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ノア・スミス「日本のインフレはアメリカ人が考えるほどには高くない」

Noah Smith “Japanese inflation isn’t as high as you think” (Noahpinion, February 23, 2014)


Gauze+promoshot
僕はいつも、「コアコア」っていうのがすごいハードコアなハードコア音楽で、演奏できるのはGGアリンだけ、それもステージ上で文字通りぶっ飛んでるときだけっていうようなのだと思ってた。でも実際には、「コアコア」っていうのは日本のインフレ指標の一種で、食品とエネルギー価格を含んでいないやつだ。アメリカで「コア」って呼んでるやつと同じじゃないかと思う人もいるかもしれない。そしてそれは正解。問題なのは日本には彼らが「コア」インフレ率と呼ぶものが既にあるっていうことなんだけど、これは食料を除外しているけどエネルギー価格は含んでいる1 。これは自然に報道で混乱を作り出してしまう。記者たちは律儀に日本の「コア」インフレ率を報道するけど、読者はアメリカの指標と同じものとして受け取ってしまうからね。でも実際にはこの二つは違うんだ。

さてどうしてこれが重要なんだろうか。それはここ最近の数か月、アベノミクスあるいは少なくともアベノミクスの金融政策部分が着実に成功しているって取りざたされているからだ。報道されているように、日本のインフレ率は2%目標に向かって上昇しつつある。多くの人たちにとって、これは中央銀行が本当にコミットメントをすれば金融政策はインフレ目標を達成できるという印となっている。

問題は、みんなが見ている日本のインフレ率は日本の「コア」インフレ率で、「コアコア」じゃないということだ。つまり、みんなが目にしているバラ色の数値はエネルギー価格を含んでいる。そしてエネルギー価格は上昇してきているんだ。理由の一つには日本に特有の供給制約もある(というのは、福島の事故を受けて原子力が制限されているからだ)。

ソバー・ルックが詳しく書いている

12月の(日本の”コア”)CPI2 インフレ率上昇は依然として、円の下落による輸入天然ガス・原油の価格への影響や国内全ての原子炉が停止を続けていることによる電気料金の上昇によって年率換算で5.5%上昇した公共料金の影響を強く受けている。食料も部分的には円の下落のせいで上昇圧力がおそらくかかっているので、エネルギーと食料価格をCPIから除いてみると、年率換算0.7%の上昇でしかない。食料価格も2.2%上昇しているからだ。円を下落させるという日銀の努力によるCPIへの効果のほとんどは、食料とエネルギーの相対価格ショックに限定されたままだ。

Japan CPI breakdown

つまり、アメリカで使っているインフレ指標で見てみると、日本のインフレは目下0.7%でしかなくて、2%目標へはもうすぐとは言えないんだ。

そしてポール・クルーグマンが指摘してるようにエネルギー価格は変動が激しいから、金融政策の短期的効果を評価するのにエネルギーを含めて考えるべきじゃないんだ。

Fedの公式な見解としてはコアインフレ率に焦点を当てて、商品価格の短期的な変動に反応はしないことになっている。そしてここ10年かそこらの歴史はそれがもう本当に正しいことだってことを示してきているんだ。というのも、全ての価格を含んだインフレ率が大きく揺れ動いている一方で、コアインフレ率に焦点を当てることは適切な政策を導くにあたって(完璧ではないけれど)それよりもずっと優れていたんだ。

022214krugman1-blog480

(このグラフはCPIじゃなくてPCE3 だけど、要点は同じだ。)

というわけで基本的には、長期間のデフレの後で中央銀行が2%のインフレ率を達成できるということをアベノミクスはまだ証明してはいない。そういった意見はまだ主義信条といったものに留まっている。目標は達成されるかもしれないし、されないかもしれない。(それが達成されなかったときには、日銀が単に目標を達成すると十分コミットしてなかっただけだって金融政策支持者たちが言い出すのはもちろん予想すべし。。。)


(訳者補足:以下はMark Sadowskiという経済ブログ界隈のコメント欄常連によるコメント)

Mark A. Sadowski 4:45 PM

でも実際には、「コアコア」っていうのは日本のインフレ指標の一種で、食品とエネルギー価格を含んでいないやつだ。アメリカで「コア」って呼んでるやつと同じじゃないかと思う人もいるかもしれない。そしてそれは正解。問題なのは日本には彼らが「コア」インフレ率と呼ぶものが既にあるっていうことなんだけど、これは食料を除外しているけどエネルギー価格は含んでいる。これは自然に報道で混乱を作り出してしまう。記者たちは律儀に日本の「コア」インフレ率を報道するけど、読者はアメリカの指標と同じものとして受け取ってしまうからね。でも実際にはこの二つは違うんだ。(中略)問題は、みんなが見ている日本のインフレ率は日本の「コア」インフレ率で、「コアコア」じゃないということだ。つまり、みんなが目にしているこのバラ色の数字はエネルギー価格を含んでいる。(中略)つまり、アメリカで使っているインフレ指標で見てみると、日本のインフレは目下0.7%でしかなくて、2%目標へはもうすぐとは言えないんだ。

このことが混乱を生み出してしまうのは記者たちの間だけじゃなくて、どうやらどこぞの経済ブロガーさんにもたくさんの混乱をもたらしてしまうみたいだなー。

ほんの2週間前に「アベノミクスの教訓4 」ってタイトルの記事でこんなこといってたよねえ。

ヘッドラインインフレ率もコアインフレ率もともに上昇しており、どちらもともに今やプラスの領域に足を踏み入れている。コアインフレ率は過去10年の間で最も高い数値を記録している。

そしてこのグラフにリンクを貼ってた。

Japan1b

このグラフはCPIとコアコアCPIを示しているけど、コアコアCPIには「コア」と間違ったラベルが付いている。でもそこには何の問題もないし、何ら間違ったことをしたわけじゃない。「コアコアCPI」というのは、実質的には他の先進国で「コアCPI」と呼ばれているものだからだ。おまけに、君はそれが過去十数年の間で最も高い数値だと言っていたのも正しい。年率換算でコアコアCPIが前回0.7%を越えたのは1998年8月だし、しかもその時そうなったのは実際のところ1997年4月から消費税が2%引き上げられたからだ。それよりも前の期間でこれ以上にコアコアCPIでの年率換算インフレ率が高くなった時というと、1995年3月まで戻らなければならない。

つまり今回の記事で主に明らかになったことっていうのは、前回君が日本のインフレについて書いたときに何を言っていたのかを自分で分かってないんだってことと、君は分かっていないけれど前回の時の君は大体において正しかったってことだな。

PS:自分は普通の経済ブロガーよりも日本について詳しい、みたいな空気を君は出してなかったっけ?

  1. 訳注;正確には日本のコアインフレ率で除外されるのは生鮮食品のみ。それに対し日本のコアコア及びアメリカのコアは食料全般(酒類を除く)をエネルギー価格とともに除外する。参考リンク []
  2. 訳注;消費者物価指数。参考リンク []
  3. 訳注;個人消費支出。CPIとは別の方法で計測するインフレ率の指標。参考リンク []
  4. 訳注;原題は”What can Abenomics teach us about macro (so far)?”で、リンク先はhicksianさんによる翻訳。 []

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