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タイラー・コーエン 「シェイクスピアの『狡猾な穀物商人』としての一面」(2013年4月2日)

●Tyler Cowen, “William Shakespeare, grain hoarder”(Marginal Revolution, April 2, 2013)


「エイボンの詩人」(ことウィリアム・シェイクスピア)の生涯について、いくつか新事実が発見されたようだ。

『コリオレイナス』をはじめとした数々の戯曲で、虐げられた民の肩を持ったエイボンの詩人。そんな彼も、プライベートでは、狡猾な人間として振る舞ったらしい。イギリスの研究チームの調査結果によると、シェイクスピアは、穀物の買い占めと転売を通じて、飢饉時に一儲けしたばかりか、脱税にも手を染めたというのだ。

ウィリアム・シェイクスピアは、食糧が不足気味になった時に高値で転売することを目的として、大麦の粒や実、麦芽といった穀物を不法に買い占め、何度も罰金を科せられた。それだけではなく、脱税の疑いで、危うく刑務所送りにされるところだった。(イギリスの)ウェールズにあるアベリストウィス大学の研究チームが、裁判所や税務署に残されている当時の記録を調べたところ、そのような事実が明らかになったのだ。

穀物の転売を通じて手に入った儲けは、土地(不動産)の購入資金に回された。その結果、シェイクスピアは、ウォリックシャー州でも有数の大地主の一人となったという。

・・・(中略)・・・

どうやら、シェイクスピアは、自らの実体験を参考にして、『コリオレイナス』を書き上げたようだ。『コリオレイナス』は、1600年代初頭版の(上位1%の富裕層への富の集中に抗議する)Occupy運動(ウォール街占拠運動)を描いた悲劇という側面を持っているが、その中で市民の一人に次のように語らせている。

「やつら〔為政者たち〕がおれら〔市民〕のことを気にかけてるだって? そんなわきゃない。こちとら、腹が減って死にそうだってのに、やつらの倉には、穀物がわんさと溢れてるじゃないか。金貸しに都合のいい布告を出して、高利貸しの連中の便宜を図るかと思えば、金持ちに都合が悪いようにできてる法律であれば、それがどんなに立派なものであろうと、次から次へと廃止する。その一方で、おれたち貧乏人をしぼりあげて抑えつけるために、過酷な法律が次から次へと繰り出される始末。」

全文はこちら

(食糧不足時に高値で転売することを目的とした)穀物の買い占めは、大抵の場合、公共の利益になる。アダム・スミスがそのように主張したことは、よく知られているところだ1。今回の件(シェイクスピアの生涯に関する新事実)については、他にも多くの記事で取り上げられているが、中でもこちらの優れた記事では、次のような面白いエピソードもあわせて紹介されている。

シェイクスピアの亡骸は、ストラトフォード=アポン=エイヴォンにあるホーリー・トリニティ教会に埋葬されているが、その墓の近くに建立された記念碑に、そのこと〔シェイクスピアは、作家であるよりも前に、「良き父親」、「良き夫」、「良き市民」であると自認していた2、ということ〕がわかりやすく表現されていた、とは(シェイクスピアの生涯に関する新事実を発見した、イギリスの研究チームの一員である)ジェーン・アーチャーの言だ。シェイクスピアは、1616年に亡くなっているが、その直後に建立された記念碑のすぐ近くには、穀物の入った麻袋を抱えるシェイクスピアの胸像が据えられていたのである。しかしながら、その胸像は、18世紀に入って作り直された。房のついたクッションの上に座り、右手には羽根ペンを持つ、「作家らしい」見た目の胸像に作り直されたのである。

アーチャーらの論文の草稿を探しているのだが、まだ見つけられないでいる3

  1. 訳注;この点について詳しくは、『国富論』の第4編第5章の余論(「穀物貿易および穀物法にかんする余論」)を参照されたい(大河内一男監訳『国富論』(中公文庫)だと、第2巻の232ページ以降)。 []
  2. 訳注;シェイクスピアが穀物を買い占めたのは、金儲けをしようとの魂胆からだけではなく、凶作に見舞われても、自分の家族や近所に住む人々が餓えないでも済むよう備えるためという目的もあった(つまりは、「良き父親」、「良き夫」、「良き市民」としての務めを果たそうとの思いから出た行動でもあった)らしい。 []
  3. 訳注;公開講座用に準備された論文はこちら(pdf)、ジャーナル掲載版はこちら。 []

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