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マーク・ソーマ 「『Brexitの真の教訓』」 (2016年6月29日)

Mark Thoma “”The Real Lesson From Brexit“” (Economist’s View, Wednesday, June 29, 2016)


ProMarketのルイジ・ジンガレスの記事から:

Brexitの真の教訓: …英国で…そしてトランプのいる合衆国で観察されているのは、ますます深まる投票権者の専門家に対する不信である。Brexitをめぐる議論ではヨーロッパ連合からの離脱を肯定する経済学者をたった1人見つけるのさえ困難だった。事実、多くの経済学者は相当悲観的な予測を出すことを敢えて厭わず、その為に大げさな誇張で不安を煽り立てていると非難されるほどだった。だがこれら予測は残留派の票を集めることができなかっただけでなく、おそらく離脱派の勝利の一因ともなったのである。

フィナンシャル・タイムズ紙ではクリス・ジャイルズがこの現象を投票権者の非合理性の一例だと嘆いていた。だが私は、この現象は非合理性とは全く無関係であって、不信と大いに関係したものなのではないかと恐れる。誇張が有るとはいえ、この不信には相当の合理的根拠がある: それは平たく言って、知的エリートと国民の断絶である – 世論調査官や選良達またジャーナリストをして勢い付くBrexitの高波を見過ごさせることになった、まさにその断絶である。…

今日では富の局在化のおかげで富裕な個人が幾人か集まれば他からの援助無しにシンクタンクへの資金援助ができるようになっており、シンクタンクは公共政策熟慮の中心地というよりむしろ既存権益の声高な支援組織の性格をますます強めている。選挙運動資金調達や新たな時代のロビー活動業のために、選挙で選ばれた公務就任者は国民の代表から 『産業権益に仕える使用人』 へといよいよ変貌してゆく、と有名な告発的表現を借りればこうなる。

その影響は誰の目にも明らかだ。医者はランチのスポンサーである企業の医薬品を売り込むものだと、みな考えている…; 科学者はラボの資金援助をしてくれる企業が生み出だす汚染物質の影響を可能な限り低く見積もると; 経済学者はたんまりコンサルティング料を払ってくれる銀行の権益を擁護すると。ジャーナリストであっても、広告主とオーナーの権益増進に励んでいるのだろう思われていない、そんな時も在るかと思えば、それは上記職業人の問題行為を見て見ぬふりしていることで非難を受けている最中というありさまなのだ。…

専門家の見解を歪めるような金銭的インセンティブが全く無いときでさえ、専門家や経済・政治エリートの間には文化的親近性というものが存在する。レガシー入学 [legacy admissions] と、学生の出身ハイスクールの質に基づく (したがってまた国勢調査に基づく) 選別の組み合わせによって、トップ大学のアカデミック層はますます同質化を進め、この国の大多数から遊離したままだ。科学者やジャーナリストそして知的エリートはみな同じ世界に所属している、だから彼らが世界を見る視点も同じものとならざるを得ない。

こういった要素全てが相合わさって専門家に対する不信につながる。こういった要素は、専門家に頼らないことを誇りとし、まさにその為に支援を集めるような大統領候補につながる。こういった要素は、例えばBrexitの様に、それを支持したまさにその人々にとってのネガティブな結果をうみかねない政治的意思決定につながる。…

過ちは我々に不信を突き付ける人々の側にあるのではない。だから我々が、失われた信頼を再び築き上げなくてはならない。医者や知識人またジャーナリストの殆どはきちんと立派な仕事をしている、というだけでは十分でないのだ。我々は、彼ら職業人が対立する利害関係から自由であることを確保にするために、透明性ルールを設けなくてはならない。民族的多様性だけでなく、経済的また社会的多様性の奨励にも努める入学ルールを定めなくてはならない。我々の代表を既得権益の軛から解放する選挙資金調達ルールを設けなくてはならない。

要するに、我々はこの専門家への不信の根を断つ為の環境を作り出す必要があるのだ。これこそBrexitのもたらした最も重要な教訓である。


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