タイラー・コーエン 「電子書籍は紙の本に比べて内容が記憶に残りにくい?(その1)」(2012年3月19日)

●Tyler Cowen, “Do we remember less well when we read from computer screens?”(Marginal Revolution, March 19, 2012)


マイア・サラヴィッツ(Maia Slalavitz)が次のように述べている。

しかしながら、電子書籍は紙の本に比べると空間的な手がかり(spatial landmarks)が少ない。特に初期のKindleなんかで作品を読む場合には上から下にひたすらスクロールして読み進める格好になるが、ページ数は表示されない。全体の何%を読み終えたかを知らせてくれるに過ぎない。「ページ」には終わりがなくどこまでも果てしなく無限に続くかのように感じられる。ふと眩暈に襲われるなんてこともあり得る話だ。一方で、紙の本は(ページ数だとか本の厚みだとかをはじめとした)物理的な目印(手がかり)に恵まれている。一体どこまで読み終えたかという感覚は本の内容に関する記憶の一部を形作ることになるが、電子書籍だと紙の本に比べて自分の現在位置を見定めにくいところがある。

インターネットの「ユーザビリティ」(使いやすさ)研究の専門家でニールセン・ノーマン・グループの代表を務めるヤコブ・ニールセン(Jakob Nielsen)氏も電子書籍端末を通じた読書は紙の本を読む場合とは異なるタイプの記憶形成を伴うと語る一人。電子書籍は紙の本に比べて「内容が記憶に残りにくいというのはその通りだと思います」とニールセン氏。「その点について直接計測したわけではありませんが、私も一員として参加した二つの研究が傍証になっています。タブレット端末で本を読む場合と紙の本を読む場合とで行動面でどんな違いがあるか? そしてパソコンで文章を読む場合はどうか? その二つの研究ではそのあたりのことについて詳しく検証しています」。

その研究結果によると、タブレット端末の画面(ないしはパソコンの画面)が小さいほど読書の内容が記憶に残りにくい傾向にあったという。「端末の画面が大きいほど被験者は読んだ内容を忘れずに覚えている傾向にあったんです。それとは反対に、端末の画面が小さければ小さいほど読んだ内容は記憶に残りにくい傾向にありました」とニールセン氏。「一番印象的な例は携帯電話で読書する場合です。携帯電話で読書していると文章の流れを見失ってしまいがちなんです」。

お気に入りの一文もついでに引用しておくとしよう。

「心理学専攻で経済学に関する予備知識ゼロの苦学生に経済学のテキストを読んでもらってその内容について質問攻めしてやったんです」。ケイト・ガーランド(Kate Garland)氏はそのように語る。

あくまでも「暫定的」な結論として受け止めるべきだろうが、検討する価値のある興味深い疑問ではある。全文はこちらだ。

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