Tim Duyはオレゴン大学経済学教授であり、かつて米財務省に所属し、国際関係部門にてエコノミストとして、G7グループでは金融機関の政治的経済的コンサルタントして勤務。連邦準備と外国為替市場のモニタリングを任務とした。オレゴン大学よりPh. D. (経済学)取得。
Septaper or not? – Tim Duy’s Fed Watch by Tim Duy from Tim Duy’s Fed Watch
週末のお楽しみに加えて、そもそもどうしてこの資産購入ペースを縮小の議論にたどり着いてしまったのかということについて悩むことに週末の結構な時間を費やした。結局のところ数字はそれほど悪くはないが、かといってすごく最高!ってわけでもなかった。はっきりさせておきたいのだが、楽観的な数字で今月は始まった。しかし、雇用報告はまたもやこれまで通りの冴えないものであることが明らかになった。手短にいうと、非農業部門雇用者数はわずかな増加を続けているってことだ。
12ヶ月平均はそれほどひどく残念というほどではないが、たった一回あった飛び抜けた月の影響でもある。さらにいえば、不完全雇用指標は速いスピードで改善してるなんていえたシロモノではない。
労働市場の緩みは大きい。同様に、インフレ率はFRBのターゲットにちゃんと向かってはいない。
これらのどれも目新しいものではない。そしてこれらが今年の6月19日にベン・バーナンキ連邦準備議長をしてQEの出口戦略(exit path)のアウトラインを示すことを思いとどまらせることもなかった。それにしてもそもそもなぜそのような出口戦略の概略を示さなければならないのだろう?私が思うにその理由はFOMC声明のこの文にある。
購入する資産のサイズ、ペース、そして構成を決めるにあたって、委員会は経済的目的への進捗状況と同様に、そのような資産購入のもたらすおおよその効果とコストを適切に考慮していく。
バーナンキは資産購入—明らかに経済的目的の達成に向かっていることを示している—を終えるきっかけとして失業率7%を目安にすることに強く拘っているように見受けられる。事実、いまのペースで減少していくと、2014年の非常に早い時期にターゲットに到達するであろう。
もし失業率7%が実際に重要な水準であるならば今すぐ資産購入ペースを減らすべきである。さらに言えば、失業率の減少は、概ね市場予想値に一致するGDPの推移に連動している。
GDO成長率は財政支出の縮小にともなって予想されたとおり下落している。もし今後も予想が正しいとすれば、今年の下半期にGDPは加速するであろう。よってFRBの視点に立てば、概ね市場予想に整合的な見通しという意味で彼らの目的(失業率)に向かって大きな改善を遂げているところが分かるであろう。さらに金融不安のリスクという形でQEのコストが上昇しているとも考えられる。
しかし、インフレは?ギャップは?FRBはおそらくなにかまずい状況にあるってことに注意しよう。もしフィリップスカーブビューの立場をとるなら、失業率はインフレ上昇圧力がかかるレベルに急速に近づいていることが予想されるだろう。そしてそのような圧力が持ち上がってくる前に、FRBは間違いなく金融緩和を弱めはじめるであろう。そしてその圧力を取り除くための時間は、少なくとも失業率の推移を元に考えれば、どんどんなくなっている。だから資産購入から徐々に退きたいのならば9月は重要なタイミングになるってことがわかるだろう。長く待つほど資産購入の禁断症状に陥るリスクが高まるのだ。
そしてもしバーナンキが6月に資産購入ペース縮小を持ち出すことで何かしらの花火を打ち上げたと考えるなら、財政支出縮小のインパクトが消えたあとに訪れるなにかしらのとんでもない数字が現れて、突然FRBが資産購入の電源を引っこ抜くことを想像してほしい。
さらに今度は別の問題も持ち上がる。資産購入縮小に先立って財政政策の効果が徐々に弱まるのを確かめるのは理にかなっている。しかし、我々はその数字は第4四半期になるまで見ることができない。そしてその時点では失業率7%のまさにその頃を迎えているはずだ。繰り返すが、FRBはQEの電源をいきなり引っこ抜く状況に陥りたいと思う?
「でもでもでも、完全雇用の指標をもう一回見てよ」って君は言うだろう。たしかにインフレは失業率が7%、いや6.5%でさえも現実的ではない。でも、FRBもそのことは既に言及してる。金利に関する見通しのなかで:
非常に緩和的な金融政策スタンスを維持する期間の決定において、委員会は、労働市場の状態を測る追加的な指標、インフレ圧力とインフレ予想の指標、そして金融情勢分析を含むその他の情報も考慮する。
よって、上述の文脈から少なくともバーナンキが資産購入規模を縮小させようとする動きはリーズナブルであると私は考える。しかし、市場の予想通り9月に縮小を始めるのだろうか、それとも今年の終わりまで待つのだろうか?金利の上昇や各種の指標、そしてFRBからの発信から、彼らが今年の終わりからスタートさせるだろうと議論することはできる。しかし、新しいレジームへの調整は既に始まっていることから直ちに縮小を開始させるだろうと議論することも可能だ。
データやFRBからの発表にもかかわらず、6月19日以前の時期に比べて金利が高止まりしていることに注意する必要がある。その日、バーナンキはハッキリと市場予想をリセットした。FRBが資産購入のペースを加速させることに積極的でない限りFRBが6月19日をひっくり返すと予想するのは難しい。よって、FRBは近い将来に縮小を開始するか、縮小開始を遅らせて、量的緩和を突然ストップさせるのかのいずれかの立場をとることが予想される。前者は多くの関係者に予想されている動きであり、金利への大きな影響はないが、後者は金利への大きな影響が懸念される。いずれにせよ、9月のタイミングを逃せば12月が縮小開始の時期という予想が固くなる。実際、市場関係者はタイミングの遅れは、後の緩和縮小ペースの加速を意味することから、9月を逃すことは金利を低めるのではなくむしろ高める残念な結果になりかねない。
ボトムライン:資産購入規模縮小開始時期が9月になるかどうかは非常に不透明である。FRB発表や最近のデータはさらに不透明感を増すものである。しかし、フィリップスカーブビューの視点から考えると、失業率の安定的な低下がFRBの立ち位置をどれだけ落ち着かないものにしているか、私にはよく分かる。この状況は彼らにとっては彼らの見通しが正確であると完全に確信を持てるようになる前に緩和を縮小開始の決断を迫るようなものであるかもしれない。正確な見通しの遅れは現在予想されているよりも非常に積極的な引き締めをもたらす可能性がある。それゆえ私は縮小開始へのハードルは低く、ゼロ金利からの金利引き上げのハードルは高いと考えるようになったのである。さらに、金利上昇はもはやそこまで近づいているため、資産購入縮小開始から生じるコストはおそらく低い。もはや9月か12月かは大きな視点からは無意味である。とはいえ、私は12月ではなく9月である可能性が高いと見ている。なぜなら10月にプレスカンファレンスが予定されていないからである。