アレックス・タバロック「子供たちも政治的に二極化してる」(2021年9月21日)

[Alex Tabarrok, “The Kids Are Also Polarized,” Marginal Revolution, September 21, 2021]


[▲思春期の子供の政党に対する信頼.緑の線は支持政党への信頼を,オレンジの線は支持しない政党への信頼を示す.左は1980年,右は2019年.]

かつて,思春期の子供は,支持政党こそあっても,二極化はしていなかった.子供たちには総じて権威ある人々をよくとらえる態度があったために,二極化は抑えられていた.ところが,今日では,その温かい態度は消え去って,思春期の子供も大人と同じように二極化している.これには,将来の二極化と全般的な不信にさまざまな含意がある.Iyengar & Tyler の新論文を参照しよう(データはパンデミック以前のものであることに留意):

党派的な二極化の起点はライフサイクルの初期に起こり,その後にほんのわずかしか変化しないことを,本研究では示した.今日,内集団のひいきと外集団の不信は成人になる以前から高水準に達している.実際,我々の2019年調査の結果からは,二極化の学習曲線が11歳で高い水準に達してそのまま水平に推移することがうかがえる.これは,1970年代~80年代に見られた発達パターンとは大きく異なっている.70年代~80年代には,子供時代の初期に権威ある人々を全面的に好意的にとらえる態度が見られ,思春期に入るとともにしだいに党派性が子供の政治的態度に入り込んでゆき,大人になるとともに党派性がピークに達するという特徴があった.

政党全般への子供たちの信頼の先行指標を考察したところ,社会化の主体としての家族がもっとも重要だというこれまでの研究文献が裏付けられた  (Jennings and Niemi 1968; Jennings, Stoker, and Bowers 2009; Tedin 1974).二極化している親たちからは,自分の党派性が子供に継承されるように思われるばかりか,対立勢力に対する自分の敵愾心も継承されるように見受けられる.2019年の調査に回答した人々のうち,もっとも二極化の度合いが小さい若者たちは,親の党派的忠誠を受け継いでいない人々だった.

締めくくりに,政治的社会化の研究に我々の発見がもたらす重要な含意について述べる.50年前,民主的な規範と制度の永続化に関して,政治的社会化はこれを安定化させる重要な役割を果たすと考えられていた.とりわけ,権威ある人々に対して無批判な態度を子供たちがとっていたことで,民主体制全体が正当化されやすくなっていた.実際,社会化が果たす機能的な役割を引き合いに出して,子供時代の政治的態度の研究を研究者たちは正当化していた (Kinder and Sears 1985; van Deth, Abendschön, and Vollmar 2011).

いまの時代には,支持しない政党への敵意を早期に身につけた場合に民主的な規範や市民的態度が醸成されるのか,疑わしく思える.いま,極端な二極化は誤情報の蔓延と結びついている (Peterson and Iyengar 2021).そして,2020年大統領選ののちに起きたさまざまな出来事で示されているように,自由で公正な選挙手続きの結果を拒絶する意思が,そこにはともなっている.今後の研究での問題は,二極化以前の時代に起きたように,〔親の〕政党支持が〔子供に〕継承される際に,政治的な対立勢力への不信と蔑視をともなわないようにするにはどうすればよいのか,という点だ.

多謝: John Hobein.

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