タイラー・コーエン 「ことわざの進化」(2004年2月2日)

●Tyler Cowen, “The evolution of proverbs”(Marginal Revolution, February 2, 2004)


小学1年生に諺(ことわざ)のクイズを出した――教師が諺の前半部分だけを口にして、続きを生徒に答えさせた――ところ、以下のような答えが返ってきたという。

  1. Better to be safe than punch a fifth-grader”(「5年生を殴らないに越したことはない」) [1]訳注;本来は、“Better to be safe than … Continue reading
  2. Don’t bite the hand that looks dirty”(「汚そうな手を噛むなかれ」) [2]訳注;本来は、“Don’t bite the hand that feeds … Continue reading
  3. A penny saved is not much”(「1ペニーの節約は大したことない」) [3]訳注;本来は、“A penny saved is a penny … Continue reading
  4. Don’t put off till tomorrow what you put on to go to bed”(「寝巻は明日になるまで脱ぐなかれ」 [4]訳注;“put off”という表現につられて、ついつい“put on”(「着る」)と口にしたのだと思われる。“put … Continue reading[5]訳注;本来は、“Don’t put off till tomorrow what you can do … Continue reading
  5. You can lead a horse to water, but how?(「馬を水飲み場まで連れていける・・・らしいけど、どうやって?」) [6]訳注;本来は、“You can lead a horse to water, but you can’t make it … Continue reading

詳しくはこちらを参照されたいが、意味が通らない4番目 [7] 訳注;4番目をそのまま訳すと、「寝巻を明日まで延ばすな」となる。を除くと、いずれも経済学的な発想との親和性が高いように思える。

ところで、大学の同僚であるデビッド・レヴィ(David Levy)とダニエル・ハウザー(Daniel Houser)の二人が、諺の進化の過程を辿る実験を試みようとしている [8]訳注;実験の成果は、Sandra Peart&David Levy(著)『The “Vanity of the Philosopher”:From Equality to Hierarchy in Post-Classical Economics』(の第11章「Analytical … Continue reading。「価格」と同じように、諺にも情報(なり体験なり)が集約されている(それゆえ、有用なヒューリスティックとなり得る)。そこで問題になるのは、諺はどのような方向に進化するのか(どんな知恵を伝えることになるのか)ということだ。大勢の意見(体験)の「平均値」――全体を平均した意見――を反映するようなかたちで進化するのだろうか? それとも、大勢の意見(体験)の「中央値」――全体の中間の意見――を反映するようなかたちで進化するのだろうか? あるいは、「最頻値」――多数派の意見――を反映するようなかたちで進化するのだろうか?

References

References
1 訳注;本来は、“Better to be safe than sorry”。直訳に近いかたちで訳すと、「用心するに越したことはない」。日本語の諺だと、「転ばぬ先の杖/備えあれば憂いなし」に相当する。
2 訳注;本来は、“Don’t bite the hand that feeds you”。直訳に近いかたちで訳すと、「飼い主(あなたを養ってくれる人)の手を噛むなかれ」。日本語の諺だと、「恩を仇で返すなかれ」に相当する。
3 訳注;本来は、“A penny saved is a penny earned”。直訳に近いかたちで訳すと、「1ぺ二ーの節約は1ぺ二ーの儲け」。日本語の諺だと、「塵も積もれば山となる」に相当する。
4 訳注;“put off”という表現につられて、ついつい“put on”(「着る」)と口にしたのだと思われる。“put off”には「脱ぐ」という意味はないが(「脱ぐ」は、“take off”あるいは“pull off”)、“put off”と“put on”が対(つい)になるように、“put off”に「脱ぐ」という訳をあてておいた。
5 訳注;本来は、“Don’t put off till tomorrow what you can do today”。直訳に近いかたちで訳すと、「今日できることは明日まで延ばすな」。日本語の諺だと、「川越して宿をとれ」に相当する。
6 訳注;本来は、“You can lead a horse to water, but you can’t make it drink”。直訳に近いかたちで訳すと、「馬を水飲み場まで連れていくことはできても、水を飲ませることはできない」。チャンスを活かせるかどうかは本人のやる気次第、という意味。
7 訳注;4番目をそのまま訳すと、「寝巻を明日まで延ばすな」となる。
8 訳注;実験の成果は、Sandra Peart&David Levy(著)『The “Vanity of the Philosopher”:From Equality to Hierarchy in Post-Classical Economics』(の第11章「Analytical Egalitarianism, Anecdotal Evidence, and Information Aggregation via Proverbial Wisdom」)に収録されている。
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