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デイビッド・アンドルファット「Fedcoin:政府仮想通貨の望ましさについて」(2015年2月3日)

Fedcoin: On the Desirability of a Government Cryptocurrency, Macro Mania, dated February 3 2015

Fedcoin

関するJ.P.Koning氏のブログ記事だった。International Workshop on P2P Financial Systems 2015(P2P1 金融システムについての国際会議2015)の講演に招かれたとき、この会議を始めるにあたってFedcoinについての話すのは興味深いし挑発的な方法になるだろうと思った。私のプレゼンテーションはここで見ることができるが、このブログでやりたいことは私が会議で行った議論のいくつかを明確にすることだ。

以前のエントリでも述べたように、私は「決済システム」を口座からの引き落としや入金のためのプロトコル(一連のルール)として、「貨幣」を広く合意された記録保持装置として、そして「金融政策」を貨幣の供給を長期的に管理するためのプロトコルとして、捉えている。

仮想通貨ビットコインは、ビットコインと呼ばれる通貨と、ビットコインの供給が有限の上限に収束する決定論的経路として規定された金融政策を持つ決済システムである。ビットコインは潜在的に有望な決済システムだが、理想とは言えない貨幣と金融政策を抱えていると私は考えている。現在のプロトコルでは、ビットコインは無利子の米ドルよりも長期的に価値を蓄えることができる可能性がある。だが、長期的な価値の貯蔵庫がほしいならば、我々にはすでにもっと良い収入を生成する資産(株式、債券、不動産など)を持っている。(株式と金の収益率の比較については、ここを参照)

ビットコインの金融政策についてはとりあえず脇に置いておいて、ビットコインという金融商品に集中してみよう。アメリカのような経済で、ビットコインを金融商品として使うことの最大の問題点は何だろう?それは国内取引で外貨を使用する際に直面する問題と同じで、為替レートが不安定で予測不可能なことだ。為替レートは変動が激しく、予測できない。ビル・ゲイツはReddit AMAで、以下のように的確な指摘をしてる。

ビットコインはエキサイティングな新技術です。私たちの財団の活動では、貧困層が銀行サービスを受けられるようにするためにデジタル通貨を活用しています。私たちはビットコインを使用していませんが、それには特にふたつの理由があります。ひとつは、貧困層が自国通貨と比べて価値がひどく変動する通貨を持つべきではないからです。良くも悪くも、好む好まざるに関わらず、米ドルは米国経済の単位であり、通貨交換比率基準であり、様々な財やサービスの価値が測定され、契約条件が定められている共通の基準です。変動する為替レートでは、例えば、収益がビットコイン(BTC)で債務が米ドル(USD)である場合、キャッシュフローの管理が問題になります。Bitreserveのような仲介業者はこのリスクをある程度軽減することができますが、もちろん、追加の費用がかかります。為替リスクをヘッジするには、為替レートが固定されているときには存在しない、費用がかかるのです。

そこで、Fedcoinのアイデアが出てくる。FRBが中心的な開発者となり、Fedcoinと呼ばれるオープンソースのビットコインのようなプロトコル(適切に修正されたもの)を利用できるようにしたと想像してみてほしい。重要なのは、FRBがFedcoinと米ドルの間の交換レート(交換レートは何でもよいが、等価とここでは仮定する)を確実に固定できるユニークな立場にあるということだ。

米ドルを裏付けとしたビットコインを一定の交換レートで発行している民間企業と比較してFRBが優位な立場にあるという私の主張は、どう正当化されるだろうか?このような企業の問題は、自国の通貨を他の通貨に一方向にペッグしようとしている国が直面する問題とまったく同じだ。一方向の固定為替レートシステムは本質的に不安定だ。なぜならBTC/USDの為替レートを固定している機関は、あらゆる規模の償還の波に対応するために、米ドルの準備金不足にはならないと確実に約束できないからだ。実際、この構造は投機的な攻撃を招く。

対照的に、固定交換レートを維持するために米ドルやFedcoinが足りなくなるという問題はFRBにはまったくない。なぜなら、FRBはこれらふたつのモノを、ペッグを守るために必要なだけ、発行することができるからだ(これは明らかにFedcoin発行を制御するパラメータの観点から、ビットコインのプロトコルに修正を求めることになるだろう)。考えてみてほしい、以下に私が述べる固定交換制度を決定するのは何だろうか。

US notes

リンカーン(5米ドル札)が、例えばワシントン(1米ドル札)と比べて割安で取引されているのではないかと心配したことがあるだろうか?もし誰かがあなたのリンカーン1枚に対してワシントン4枚だけを提示したとしたら、あなたはFRBに行き、あなたが慣れ親しんでいる交換レートである5:1を要求するという選択肢がある。このことを理解していれば、人々は通常、固定相場制に違反しようとはしないだろう。このシステムは、FRBがこれらの「通貨」をそれぞれ発行しているので、信頼性がある。さて、Fedcoinが別の通貨(交換レートが等価で固定されている)と考えてみよう。

さて、Fedcoinがビットコインの異種であるべきか、それとも他のプロトコル(Rippleのようなもの)であるべきかは私にはよくわからない。特に、プルーフ・オブ・ワーク2 のメカニズムの効率性について、私はいくつか深刻な懸念を持ってる。だが、今はこれらの懸念を脇に置いておいて、このプログラムがどのように実装されるか一般的な用語で考えてみよう。

第一に、Fedcoinプロトコルは、主に透明性確保の目的のために、オープンソースにすることができる。FRBは、FRBが好むソフトウェアのバージョンの固定交換レートのみを尊重するべきだろう。ビットコインの場合と同じように、人々は無料のウォレット・アプリケーションをダウンロードすることができる。銀行やATMは、米ドルの現金や銀行預金と引き換えにFedcoinウォレットを積み込むことができる取引所として機能する。採掘者(マイナー)3 にどれだけの報酬を与えるか、Fedcoin自身が採掘(マイニング)4 のためにハッシュパワー(ハッシュ値)5 を貢献すべきかという問題があるが、これらが詳細だ。これらができる可能性があるということがポイントだ。

もちろん、Fedcoinが実現可能だからといってそれが望ましいとは限らない。第一に、Fedcoinは単なる通貨の一種類と見なすことができるため、Fedcoinの存在は金融政策(貨幣の総供給量の管理に関わるものであり、貨幣の構成ではない)の実施を妨げるものではない。実際、FedcoinはFRBに追加的なツールを与える。さらに、Fedcoinは紙幣を置き換える可能性が高く、それが可能な範囲で決済システムの一部として紙幣供給の維持コストを下げるだろうとKoning氏は主張している。

消費者や企業はどうだろう?消費者や企業は、適切なウォレットソフトウェアとインターネットへのアクセスがあれば、世界中の誰でも低コストでP2P取引ができるというビットコインのメリットをすべて享受することができる。さらに、国内の利用者は交換レートの変動を免れることができる。Fedcoinのウォレットは、キャッシュウォレットと同様に無許可制および無料なので、適切な身分証明書を持っていない人でも煩わしい申請手続きなしで利用できる。最後に、Fedcoinは現金と同様に「プッシュ」(「プル」ではなく「プッシュ」)決済システムなので、詐欺(誰かがあなたの口座をハックして、あなたの知らぬ間にお金を引き出してしまうこと)に対してより高い安全性を提供する。

要するに、Fedcoinは本質的にデジタルキャッシュと同じだ。ひとつの重要な点を除いて。匿名性を求める人にとっては、現物の現金の方がまだ優れた技術だ(A Theory of Transactions Privacyを参照)。現金は痕跡を残さないが、Fedcoin(とビットコイン)はデジタル痕跡を残す。実際、これがFedcoinがKYC制限6 を免れるべき優れた理由だ。第一に、政府は実物の現金取引にKYCを課さなくてもやっていける。なぜデジタルキャッシュ取引にKYCを課す必要があるのだろう?第二に、デジタルキャッシュはデジタルの痕跡を残し、法執行機関が違法な取引を追跡するのを容易にする。これを理解すると、Fedcoinが違法行為の資金調達に選好される可能性は低いであろう。

最後に、Fedcoinの提案は、競合仮想通貨をなくすことを法制化する不当な企てだと解釈されるべきではない。Fedcoinの目的は他の仮想通貨と競合することであり、他の仮想通貨が提供できない特性(米ドルとの交換レートの安定性の保証)を提供することだ。Fedcoinを採用するということは、それを支える金融政策を受け入れることを意味する。FRBの金融政策に不快と感じる程度には、人々は自分の(富でないとしても)お金を、代替プロトコルを使って、信じたいかもしれない。それは個々人の自由であるべきだし、自由である。

追記:2015年2月6日
FedCoinをサポートするためになぜ分配型/分散型のコンセンサスアーキテクチャが必要なのか、という質問を多く受けた。フランクフルトでの講演の中で、私は実際にふたつの提案をした。最初の提案は 「Fedwire for All」と呼ばれるものだ。これは基本的には、Fedwireのようにクローズドな中央集権型台帳で管理されたデジタルキャッシュだ。非常に安価で効率的で、ビットコインよりもはるかに効率的だ。だが、もちろんそれはふたつの点で現物の現金の特性をあまり再現していない。第一に、TreasuryDirectと同様にFedwireの口座は無許可ではないだろう。人々は身分証明書を提示し、申請手続きなどを経なければならないだろう。第二に、FRBがKYC規制について、(現金の場合と同様に)必要ないとする可能性は低い。したがって、後者ふたつの特性が望ましい範囲では、(このエントリを書いた時点で)Fedwire-for-Allを超えてFedcoinに移行する必要があると私は考えた。もちろん、これらの特性を実装する他の方法はあるかもしれない。ぜひ読者であるあなたの意見を聞いてみたい。

  1. 訳注:ビットコインのように日中央集権型のブロックチェーンにおいて、中央サーバーを用意せず個々の端末(Peer)が互いに信頼し取引を承認し合うことで成立するネットワークのこと []
  2. 訳注:ブロックチェーンの取引データが正しいことを証明するコンセンサスアルゴリズムのひとつ []
  3. 訳注:マイニングを行うひと []
  4. 訳注:ブロックチェーンにおいて新たなブロックを生成し、その行為によって報酬を得る行為。マイニングの役割は「仮想通貨の新規発行」と「取引の承認」である。仮想通貨の新規発行とは、取引を含んだブロックを生成する作業のこと。 []
  5. 訳注:あるデータを変換して得られる固定長のデータのこと。ハッシュはあるデータを一方向にしか演算できないのが特徴で、ハッシュ化されたデータを元のデータに戻すことはほぼ不可能である。また元のデータを一文字でも変更するとハッシュ化されたデータは全く違う結果となり、元データを推測することを不可能にしている。 []
  6. 訳注:Know Your Clientの略。顧客が口座を利用してマネーロンダリングなどの不正を行うことがないよう金融機関が口座開設前に顧客の身分を十分に確認する手続きのこと []

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