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ポール・クルーグマン「エリー湖で共和党の潮目は変わる?」

Paul Krugman, “Will Lake Erie Turn the Tide?,” Krugman & Co., August 15, 2014. 
[“Phosphate Memories,” August 4, 2014; “The Empiricist Strikes Back,” August 10, 2014]


エリー湖で共和党の潮目は変わる?

by ポール・クルーグマン

Joshua Lott/The New York Times Syndicate

Joshua Lott/The New York Times Syndicate

RedState.com の編集者エリック・エリクソンが前に言ってたこれを覚えてるかな? 「ワシントン州はその住民を麻薬密売人グループに変えてしまった――州境をまたいで,リン入り洗剤を仕入れる密売人に」――エリクソン氏は2009年にこう記している.「いったいいつになったら,人々は政治家に『地獄に堕ちろ』と言い出すんだろう? いったいいつになったら,人々はソファから起き出して州議員の家に大挙して押しかけて引きずり出し,バカなマネをしくさってと張り倒すんだろう? きっともうすぐそうなる.」

そうだね,アメリカ人がどうとでも好きなようにリンを使う神の与えたもうた権利に,お節介な政治家が口を挟む理由なんてないもんね.

って,おい

今月はじめに『ニューヨークタイムズ』に,オハイオ州トレドに関する記事が載ってた:「科学者たちや地域の政府当局が何年も言っていたことが骨身にしみて納得させるのに,とてつもない量の有毒物が流され,50万人の住人が飲料水を失わなくてはならなかった:エリー湖はまずいことになっているし,年を追って悪化していると彼らは語っていたのだ.」

「肥料をまいた農場,肥育場,漏れの多い汚水処理場から流出したリンが大量に流れ込んだために,五大湖でもっとも開発が進んでいたこの湖は,夏がくるたびに,藻がつくる分厚い層が敷き詰められるようになっていった.」

たしかに,農場が最大の問題だけど,小さな要因だって害になることに変わりはない.

そうそう,農場からの流出水による汚染に関連した一目瞭然の国民の健康・安全問題が話題となると――ね,わかるでしょ,州政府と連携して環境保護庁がなにかしようとしたらどうなるか:「今月はじめ,チェサピーク湾からほど遠いアラスカやワイオミングの州最高法務官グループ21名が,法廷助言書を提出した.環境保護庁のチェサピーク浄化計画を無効にするのがその目的だ」と ThinkProgress.org のカティー・ヴァレンタインが4月に記している.「州最高法務官グループの主張によれば,浄化計画により,州の権利に関して深刻な懸念が生じるといい,同計画が無効にならなければ,環境保護庁はミシシッピ川で実施されているのと同様の流域の汚染制限を制定できるようになるだろうと懸念している.」

ぼくが知るかぎりだと,流出水が藻の異常繁殖となんら関係がないと主張する組織的なリン否定キャンペーンはない.でも,政策的措置の実現が迫れば,きっとそんなキャンペーンが登場するだろうね.

© The New York Times News Service


逆襲の実証主義者

気候変動にゾッとしないなら,対策の失敗を想像しても絶望がこみ上げてこないなら,その人は注意が足りてない.気候変動否定論者には大罪がある.対策を遅らせるという大罪だ.ことによると,手遅れになるまで対策を遅らせかねない.

その一方で,それより小さな悪もある.ぼくにとって衝撃的なのは,マイケル・マンに対する個人攻撃キャンペーンだ.

ご存じの人もいるだろうけど,マン氏は精力的な科学者で,木の年輪や氷のコアから得られた間接的な証拠をつかって長期的な気候の記録をつくりだそうと研究を続けてきた人物だ.彼の成果は有名な「ホッケースティック」グラフだ.このグラフは,工業化と化石燃料消費の時代気温が上昇していることを示した.こうしてマン氏が苦労して成果を上げてみたら,その見返りに「お前は間違っている」という断定がわき起こったばかりか――間違ってなんかいないんだけど――彼の人生とキャリアを破壊しようという協調行動と,不正行為をやったという非難までやってきた.これに関わっているのは,右派の札付きの面々だけじゃない.ヴァージニアの元州最高法務官みたいな公人も関わってる.

みんなにも想像できるように,ぼくは,かんたんにマン氏の立場に我が身を置き換えて考えられる.どうみたって,同じような仕打ちをぼくに加えたがる人は大勢いる.もっとも,その人たちは(いまのところ?)うまい攻め筋を見つけられてないみたいだけど.

さて,話は変わりましてちょっぴり心強いニュースです:2012年に,マン氏は『ナショナル・レビュー』を名誉毀損で訴えた.今月の『ワシントン・マンスリー』で D.R.タッカーが指摘しているように,同誌からの最新の反応は,いかにもおびえまくった出版物らしいものになってる.

もうひとつ心強いのは,『ナショナル・レビュー』が名誉毀損の訴えに対してどう防衛していいやら理解できないでいる様だ.事実とちがう非難は繰り返さないことだ――かわいそうだけどね,キミたち,法廷はグーグルと Nexis にアクセスできるのよ.検索すれば,これまで再審ですべての訴えが退けられているのが見つかる.せいぜい,善意で非難してたんだという証明をがんばることだね.もちろん,連中に善意なんかなかったけど.

マン氏が立ち上がったのは喜ばしいことだ――彼は,ぼくらみんなに貢献してくれてる.

© The New York Times News Service


【バックストーリー】ここではクルーグマンのコラムが書かれた背景をショーン・トレイナー記者が説明する

水質問題

by ショーン・トレイナー

8月2日に,オハイオ州トレドの当局が50万人近くの住人に水道水を使わないよう警告を発した.有毒な藻がエリー湖で繁殖し,同市の水道供給に影響が生じたのを受けての警告だった.〔参考:ナショナルジオグラフィック

藻の繁殖は,湖に高水準のリンが生じた結果だった.その大半は,農業廃水と下水から流入していた.リンは,青緑色の藻が成長するのを促進する.こうした藻から分泌されるミクロシスチンは,神経系と肝臓に害を与える.

数十年前,エリー湖は環境面の優等生だと考えられていた.1960年代に有毒な藻の大発生が頻繁に生じたあと,連邦政府の立法により,リンの使用が制限され,エリー湖の水質は大幅に改善された.ところが,世紀の変わり目をはさんで,だんだん,藻の異常発生がふたたび頻繁に生じるようになってきた.

専門家のなかには,近年の異常発生には気候変動が一役買っていると考える人たちがいる.科学者たちの主張によれば,全世界的に水温が前より暖かくなったために,アメリカ中西部に起こる強烈な嵐が増えており,こうした増加した嵐により,農業に発するリンがかつてよりたくさん湖に流しこまれているのだという.

評論家のなかには,オハイオ州の状況をみて,共和党議員たちが環境規制に関する自分たちの見解を変えるようになるのではないかと論じる人たちもいる.『ガーディアン』紙のワシントン特派員アハ・マリー・コックスは8月5日にこう解説している――環境危機は「保守的政府の限界を示す事例研究だ:こうした限界は体系的な問題であり,広範で歩調を合わせた行動をとり,違法行為の継続に対してはそのコストを劇的に大きくする厳しい罰則を設ける必要がある.」

© The New York Times News Service


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