ノア・スミス「いっこうにAI が SaaS をつぶす様子がない」(2026年9月18日)

AI 関連でとりわけ愉快な展開をたどってる物語がある.世間で「もうすぐ AI に滅ぼされるぞ」と言われてるものがどれもこれも AI によっていっこうに滅ぼされる様子がないんだよね.労働者の日に書いた記事では,AI がいっこうに仕事をなくす様子がない話をした.その一ヶ月後には,インドのアウトソース請負業務をやってる企業がいっこうに AI につぶされる様子がない話もした〔日本語記事〕.

さて,Stripe Economics のアーニー・テデシと愉快な仲間たちが,こんな記事を書いてる――「サービスとしてのソフトウェア」産業が,いっこうに AI によって滅ぼされる様子がない件.

今年,コーディング・エージェントが登場したとき,ソフトウェア企業の株式は皆殺し状態になった.「Claude Code でずっと安上がりにぜんぶつくれてしまうのに,わざわざ Salesforce その他の企業に大枚を払って自社用ソフトウェアの作成と維持を頼むヤツがどこにいるってんだ?」

その理屈はいくらか直観的にわかる.ただ,事態はそうは転ばなかった――少なくとも,いまのところはちがう.実際のところ,サービスとしてのソフトウェア (SaaS) 企業は AI 時代になっていっそう儲かり始めてるんだよ.テデシと Stripe のチームは公開取引されてる Saas 企業の指標を追跡した.すると,コーディング・エージェント登場後にそうした企業の収益はいっそう急速に成長していたのがわかった:

Source: Ernie Tedeschi

しかも,SaaS 企業の株価は,軒並み,先だっての大幅下落からあらかた持ち直している:

Source: Ernie Tedeschi

アーニーの記事には,愉快なグラフがもっとたくさん掲載されてるよ.

「いったいなにがどうなってんの?」 理由はなんであれ,企業はいまも Claude Code で内製しようとせずソフトウェアに対価を払っている.そして,おそらく SaaS 企業は AI を利用して自社の生産性を向上させている.経済の他のいろんな分野と同じく,「これから人に取って代わるぞ」と世間で思われていたところでAI は人間を補完する役に回っている.

もちろん,ひとたび AI が十分によくなったり AI 中心のビジネスモデルによって既存ビジネスモデルが苦しくなれば,これが一変する可能性もある.ただ,いまのところ,「AI が誰も彼もなにもかもにとってかわりつつある」という単純な物語は展開していない.


[Noah Smith, “AI keeps stubbornly refusing to kill SaaS,” Noahpinion, September 18, 2026]

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