タイラー・コーエン「お金持ち大学への寄付金に課税すべき?」

[Tyler Cowen, “Should we tax the endowments of wealthy universities?” Marginal Revolution, November 5, 2017]

『ニューヨークタイムズ』のこの記事にいくらか背景が詳しく描かれている:

木曜に下院共和党が公表した税制案では,私立大学のうち,学生500名以上で資産がフルタイム学生1人あたり10万ドル以上ある大学の投資所得に 1.4 パーセントの課税案が盛り込まれている.これは公立大学には適用されない.

現在のところ,大学への寄付金は課税されない.大学の非営利な活動目的の一部と考えられているためだ.新税制案が可決されれば,2018年から2017年までの間に30億ドルの税収が得られると見込まれる.広範な減税をまかなう新たな税源のひとつになると議会は考えている.


この課税が適用されるのはおよそ140校だということ,そして,民間の財団法人はすでに投資所得の税金を支払っているということに留意しよう.グレッグ・マンキューがこう書いてる

私の大雑把な計算が正しいなら,ハーバードのような大学はこの課税で学生一人あたり 1,000ドルから 2,000ドルを毎年払うことになる.

この変更には反対だ.その理由の大半は,政府が税基盤をもたらす新たな富の源を追求する方針をとるのを見たくないから,という点にある.政府非介入の焦点が焦点でなくなり,そのあとには出過ぎた行為や政治化が続くことがあまりに多い.〔「あれを許せばやがてこれも許される」式の〕「滑りやすい斜面」ってやつだ.

だが,こういうブレナン=ブキャナン風の主張にそれほど熱心でない人たちから見て,これに反対する論拠はいったいなんだろう? この課税案は比較的に豊かなところに課税するもので,それも,富からうまれた所得に課税する.これは金融への課税だ.民間の財団の投資所得に課税するのに反対する人なんて,「どんな課税にもあくまで反対」という人以外には聞いたことがない.そうした課税で,民間財団の形態が損なわれたためしもほとんどない.なにより,大学への寄付金は果てしない長期を見込んで行われているように思える.例の〔資本収益率が経済成長率を上回るという〕「g>r」ゲームをかなり上手くやっているように思える.早くも 1958年に,ポール・サミュエルソンは「g>r」ゲームからリソースを移転するのに現実のコストはかからないと教えてくれている.

というわけで,この件についてはこれからギャーギャーと騒ぐいろんな話を耳にするだろうけど,すぐれた反対論はリバタリアンによる反対論だけだ.税基盤を拡大するのがいつでもいいことだとはかぎらない.きっと「百万長者に減税するために教育を放棄するのか」みたいなレトリックを耳にするだろうけど,その手の厳密でない話に惑わされないように.そうした減税をしようとすまいと,巨額でこれから増大していく債務を払うのにこの大学への増税が理にかなった方法かどうかを考えなくてはいけないことに変わりはない.

法人所得税が主に資本にかかるものだと考える一方で今回の課税は主に学生の負担になるのだと考える人たちはいるんだろうか? いや,まあ,いるんだろうね.

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