アレックス・タバロック 「世論と戦争」(2007年4月17日)

●Alex Tabarrok, “Public Opinion and War”(Marginal Revolution, April 17, 2007)


先週のことだが、政治学者のスコット・アルトハウス(Scott Althaus)が我が大学(ジョージ・メイソン大学)にやって来て、戦争と世論の関係について興味深い話をたんまり語ってくれた。その中からほんの一例を紹介しておくと、新しい戦争がはじまると、世論調査で過去の戦争に対する好意的な評価――「あの戦争は正しかったんだ!」という意見――が増える傾向にあるという。 例えば、ベトナム戦争が終わってから何十年もの間にわたって、(米国内の)世論調査では「ベトナム戦争は間違いだった」という意見が大勢だったが、イラク戦争がはじまった途端に、世論調査でベトナム戦争に対する好意的な評価が一気に増えたというのだ。第一次世界大戦に対する評価の変貌ぶりは、もっとすごい。第二次世界大戦がはじまるまでは、世論調査では「第一次世界大戦は間違いだった」という意見が大勢だったが、第二次世界大戦がはじまると、世論調査で「第一次世界大戦は正しかった」と答えた人の割合が倍になったというのだ。それにしても、何ともヘンテコな話だね。だって、第二次世界大戦が勃発する可能性が濃厚になるほど、「(第二次世界大戦の遠因となったとも言える)第一次世界大戦は、やはり間違いだったのだ」って判断に傾くのが合理的だろうにね。

もう一つだけ紹介しておこう。アルトハウスは、“Priming Patriots”(「愛国心の植え付け」)と題された論文で、戦争に関する報道が世論に及ぼす影響を探っているが、ニュースで戦争の話題が頻繁に取り上げられるほど、その戦争に対する世論の支持が高まるという。批判的に取り上げられようと、肯定的に取り上げられようと、取り上げられる回数が多いほど、世論の支持は高まるというのだ。批判的な報道一辺倒になったり、戦争が長引いたりすると話は変わってくるが、そうじゃない限りは、ニュースで戦争の話題が頻繁に取り上げられると、国民の士気が鼓舞されて、国民の結束が強まって、その戦争に対する国民の支持が高まることになるのだ。なるほどねぇ。

戦争に関する世論の「非合理性」をあしらうためには、民主主義に対してどんなチェック機構を用意したらいいんだろうね?

Total
1
Shares

コメントを残す

Related Posts