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タイラー・コーエン「Twitterではフェイクニュースの方が拡散しやすい?」

[Tyler Cowen “Does fake news spread faster on Twitter?” Marginal Revolution, March 18, 2018]

たぶん読者も覚えているだろうけど,Twitterではフェイクニュースの方が素早く広く拡散するというニュースが先週あちこちで流れた.たとえば,『ニューヨークタイムズ』のスティーブ・ロアもこれを取り上げている.彼はいまひとつわかっていない:

この研究の著者たちによれば,人々は虚偽のニュースの方を好むのだという.

その結果として,ソーシャルネットワークでは,フェイクニュースは事実のニュースよりもすばやく広く深く伝播する.

これは完全な誤解に思えた.他にも誤解している解説者は見つかるはずだ.そこで,Vosoughi, Roy, & Aral によるもとの論文にもういちど当たることにした.さて,再読してなにがわかったと思う?

  1. データは「噂のカスケード」のみに限定されている.論文では,たとえば本当のニュースと虚偽ニュースの相対的な比率を確立させてはいない.主な問いはこういうかたちをとっている――「噂のカスケードのデータセットの範囲で,こうしたカスケードについてなにが言えるだろうか?」
  2. とはいえ,本当のニュースはカスケード以外のメカニズムをとおして大きな影響をもたらすという点は事実かもしれない(し,ちがうかもしれない).たいていの人は 2 + 2 = 4 だと信じているけれど,それはべつに,噂のカスケードをとおして聞いたからではないだろう.
  3. 噂のカスケードの全領域において,この論文は平均的な影響を計測している.だからといって,末端部分ではフェイクニュースの方が強力だということにはならない.たとえば「ヒラリー・クリントンはサタンだ」という噂はかなり強力だったかもしれないけれど,だからといって,個別の新たな噂がこれと同じ威力をもてるわけではない.「2 + 2 =5」も,とうていリツイートでこれに並ぶところまでいかないだろう.
  4. 全体として,この論文の研究結果は,別の問題/データ論議を思い起こさせる.少なくとも昔は,大人向け映画よりも子供向け映画の方が収入は大きかった.Michael Medved が強調しているとおりだ.だからといって,ひたすら子供向け映画ばかりつくれば手っ取り早い儲けになるわけではない.もしかすると,ごく一握りの子供向け映画が――おそらくは子供らの仲間内の同調によって――挙げられる限りの収益をあらかた吸い取ってしまい市場を支配するのが実態かもしれない.すると,カスケードを原動力とする映画の領域において,子供向け映画は本当に強力そうに見えるし,事実として本当に強力だったりするだろう.だからといって,カスケードを原動力とするカテゴリで支配的に見えたとしても,子供向け映画が全体として文化的影響力で〔大人向け映画を〕上回っているということにはならない.これとの類推で言えば,子供向け映画はフェイクニュースのようなものだ.
  5. この論文の著者たちが誤解にどれくらい責任があるのか,よくわからない.論文で書いていることが文字通りに不正確だったわけではないという自己弁護は可能だ.とはいえ,著者たちはありうる誤解どころかありそうな誤解もじぶんから正そうとはしていないように見える.
  6. 著者たちの論文の報道を支持するもっとも強力な論拠は,同論文の報道そのものかもしれない.たしかに,研究結果の不正確な解釈の方が正確な解釈よりもすばやく広く拡散した.ぼくは,このポストの公開をほんの数日ながら遅らせすらした.〔正しい解釈の拡散を遅らせることで〕この内容が正しい見込みがより小さくなったらいいな,と思って.

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