アレックス・タバロック 「あなたの金融リテラシーはいかほど?」(2014年5月21日)

●Alex Tabarrok, “Financial Literacy”(Marginal Revolution, May 21, 2014)


まずは、次の3つの質問に挑戦していただきたい(出典は、アンナマリア・ルサルディ&オリヴィア・ミッチェルの二人のこちらの共著論文)。

1. あなたは普通預金口座に総額で100ドルを預けました。普通預金の金利は年率2%でした。口座にお金を預けたまま、5年が経過しました。さて、口座の残高はいくらぐらいになっていると思いますか?

a. 102ドルよりも多い b. 102ドルちょうど c. 102ドルより少ない d. わからない e. 未回答

2. 昨年の普通預金の金利は年率1%で、昨年のインフレ率は年率2%でした。あなたは、昨年のはじめに普通預金口座にお金を預けてずっとそのままにしていました。さて、年が明けましたが、預金口座に預けてあるお金で買える商品(財)の量は、昨年のはじめの段階と比べて、多くなっているでしょうか? 同じでしょうか? 少なくなっているでしょうか?

a. 多くなっている b. 同じ c. 少なくなっている d. わからない e. 未回答

3. 次の主張は、正しいと思いますか? それとも、間違いだと思いますか? 「株式投資信託に投資するよりも、一つの銘柄(一社の株式)だけに投資する方が大抵は安全だ」

a. 正しい b. 間違い c. わからない d. 未回答

多くのアメリカ人は、金融リテラシーが高いと自負しているようだが、残念ながら、先の3つの質問すべてに正解した人の数はごく限られていたらしい。

アメリカ人の回答者のうちで、3問すべてに正解したのはわずか3分の1程度だったという(当てずっぽうで正解したケースもあるだろうから、3分の1という結果もいくらかさ上げされてるだろう)。その一方で、ドイツ人やスイス人の回答者は、かなりの好成績を収めたようだ(全問正解した人の割合は、50%を上回るとのこと)。しかし、アメリカ人以上に散々な結果に終わったケースも多い。例えば、ニュージーランド人の回答者のうちで、全問正解したのはわずか24%。ロシア人の回答者だと、その割合は5%を下回ったという [1] 訳注;ちなみに、日本人の回答者のうちで全問正解したのは27%程度とのこと。

国籍ごとに結果に差がある理由のいくつかは、体験の違いによって説明できるだろう。例えば、日本人は、10年以上にわたってインフレをほとんど経験していない。そのためか、日本人は、他の国籍の人々と比べると、インフレが関わる2番目の質問で誤った答えを選びがちだったという。とは言え、どの質問もそれほど難解なわけじゃない。これまでの研究結果によると、この種の質問に正しい答えを出せるかどうかは、実生活においてお金が絡む重要な決定――住宅ローンの借り換え、クレジットカードでの借り入れ、退職後に備えた人生設計など――をそつなくこなせるかどうかと関わりがあることがわかっている。

アメリカの大半の州では、高校生にも学校で金融リテラシーが教えられるようになっている。高校で金融リテラシーを学んだおかげでその後の資産形成にプラスに働いたことを示す証拠もいくつかあるようだが、大して効果はないと結論付けている研究もある。なお、大半の高校教師は、果たして自分に金融リテラシーの基礎を学生に教えられるだけの能力があるんだろうかと不安を覚えている(pdf)ようだ。

経済学の基礎を教える大学の教師が学生たちのために大いに役に立てる分野はいくつかあるだろうが、金融リテラシーの向上を手助けするのもそのうちの一つだというのが私の意見だ。コーエンと2人で執筆した(経済学入門のテキストである)『Modern Principles』では、株式市場とパーソナル・ファイナンス(資産運用のノウハウ)をテーマに一章を割いたりして、金融リテラシーに関わる話題を幅広く取り扱っているが、まだまだやるべきことは多いようだ。

(追記)こちらのサイトで同様のクイズが出題されているようだ(質問の数は5つ)。是非ともチャレンジされたい。情報を寄せてくれた PD Shaw と Tim Ogden の二人に感謝。

———————————————————————————————

【訳者による補足】質問の答えは、以下の通り。

1番目の質問の正解は、a(102ドルよりも多い)/2番目の質問の正解は、c(昨年よりも買える量は少なくなっている)/3番目の質問の正解は、b(間違い)

References

References
1 訳注;ちなみに、日本人の回答者のうちで全問正解したのは27%程度とのこと。
Total
0
Shares

コメントを残す

Related Posts