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マーク・ソーマ 「『パン』と『平和』と『大統領選挙』」(2008年2月4日)

●Mark Thoma, ““Bread, Peace, and the 2008 Election””(Economist’s View, February 04, 2008)


ヒッブスの「パンと平和」モデルによると、2008年の大統領選挙で共和党側の候補者が勝利する可能性も無くはないらしいよ(以下の引用では、原エントリーの内容が大幅にカットされていることを断っておく)。

Bread, Peace, and the 2008 Election” by Lane Kenworthy:

米国大統領選挙の結果をかなり高い精度で予測できることで知られるモデルがある。ダグラス・ヒッブス(Douglas Hibbs)によって発展させられた「パンと平和」モデルがそれだ。

・・・(中略)・・・

〔大統領選挙の結果がどうなるかは、一人あたり実質可処分所得の伸び率(=「パン」変数)1の高低によっておおむね予測できるが〕、例外の年もある。1952年と1968年だ。・・・(略)・・・ここで、「パンと平和」モデルのもう一方の片割れである「平和」変数にご登場いただくことになる。どちらの年も政権党たる民主党が敗北を喫することになった(共和党側の候補者が民主党側の候補者を破り、それまで民主党によって握られていた大統領の席を奪い取った)わけだが、継続中の戦争で米軍の死者数(総数)が大量に上ったことが大きな痛手となったのだった。1952年に関しては朝鮮戦争、1968年に関してはベトナム戦争ということになるが、戦争の犠牲(米軍の戦死者数が大量に上ったこと)の責任が政権党たる民主党に帰せられたわけである。朝鮮戦争にしても、ベトナム戦争にしても、その余波はその次の大統領選挙(1956年および1972年)にまで及んだわけだが、当時の政権党たる共和党への逆風とはならなかった。どちらの戦争も(共和党によってではなく)民主党が政権党だった時代に始められたからである。

・・・(中略)・・・

2008年の大統領選挙の行方について「パンと平和」モデルからどのような予測を導けるだろうか? 時期尚早ではあるが、どういう結果が占われるかちょいと探ってみるのも面白そうだ。2007年終盤までのデータに照らす限りだと、・・・(略)・・・、〔一人あたり実質可処分所得の伸び率の加重平均値は1.4%。それゆえ、一人あたり実質可処分所得の伸び率(=「パン」変数)だけに着目すると、政権党の候補者が獲得する票数は過半数を超えるとモデルからは予測されるので〕勝利するのは共和党側の候補者。モデルからはそのような予測が導かれることになる。

・・・(中略)・・・

意外だろうか? 国民にしても、その道の専門家にしても、その多くが民主党側の候補者の勝利を予想している。そう予想するのももっともと思える理由も確かにいくつもある。共和党所属の現職の大統領(ジョージ・W・ブッシュ)は不人気この上ないし、2006年の中間選挙(上下両院選挙)では民主党が大きく躍進することになったし、民主党支持者の方が共和党支持者よりも意気盛んであるように見える。有権者が重視している二大争点――「景気」と「イラク戦争」――も民主党側の候補者に有利に働くんじゃないかとも思える。だがその一方で、共和党側の候補者がヒラリー・クリントンなりバラク・オバマなりを打ち負かす可能性を示唆している世論調査もちらほらある。

11月の本選挙で勝つのは民主党側の候補者。そう考えられる理由はたくさんあるが、「パンと平和」モデルでも民主党側の候補者が勝利する可能性は排除できない。具体的には、以下の3通りのシナリオが考えられる。

  1. 2008年の大統領選挙は(モデルが当てはまらない)例外的なケース。政治の世界には、絶対不変の法則など無い、というわけだ。・・・(略)・・・
  2. 1952年や1968年のように、米軍の戦死者数という「平和」変数が政権党への逆風となる。これまでのところは(2007年までに関しては)所得(一人あたり実質可処分所得)の伸び率は高い値を記録しているにもかかわらず、(ブッシュ政権が開始したイラク戦争での)米軍の死者数という「平和」変数が足を引っ張る結果として、共和党側の候補者の得票率は50%を下回る、というわけだ。・・・(略)・・・
  3. 2008年(今年)に入って所得(一人あたり実質可処分所得)の伸び率が鈍化するかもしれない。仮にそうなってしまえば、(一人あたり実質可処分所得の伸び率という「パン」変数に照らして)政権党たる共和党側の候補者の得票率は伸び悩むことだろう。・・・(略)・・・アメリカ経済は不況の瀬戸際に立たされていると噂されているが、今後、大統領選挙当日までの間に、所得の伸びが鈍化する可能性は極めて高いように思える。

時代が下るにつれてモデルの当てはまりが悪くなっているという可能性も考慮する必要があろう。一番最初に掲げたグラフをご覧いただければわかると思うが、所得の伸び率という「パン」変数は、1996年と2000年の選挙結果(大統領選挙の結果)をうまく予測できていない。・・・(略)・・・2004年(の大統領選挙の結果)に関してはうまく予測できているが、まぐれ当たりかもしれない。・・・(略)・・・

仮にモデルの当てはまりが悪くなっているとして、それはどうしてなのだろうか? 国が豊かになるにつれて、有権者にとって「お金」(懐具合)の持つ重要性が低くなっている、というのが一つ目の仮説。

一人あたりの所得(実質可処分所得)の伸び率という指標では有権者の台所事情をうまく捉えられなくなっている、というのが二つ目の仮説だ。所得の伸びが一部の層――富裕層――に集中している(所得格差が拡大している)昨今だが、「一人あたりの所得」というかたちで平均値をとるのではそのあたりの事情が見逃されてしまう。・・・(略)・・・

仮にモデルの当てはまりが悪くなっているのだとすれば、2008年の大統領選挙では(ヒッブスの「パンと平和」モデルには取り込まれていない)何か別の要因がこれまで以上に重要な役割を果たすことになるかもしれない。その要因とは一体何だろうか? そして勝利は誰の手に? みなさんはどう思う? よくわからない? 私もだよ2

  1. 訳注;正確には、選挙に先立つ3年半の間の一人あたり実質可処分所得の伸び率の加重平均値。その値が高いほど、政権党の候補者の得票率も高まる傾向にある。 []
  2. 訳注;2008年の大統領選挙で勝利したのは、民主党側の候補者であるバラク・オバマ・・・というのはご存知の通り。 []

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