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ポール・クルーグマン「アメリカの雇用が好調ってニュースを聞いて妥協しちゃいけないよ」

Paul Krugman “Good Economic News in the U.S. Should Not Lead to Complacency,” Krugman & Co., December 12, 2014.
[“On Not Counting Chickens,” December 5, 2014; “Famous Fake Prediction Failures,” December 1, 2014]


アメリカの雇用が好調ってニュースを聞いて妥協しちゃいけないよ

by ポール・クルーグマン

The New York Times Syndicate

/The New York Times Syndicate


今月になって,アメリカでは掛け値無しにいい雇用レポートがでた――1999年頃みたいに雇用が増加してきてるし,ついに,実際の賃金上昇が起き始めている.

でも――案の定の「でも」でしょ――これでいいやって妥協を促すとしたら,いいニュースもわるいニュースになってしまう.

今回のいいニュースをきっかけに,そろそろ金融政策を正常化して金利をすぐに上げようぜって要求がでてくることは予想に難くない.いずれどこかの時点で利上げする必要はでてくる.でも,ここで大事なことが2つある.(a) 経済の堅調さについては,まだまだきわめて不確実なことにかわりないし,(b) 早すぎる利上げと遅すぎる利上げでは,リスクは均等じゃなく非対称だ.

まず (a) について.この不確実性には,いくつかの項目を区別できる:雇用に関するいいニュースがいつまで続くのかわからない;完全雇用からどれほど遠いのかわからない;完全雇用になったときですら,金利をどれくらい高くすべきなのかわからない.

次に (b) について.目標を上回るインフレ率に対処する方法ならわかってる――これは問題であって罠じゃない.でも,いま日本がはまってるような罠やユーロ圏がすでにはまったらしき罠におちいったとき,そこから抜け出るのはすごくむずかしい.早すぎる引き締めをやってゼロ金利環境で経済を引き上げる努力に四苦八苦しなくちゃならなくなるリスクは,ぜひとも避けたいところだ.

というわけで:Fed はインフレになっていくのをギリギリまで待ち構えてやるべきだ――ここでいう「インフレ」ってのは,明らかに2パーセントを上回ってる場合のことだ.それに,ぼくだったらそれより高く設定する.

© The New York Times News Service


周知のとおりぼくらが予想しそこねてたとかいうウソについて

経済政策研究所の共同所長ディーン・ベイカーがご機嫌斜めだ.それももっともなことで,なんのことかって言うと,「アメリカの経済回復が緩慢になるのをケインジアンたちが予想しそこねた」って主張がでてきてのにゲンナリしてるんだよ.ベイカー氏とぼくは,どちらも,2009年に怒髪天を突くいきおいでこう警告してた――「オバマの刺激策はあまりに小規模であまりに短期的すぎる.」

でも,実は現実はそれよりわるかった.ベイカー氏が CEPR ブログで指摘してるように,『ワシントン・ポスト』コラムニストのロバート・サミュエルソンは今回の景気循環がこれまでの景気循環と似ていないって事実を証拠にして,ケインジアンがマクロ経済を理解してない,だから連中は経済を助けようなんて手出しをすべきじゃないって言ってる.だけど,公式に景気後退に入るずっと前から,ぼくなんかは雇用なき回復が長引くよって予想してたし,その理由も注意深く説明していたんだよ.

あと,こんな感じのコメントをよくもらう――「そんなにお利口さんなら,なんで住宅バブルを予想してなかったんだよ」.ところがぼくはたんに予見してたばかりか(ベイカー氏の方がずっと早くに予見してたけど),ブッシュ・ブームについてあれこれと疑義を言っては対空砲火をわんさか浴びてたんですけどね.

まあ,世間がぼくの言ってることを注意深く扱ってくれるなんて期待しちゃいけないんだろうね.誰も聞いたことがないような正体不明の出版物にしか書いてないんだものね.

© The New York Times News Service


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