Paul Krugman, “A Smarter Commute In the Age of Uber,” Krugman & Co., July 18, 2014.
[“Life without Cars,” The Conscience of a Liberal, July 15, 2014.]
Uber 時代のスマート通勤
by ポール・クルーグマン
このところ,スマートフォン配車サービスの Uber とか Lyft なんかをめぐる議論をちょっと追いかけてる.少しだけ,独創的でもない考えを書いておこう.さて,厳密に言うと,その考えってのは独創的だ.つまり,ヨソで書かれてるのを読んだことがないって点ではぼくなりの考えにはちがいないけど,でもまあ,どこかで誰かが書いてるだろう.というわけで,これは参考のためでもある.
ともあれ:情報技術が媒介する新しい配車サービスから大きな便益がでてくるとしたら,それは,こうしたサービスのおかげで,自家用車を買わずに済ませるのが大勢の人にとって――マンハッタン住人に限らない大勢の人たちにとって――可能になったときだ.その点を考えてもらうと,これがどう機能しうるかわかる.
いま,ぬきんでてすごい交通機関がある地域に住んでいるのでもないかぎり,車なしに暮らすのはすごく難しい.とはいえ,考えてみると,大半の人にとって車を所有するのはかなりの浪費だ.大半の時間はなんの用もなく駐車されてるだけの,高価な備品だ.家でも出先でも駐車場が必要だ(立体駐車場の場合も多い).整備もしなくちゃいけないし,しょっちゅうイライラすることが起きる.信頼できる迅速なハイヤーサービスができれば,多くの人はときどき使うだけのものにこういうリソースを費やす必要から解放される.社会的な観点で見ると,大半の時間は使われずにいる多くの資本をつなぎとめておく必要がこれによって減少するわけだ.
ただ,一目瞭然な問題がある:ラッシュアワーだ.車の利用がいちばん多くなる時間帯は1日に2回やってくる.だからこそ,Uber なんかが配車をやってくれるとしても,これほど多くの車をぼくらは手元に置いてるんだろう.
ここで価格変化の出番となる.ピーク時に車で出かける方がピーク外の時間に出かけるのより高くつくとしたら,そうしたピーク時を避けるインセンティブが人々に生じる.通勤のために運転してるんじゃない人たちは,ピーク時の異動を避けるだろうし,車以外の移動手段を見つける人もでてくるだろう.より安上がりな通勤で得ができるようにスケジュールを調節し直す人(や企業)もでてくるだろう.すると,こんな社会が想像できるね――あちこち移動するのに主に車を頼りにしてるのは同じでも,いまのぼくらよりずっと少ない車でやりくりできる社会だ.
もちろん,こういう仕組みが機能しそうな耐久消費財は,車にかぎらない.ニューヨークの人たちには,郊外の人たちがもってるような冷蔵庫は必要ない(とくに,冷凍庫はいらない).なぜって,そこの角の食料雑貨店にかんたんにでかけられるからだ.都市の外でも,オンライン注文・配達がこれと同様の効果をもたらしうる.ただ,たしかに車は手強い問題だ.
繰り返すと,こんな話はもうどこかの誰かが言ってるはずだ.ただ,自分でこうやって考えてみるのが楽しいんだよ.
© The New York Times News Service
最後から4行目、「年の外」は「都市の外」でしょうか
ご指摘のとおりです.修正しました.ありがとうございます.