもある)、したがって追跡が難しい。フランスの経済学者、トマ・ピケティによる各国家の頂点所得者についてのデータベースには南アフリカとモーリシャスの最近のデータしか含まれていないことも、したがって驚きではない。

では何をすべきなのだろうか。多くの研究者たちは、家計所得と支出の片方あるいは双方の調査をやめ、そのかわり代替指標に基づくよう大抵の場合に提案してきた。そうした指標には、より比較しやすく比較的頻繁に行われる人口及び保健調査による資産指標を使うことや、衛星による夜間照明画像を使う3 、あるいは携帯電話記録やツイート、ブログ等々を用いたあらゆる類のビッグデータを利用するといったことなどがある。残念ながら、これらの提案のいずれも信頼できる貧困と格差のデータをもたらすという目的にかなうものじゃない。

(資産の数を数えたり、統計的な手続きを用いて資産指数を作り出すといった)資産指標は必要性や利用可能性が大きく異なる各国間での資産保有を比較する困難を抱えている。さらに悪いことに、こうした指標は貧困の減少速度を実質的に過剰評価してしまう。なぜなら、時と共に進む資産蓄積、すなわち「資産ドリフト」の存在を示す強力な証拠があるものの、家計は全く貧乏なままに携帯電話やテレビといった資産を蓄積しているからだ。家計がこれらの資産を蓄積するのは往々にして、これらが比較的安くなっていっており、これらに対して選好がシフトしており、またしばしば家計はこれらの資産を処分しないからだ。でもこれはそうした家計が結果として貧困から多少なりとも上向いているということを意味はしない。夜間照明の衛星画像を経済活動の代替として用いるのも不十分だ。これは平均的な繁栄具合について非常に大雑把な感じを教えてくれるかもしれないが、貧困と格差を評価するにあたっては深刻な限界にぶち当たる。そしてこうした指標に頼ることは、当然ながらねじまがったインセンティブを作り出してしまう。ひとたび夜間照明が貧困の代替指標として用いられれば、それが貧乏人の助けになるかどうかとは関係なしに夜間照明を作り出すのを目指すプログラムが増加することだろう。

ビッグデータ、つまり携帯電話記録やソーシャル・ネットワーク、あるいはインターネットのトラフィックによって生成された情報は潜在的には貧困や保健問題、その他の課題について興味深いヒントをもたらしてくれる可能性がある。しかしこれらは非常に選択的な情報に基づいており、往々にして最貧困者を除外してしまう。こうしたバイアスと選択性の問題を修正するためには詳細な家計調査の情報が必要となる。したがってこれらは、各階層の家計をしっかりと含んだ非常に優れた家計調査が利用可能な状況においてのみ有用となるのだ。しかしまさにそうした枠組みこそが多くのアフリカ諸国においては欠けている。

これら全てが解決策でないとしたら、潜在的な解決策としては何があるだろうか。根本的な問題を解決しなければならないのだろう。つまり、国内の統計局の貧弱な能力だ。ここにおいて、国内と国際的な人的資源の合わせ技と(有用かつ必要ならば)それに関連する技術援助によって、統計能力をこの先20年で信頼性がありかつ予測可能な方法で徐々に向上させていくべきだ。これに関連して、個々のよりも(例えばラテン・アメリカで成功裏に終わったMECOVI調査プログラムで行ったような)複数年調査プログラムの促進と支援が強調させられるべきだ。これをうまく機能させるためには、IMFや世界銀行、各援助国、地域開発銀行とともに世界基金などあらゆる人を巻き込む必要があり、その運転席には当事国の政府が座る。

また、データのクリーニングへの気配りの強化や早期でのデータ公表をはじめとして、国内統計当局におけるインセンティブと透明性の強化のためにより多くの資源が投入されなければならない。それには納税情報や、国際資本取引の追跡強化、財産の評価もまた含まれるべきだ。さらに、すぐにでも同時並行で貧困の多元的評価も組み込むべきだ。多元的な貧困の指標の多くは、ひとたび信頼性がありかつ比較可能な調査プログラムが実施されればとても簡単に追跡できるため、ここには巨大な可能性が眠っている。

こうした作業の多くは困難で退屈で高価なものである上に、すぐには結果はほとんど出ない。しかし長期的な便益が過去の努力全てを上回る見込みは高い。

本稿は、貧困削減に関するアフリカ関連研究を扱う新しいブログシリーズの最初の投稿です。

(本エントリは世界銀行のウェブサイト使用条件に従って掲載しています。The World Bank: The World Bank authorizes the use of this material subject to the terms and conditions on its website, http://www.worldbank.org/terms.)

  1. 訳注;ふつう自己所有の家に住んでいる人も、借家の人が払っている賃借料に相当するものを支出していると見なすが、じゃあその自己所有の家の評価をアフリカでどうやるの?という趣旨。 []
  2. 訳注;おらの畑のモロコシなんだからおらが食っても問題ねーべ、といった場合にも支出をしていると考えるが把握は困難という趣旨。 []
  3. 訳注;この点に関する当サイトの関連記事としてはここを参照。 []

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