タイラー・コーエン「ペット給食の帰着はいかに?」

[Tyler Cowen, “What is the incidence of pet pantries?” Marginal Revolution, February 8, 2016]

最近の流れといえば,犬などのペットを対象とする無料給食の社会福祉プログラムだ

〔ペット対象の〕食糧配給は動物福祉組織やペット愛好家その他による活動の一環となっている.そのねらいは,飼い主がペットを放棄してしまう前に彼らを支援することで,シェルターに保護される動物たちの数を減らすことにある.ASPCA は,2010年以来これまでに全米の121組織に40万ドルを与えて,ペットたちに無料で食料を分配するフードバンクなどのプログラムを支援してきた.


疑問がわいた人たちもいるだろうから言っておくと,これには民間資金・公共資金の両方が関わっているらしい.ただ,その比率はぼくにはよくわからない.ともあれ,これは論争になっている:

「これが大事だという理由は理解できますが,ニューヨーク市の食糧配給所の半数は,人間のニーズをまかなえていないんですよ」と語りつつ,バーグ氏は,自分も猫を飼っていたことがあると付け加える.「ペットにエサを与える前に,人間を対象にした食糧配給所に十分な食糧を供給すべきです.」

これに対し,ペット用食糧配給の支持者たちはこう反論する――ペットを助けることで,〔飼い主の〕人間を助けることになっている,というのが彼らの言い分だ.根拠として彼らが引用する研究によれば,ペットはストレスと血圧の低減を助け,気分を改善し,飼い主たちに感情のやすらぎをもたらすという.

ぼくは,それよりも帰着の観点で考える.まず,こう仮説をたててみよう:飼い主たちはなにがあろうとペットのエサをやるので,〔ペットへの食糧配給は〕飼い主たちへの純粋な現金移転とほぼ同等のはたらきをする〔エサ代が浮くので〕.他方,こうも仮説を立てられる:犬たちをもっと余裕のある飼い主たちに回す方が有益であるにも関わらず,こうして移転してしまうせいでこの必要な措置が先送りされてしまう.さらに,こんな考え方もできる:犬たちは配給を受けた分を余計に多く食べるばかりで,〔エサ代を浮かせることなく〕給付の大半が消え去ってしまう.あるいは,ベッカー的なモデルで考えると,飼い主たちは犬に与えるエサを増やす一方,散歩に連れて行く回数を減らすかもしれない〔※この箇所,どうしてそうなるのか訳者にはわかりかねます〕.こうすることで,移転の価値を手にするわけだ.長期的な効果は,飼い犬の総数と所得階層全体での犬たちの資源配置に作用する.犬がもっと余裕のある飼い主のもとにいる場合は,そうでない場合よりどれくらいマシなんだろう?

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