タイラー・コーエン「中年の危機」(2022年9月14日)

[Tyler Cowen, “The Midlife Crisis,” Marginal Revolution,  September 14, 2022]

本論文では,豊かな国々に暮らす人々の中年期の危機の記録を報告する.しかしながら,我々のデータセットに含まれた中年期の人々は,それぞれの所得のピーク近くにあり,典型的に病気をほとんど経験していないかまったく経験していない.また,世界でも屈指の安全な国々に暮らしている.彼らは,人類史でもっとも繁栄した時代に暮らしている.これはパラドックスめいた難問を提起する.とはいえ,この発見は,Elliott Jaques (1965) の予測と整合している(彼の予測は経済学者たちのあいだではあまり知られていないが).我々の分析は,初歩的な横断面分析に依拠してはいない.かわりに,本研究では,パネルデータと経時的データを利用する.これらは,合計およそ50万人の個人に関するデータである.このため,我々の主要な研究結果は世代効果によるものではない.また,単純な生活満足度の各種数値にも依拠しない.本研究では,次の項目で二次関数に近似した山型のパターンが見出された:すなわち,中年期の自殺・睡眠関係の問題・アルコール依存・集中力の問題・記憶力の問題・仕事上の強い緊張・生活に支障の出る頭痛・希死念慮・極度の抑鬱.この社会問題の深刻さは,豊かな国々の政策担当者たちに把握されていないと我々は考える.

上記は,Osea Giuntella, Sally McManus, Redzo Mujcic, Andrew J. Oswald, Nattavudh Powdthavee & Ahmed Tohamy による新しい NBER ワーキングペーパーから.

Total
9
Shares

コメントを残す

Related Posts