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ポール・クルーグマン「知識人に対する保守派の攻撃」

Paul Krugman, “A Conservative Attack on Intellectuals,” Krugman & Co., August 8 2014.
[“Anti-Intellectualism That Dares Not Speak Its Name,” The Conscience of a Liberal, August 2, 2014.]


知識人に対する保守派の攻撃

by ポール・クルーグマン

Ruth Fremson/The New York Times Syndicate

Ruth Fremson/The New York Times Syndicate

右翼連中が,宇宙物理学者ニール・デグラース・タイソンを攻撃してる.いまや,最近出た『ナショナル・レビュー』の特集記事で極点に到達している.この一件は,いくつもの理由で目を見張る.ぼくが見たところ,とくに興味を引くのは,連中が2つの方向で物事をとらえようとしてる点だ.一方では,事実と証拠を政治論議にもちこもうとすると,侮蔑たっぷりの非難がぶつけられる――「おめえ,自分がそんなにお利口さんだと思ってんのかよ?」みたいな.ところが同時に,リベラル系の「専門家」なんてただの専門家気取りで,本物の専門家じゃないとも主張される.

そうすると,こんな疑問がわいてくるかもしれない.いったい,タイソン氏みたいな人たちは代表的じゃないのか?――公的な領域に見られるインテリオタクたちのあいだでリベラルが主流を占めているのは,集団としての科学者たちの政治的傾向と相反しているのか?

まあ,この問いへの答えならわかってる

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集団としての科学者たちは,国民全体とくらべて,ずっとリベラル寄りだし民主党支持が強い.実際,保守派は他の文脈ではこの乖離を利用して科学者ひいては学者全般を攻撃して,自分たちに有利なようにバイアスをかけている.

じゃあ,いま起きてるのはどういうことだろう? 単純な説明を1つつけるなら,「現在の共和党の教説は,ホントに反科学かつ反知性で,科学者たちはそれに対抗してる」ってところだろう.ただ,もちろん,こんなのはバランスを欠いた見解ではある.そこで,右翼は2つ同時に言い張る.つまり,一方ではタイソン氏みたいな著名人たちはエセ専門家だと言い張り,また他方では,科学者たち全般に同じような見解をもたせようとするなんらかの陰謀が進行中なんだと言い張るんだ.

オッカムのカミソリを使って,無駄な主張をそぎ落としちゃえばいいんじゃない?

© The New York Times News Service


【訳註:引用されているデータについて】

本文中でクルーグマンが引用しているのはピュー研究所による2009年の世論調査で,”About the Surveys” には次のように記されている:

  • 「アメリカ国民の世論は,有線電話・携帯電話への電話調査で収集された.主要な電話調査は2009年4月28日から5月12日にかけて行われ,標本数は 2,001 名.」
  • 「科学者への調査は,アメリカ科学振興協会 (American Association for the Advancement of Science) の会員からランダムに選ばれた標本 2,533 名を対象に,2009年5月1日から6月14日にかけてオンラインで実施された.」

【バックストーリー】ここではクルーグマンのコラムが書かれた背景をショーン・トレイナー記者が説明する

『インテリオタク』文化への疑念を利用する

by ショーン・トレイナー

先月,『ナショナル・レビュー』の巻頭特集に「貴君より賢明なり」と題した記事が掲載された.アメリカの政治・文化をめぐる論議で「インテリオタク」(nerds) の存在感が増してきていることを取り上げている.

著者のチャールズ・C・W・クックはこう論じる――宇宙物理学者ニール・ドグラース・タイソンを主導者として,知識人を自認する人々の勢力が大きくせりあがってきている.こうした人々は「インテリオタク」文化を使って,リベラルな政策目標を推進しているのだそうだ.クック氏によれば,こうした人々の多くは「実際にはインテリオタクではなく」て,信頼性を確保するためにインテリオタクのフリをしているだけだという.「タイソンとその使徒たちが結局やっているのは,政治と学術と文化の線引きをぼやかすことなのだ――そうすることで,3つすべてを毀損している」――とクック氏は述べている.

ニューヨークのアメリカ自然史博物館にあるヘイデン・プラネタリウムの所長をつとめるタイソン氏は,先ごろ,保守派からの批判の的になった.テレビ番組シリーズ「コスモス:宇宙時間のオデッセイ」の司会役をつとめたあとのことだ.一般市民向けの科学教育を試みる同シリーズは,進化や人為的気候変動に関する合意を強く支持している.共和党員のなかには,こうした事柄を疑問視する人々がいる.

この批判に応えて,『ロサンゼルス・タイムズ』のゲスト・ブロガーをつとめるマシュー・フレイシャーはこう論じている――タイソン氏がこうした強い反応を引き起こしたのは,彼が保守派の運動にとって存在を脅かす勢力を代表しているからだ.「大衆文化にますます大きな地歩を固めているタイソンは政治構造に危険物をもたらしている.眼識ある民衆という危険物だ」とフレイシャー氏は7月29日に述べている.「べつに過激なことには聞こえないかもしれない.だが,タイソンの心情に賛同する大量の若いオタク有権者層の隆盛が確実となれば,政治の現状にとって脅威になる.」

『サロン』に寄せた記事で,評論家アマンダ・マーコットはこう論じる――タイソン氏に向けられた罵倒は,注意をそらすはたらきをしている.「沿岸部のエリートとして気楽な特権的生活を享受していると保守派の聴衆たちが思っている人々に対する不安を怒りに変えてぶつけるのは容易い」とマーコットは7月31日に記している.「だが,そうすることで,保守系の評論家たちはそうした聴衆にまんまとつけ込んでしまう.実際に彼ら聴衆が抱える経済問題を引き起こしている人々,たとえばウォール街エリートたちに対する,階級に立脚した怒りをそらしてしまうのだ.」

© The New York Times News Service


Comments

  1. 中道左派、長妻昭、大畠章宏支持 says:

    アメリカは共和党も民主党もどっちも右翼でしょう。イラク戦争を始めたのはネオコン、ベトナム戦争を始めたのは「リベラル」と称する人たちでしたね。イラクとベトナムは独裁国だからまだしも、普通の国でもCIAを使って暗殺事件やクーデターを起こしてきた。そんな状況を止めないでうつつを抜かす知識人やクルーグマン自身が右翼みたいなものなのに、一般国民が保守派に騙されそうになるというようなことを言い出すので困ったものです。アメリカではラルフ・ネーダーが比較的マシでしょうかね。緑の党は少し極端で政権担当能力はなさそうですが。日本では中道左派、民主党の長妻か細野か大畠あたりがいいでしょう。

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