●Diane Coyle, “The Well-Read Young Economist”(The Enlightened Economist, December 3, 2010)
我が長男が(イギリスで大学進学希望者が学ぶ教育課程である)シックスフォーム課程で勉学に励んでいた時のことだ。ディナーパーティーや退屈な会議の合間に、友人や知り合いと一緒に戯れようと思って、(息子の役にも立つ)ちょっとしたゲームを考案したことがある。物知りな若者にお薦めの本を順番に挙げていく、というのがそれだ。ジャンルは問わない。フィクションでも、古典でも、ノンフィクションでも、何でもいい。読んで楽しい本。一読の価値ありと思うのであれば、冗長な内容であっても構わない。制約は一切なし。ゲームの評判はというと、上々だったようだ。会議に出席していた数名の知り合いから、理想的なリーディングリストを拵えるのがあまりにも楽しくて、会議に集中できなかった、と伝えられたほどだったのだ。
我が長男だが、今現在は大学2年生。大学では、政治と哲学と経済学を学んでいる最中。中でも、経済学に惹かれている模様。というわけで、先のゲームの内容をほんの少しだけ変えて、今回はネット民の力を借りることにしようと思う。ちなみに、我が長男は、一般向けの経済学書の類が大好き。とりわけ、ティム・ハーフォードの『The Undercover Economist』(邦訳『まっとうな経済学』)のファンだ。そんなわけで、(長男が既に読了済みの可能性が高い)一般向けの経済学書は除外することにして、経済学者を志す若者にお薦めの本を挙げよと問われたら、どう答えるだろうか?
なかなかの難問だ。というのも、現代経済学のコア(核心)の多くを知るには、学術誌に掲載されている論文を紐解く必要があるし、経済学者というのは文才のある学究とは言えないからだ。だがしかし、「読みやすさ」と「経済学のコアとはいかなるものかを窺い知れる」という条件はどうしても外せない。かような二つの条件を満たす本の中から、私なりに思い付くお薦めを挙げると、以下のようになるだろうか。
- 『The Worldly Philosophers』(邦訳『入門経済思想史:世俗の思想家たち』) by ロバート・ハイルブローナー;古典と呼ぶにふさわしい一冊。
- 『Information Rules』(邦訳『情報経済の鉄則』) by カール・シャピロ&ハル・ヴァリアン;今となっては、内容的にかなり古びてしまったが、経済学をインターネット時代のビジネスに応用する方法を例証してみせた書としては、今でも最高の一冊。
- 『The Evolution of New Markets』 by ポール・ジェロスキー;ポールは、私の知る範囲で最も優れた応用経済学者の一人。本書は、ビジネス経済学の書として出色の一冊。
- 『Irrational Exuberance』(邦訳『投機バブル-根拠なき熱狂』) by ロバート・シラー
- 『The Wealth and Poverty of Nations』(邦訳『「強国」論-富と覇権の世界史』) by デビッド・ランデス
上のリストは、今朝方ふと頭をよぎった思い付きをまとめたに過ぎない。他にも候補はたくさんあるに違いない・・・ですよね?
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