タイラー・コーエン「所得階層の移りやすさが世代間でどう変化しているか地域ごとに見てみると」(2022年4月24日)

[Tyler Cowen, “Local changes in intergenerational mobility,” Marginal Revolution, April 24, 2022]

〔※背景:祖父母の世代では移民として入ってきて低賃金労働をやっていたのが,次の父母の世代ではもうちょっと実入りのいい職業について上の所得階層に移り,さらに次の世代では中流の所得階層にまで移る――そういう世代間の所得階層の移動がどれくらいしやすいかは,社会のありようを考えるときに大事な特徴だ.低所得家庭の子はいつまでも低所得にとどまるのか,それとも,所得を伸ばす機会がたくさんあるのか.「所得階層の移りやすさ」あるいは「所得流動性」(income mobility) の研究は,そういうことを明らかにしてくれる.〕

本稿では,合衆国において,世代間の所得階層の移りやすさの変化を地域レベルで検討する.データには,1980年代生まれの個人に関するものを用いる.先行研究では,この期間に全国レベルでの所得階層の移りやすさには,なんら変化が見出されてこなかった.しかし,本研究では,そうした全国レベルの研究結果では,地域レベルでの所得階層の移りやすさの大幅な上昇・低下が隠されてしまっていることを示す.低所得の家庭出身の児童について見てみると,時間経過とともに,所得階層の移りやすさがおおよそ同じところに収束しており,また,地域ごとで比べた平均的な差は以前よりもずっと小さくなっている.高所得の家庭出身の児童について見てみると,所得階層の移りやすさの地理的なちがいは以前よりもずっと大きくなっている.本研究の結果からは,所得階層の移りやすさがそれぞれの場所で固定している特徴だと考えることに注意を要することが示唆される.

Christopher Hnady & Katharine L. Shester が出した論文はこちら.ほんのいくつかだけ,具体的な研究結果を並べておこう:

  1. 所得階層の移りやすさは,南西部で上昇してきている.
  2. 所得階層の移りやすさは,北東部で低下してきている.
  3. 都市部よりも地方の方が所得階層を移りやすい.また,この差は開いてきている.
  4. より裕福な家庭ほど,所得階層の移りやすさは居住地域に左右されている.

こうした主張の大半は,1980年代生まれの世代のデータにもとづいている.

via 才人 Kevin Lewis.

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