ノア・スミス「民主党にとって、ここからが正念場だ」(2026年11月6日)

民主党は、自分たちが何を掲げ、何をしたいのかを見極めなければならない

民主党は火曜日の選挙で歴史的な勝利を収めた。これは考えうる最善の結果だった――ドナルド・トランプはあまりに多くの過ちを犯し、あまりにあからさまな腐敗に手を染め、あまりにひどい行為を重ねてきたので、もし彼の党が選挙で罰せられていなかったら、アメリカの将来にとって悪い兆しになっていただろう。でも実際のところ、僕は慎重にではあるけど希望を持っている――普通のアメリカ人が主導権を取り戻し、分断と混乱の一瞬を利用してこの国の権力の要衝を奪い取った過激派たちに、叱責を浴びせたんだ。

中間選挙ではこの半世紀で最大の波だった。2010年のオバマの中間選挙での敗北も、2018年のトランプの敗北も、今回とまったく比べものにならない。これほどの壊滅的な大敗となると、1974年と1976年までさかのぼらないと見つからない。

出典:エコノミスト

待てよ……1974年と1976年だって? 1974年はニクソンがウォーターゲート事件で辞任した年で、1976年はジミー・カーターが大統領に当選した年だ。この時のどちらかの勝利が、アメリカにおける民主党支配の時代の到来を告げたと言えるだろうか? いや、そうはならなかった。実のところ、共和党はその後まもなく巻き返し、1980年代のアメリカ政治を支配し、何十年にもわたって国を右へと引っぱっていったんだ。

だから、民主党は、これからすべてに永遠に勝ち続けると自画自賛を始める前に、「短期的な成功の後に長期的な失敗が続く」歴史について考え、今回の勝利が同じような結末に陥るのをどう避けるか、よく考えるべきだ。ハンニバルが大勝利を収めた後、麾下の将軍の一人がこう言ったと伝えられている。「ハンニバルよ、あなたは勝ち方を知っているが、その勝利の活かし方を知らない」。民主党は、自分たちの勝利をどう活かすかを見つけ出さなければならない。

それは面倒くさい問いだ。民主党は今回、議会を握ることになった。だからといって政権を握っているわけではない。トランプは、彼らが可決する法案の大半に拒否権を行使できるし、実際にそうするだろう。限られた力しかないなかで、民主党は次のことをすべて同時にやらなきゃいけない。

1.トランプの悪い政策をできるだけたくさん阻止すること。
2.たしかにトランプはレームダックだ。だけど、彼の〔悪行に〕スポットライトを当て続けないといけない。
3.多くの法案を通せないにもかかわらず、アメリカ国民に明確なイデオロギーと明確な計画を示すこと。

それは可能だ。特に、――まず間違いなくそうなるだろうけど――トランプが腐敗を続け、過ちを重ね、国民を遠ざけ続けるならなおさらだ。民主党は2006年の中間選挙で勝ち、そのまま2年後にはオバマをホワイトハウスに入れた。トランプも同じような行路にいるように見える。

だが、いつもそうなるとは限らない――共和党は2010年に中間選挙で大きな波を起こしたあと、2012年にはオバマに敗れたし、民主党も2018年の中間選挙に勝ったあと、2020年にはトランプには辛勝だった(それもコロナにずいぶん助けられて、やっとこさの勝利だった)。

民主党が中間選挙での成功を大統領選の勝利につなげようとするなら――長期的な党派的優位は言うまでもなく――2016年から2024年までの惨憺たる年月のあとで、自らのブランド、売り込み方、そして政策綱領を再構築することに懸命に取り組まなければならないだろうね。

今回は中道左派の勝利だった

もうたくさんの人が指摘してる大事なポイントなんだけど、民主党の大きな波は主に民主党穏健派が勝ち取ったってことなんだ。NYTの以下のような記事を書いている。

中間選挙戦の大半において、進歩派の民主党反主流派がスポットライトを独占していた……しかし、民主党が議会両院の支配権を掌握した今週の圧勝への道は、共和党寄りの州や接戦選挙区で何か月もかけて有権者を説得してきた穏健派によって、圧倒的に切り開かれた……

穏健派の躍進の規模は、議会内で中道派グループの陣容が拡大していることに反映されている。穏健派・保守派の下院民主党議員による議員連盟である「ブルードッグ連合」は水曜日、少なくとも14人を新たに加えてほぼ2倍の規模になったと発表した。また、「ニュー・デモクラッツ」や「プロブレム・ソルバーズ」を含むほかの中道派グループも、その数を大幅に増やした。

これの一部は、純粋に仕組みの問題だ。極左の人たちは、民主党が圧倒的に強い選挙区や州の予備選で穏健派の民主党員を追い落として勝つ傾向がある一方で、穏健派は接戦(スイング)選挙区や接戦(スイング)州で勝つ傾向がある。だから、波が大きくなって民主党がより多くの接戦(スイング)選挙区や州で勝てば勝つほど、穏健派の方が左派よりも割合的にいい成績を残す傾向があるわけ。

でも、今回の選挙サイクル自体が、穏健な中道左派への幅広い支持を表してたってことを示す兆候もある。全国各地の住民投票では、左派のいろんな政策が否決されてるし、民主党が圧倒的に強い牙城では、左派候補が中道左派候補に負け続けてるんだ。

〔民主党内〕左派候補は総じて、選挙での成績が相対的に弱かったんだ。

出典:ジェフ・モーラー
出典:ジェフ・モーラー

さらには、今年、注目された選挙で勝った有名な民主党政治家の多くが、主要な争点について中道の立場をはっきりと支持している。

それに、民主党の大物の多くは、2020年や2022年にはしょっちゅうやってた「ウォーク」な文化的アピールも、もうしてないんだよね。
〔訳注:ウォーク(目覚る):2014年頃からアメリカで盛んになった、文化的・アイデンティな社会問題に突如目覚めたように過激になった左派の社会正義の運動・現象のこと。〕

ここでの基本的な話は二つある。第一に、2010年代の「ウォーク」文化の波は2020~21年にピークを迎えて、今もゆっくりと退潮を続けている。これは、トランスジェンダーのスポーツ参加みたいな文化的争点で、有権者が保守的な立場を支持し続けていることに表れているんだ。

第二に、有権者はまだ社会主義運動を受け入れてない。バーニー・サンダースが支持した候補が比較的振るわなかったことや、カリフォルニアの億万長者税が否決されたことが、その証拠だ。

つまり、民主党はこの2026年の中間選挙の勝利が条件次第で脆いものだって分かってるってことだ。普通のアメリカ人は、無関心で無気力な状態とうんざりするほど極端な党派対立で麻痺した状態から立ち上がって、どっちの党の過激派だろうと罰する用意ができてるんだ。

この「ノーミー(普通の人)の蜂起」は、中道左派の民主政治家を前面に押し出すことになったし、より進歩的な民主政治家たちにも、自分たちのより過激な立場をトーンダウンするか、戦略的に妥協することを強いてきた。

でも、穏健さそのものはイデオロギーでも政策プログラムでもない。そして、今後1年半ほどの民主党にとっての大きな課題は、まさにここにあるんだ。

頭のない民主党

今の僕の見立てでは、民主党に投票する有権者のほとんど――民主党寄りの無党派層やスイング有権者も含めて――は、この国がどう統治されるべきかとか、アメリカの未来がどうあるべきかとか、そんなことを真剣に考えちゃいない。彼らが考えてるのは、目の前の脅威についての短期的なことだけだ。トランプとMAGAが嫌いで、消えてほしいと思ってる。本当に、それだけなんだ。

ネイト・シルバーはこれを、超人気の政治・歴史ブロガー、ヘザー・コックス・リチャードソンにちなんで「ヘザー・コックス・リチャードソン主義」と呼んでる。
〔訳注:ヘザー・コックス・リチャードソン:アメリカの伝統的民主主義、自由と平等のリベラルな合意等を訴える人気歴史学者。〕

シルバーはこう書いている。

民主党の第三の派閥は、リチャードソン主義、あるいは僕が同義語として扱う言葉で言えば「#Resistance Libs(レジスタンス・リベラル)」だ。彼らは年配で、学歴が極めて高く、圧倒的に女性が多く、政治にめちゃくちゃ熱心。これが、ノー・キングス(王はいらない)抗議運動や、反トランプの超人気ブログ、特定の有名ポッドキャスト、Blueskyの大部分なんかを含む政治活動群のオーディエンスとなっている。

シルバーは「ヘザー・コックス・リチャードソン主義」をいろいろ批判してるけど、そのほとんどに僕は同意しない。僕はヘザー・コックス・リチャードソンが好きだ。一日中、米国の公共ラジオ放送であるナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)を聴いてて、テレビ画面にドナルド・トランプが映ると体調が悪くなるような郊外のママたちが好きなんだ。彼女たちの直感は正しい。トランプは極めて悪い大統領だ――ただ悪いだけじゃなくて、アメリカ合衆国そのものの長期的な安定と機能を損なうという意味で、類を見ないほど悪い。これに怒るのは、たとえ他のすべての政治的見解や大義を締め出してでも、きわめて理にかなってるし理解できる。ノー・キングス(王はいらない)抗議運動については、今週の中間選挙の結果と完璧に符合してるように見えるし――おそらく結果にも貢献したんだろう。

それに、ほとんどの普通の人にとっては、トランプに腹を立ててれば十分なんだ。市民のほとんどは政治哲学者でも運動指導者でも知識人でもない。トランプの後でこの国がどこへ向かうべきか、あるいはこういう差し迫った脅威がないときにどんなイデオロギーや考えが僕らを導くべきか、なんてことを考えろっていうのは無理な話だ。

でも、誰かがそういうことを考えなきゃいけない。さもないと、民主党はトランプと同じくらい統治できないってことを証明することになる――まあ、統治できなさはトランプの7割くらいかもしれないけど、それでも十分にひどい。そして僕らの政治は、バックラッシュに対するバックラッシュに対するバックラッシュという終わりのない連鎖が続くんだ。各党が、革命の日を迎えることに全エネルギーを注いで、その翌朝に何が起きるかにはまったくエネルギーを注がなくなっちゃう。

今、レジスタンス・リベラルの問題は、頭がないってことだ。トランプの1期目のときは抵抗派はいろんな〔ポリコレ的〕アイデンティティ運動に突き動かされてて、構造的人種差別や女性蔑視なんかとの闘いっていう考えで一つにまとまってた。ヒラリー・クリントンは2016年の選挙戦を、「反人種差別主義 vs.トランプ流人種差別主義」の戦いとして位置付けることを、わざわざ意識的に選んだ。カマラ・ハリスも2020年に似たようなことをしたし、ジョー・バイデンは、以前なら過激だと見なされてたような各種のアイデンティティ主義的社会政策を、自分の政権に黙って推し進めさせたんだ。

実際、アメリカ国民は今でもそういう過激な立場を過激だと思っていて、それに従って投票で民主党を罰したんだ。ウォーク革命の終焉でレジスタンスは頭を失った――同じ怒りだけはそのまま残ったけど、アメリカの未来へのビジョンは失われたんだ。

僕が見る限り、アイデンティティ政治に代わってレジスタンスの指針となる理念の座を争ってる派閥は、基本的に以下の三つだ。

1.極左――アブドゥル・エル=サイード、ゾーラン・マムダニ、バーニー・サンダースなど
2.ウォーレン派の進歩的知識人
3.アバンダンス(豊かさ)運動

どれもこれも深い欠陥を抱えてて、僕が思うに、結局はほぼ間違いなくそれぞれを失格にすることになるだろう。

極左は組織立っていて、目的意識があって、規律正しくて、意欲も満々だ。おそらく他の派閥よりも指導者の座を欲しがっている。でも彼らの運動には、民主党を率いるにはまずい選択にさせる致命的な弱点がいくつかあるんだ。第一に、極左は派閥根性が極端に強くて、大きな傘を広げることより、民主党の主流派をひたすら背後から刺すことばかりに集中している。

二つ目は、極左の政策は極端すぎて、行き過ぎて裏目に出がちだってこと。カリフォルニアの億万長者税の失敗がその好例だ。アメリカ人は富裕層にもっと課税してほしいと思ってるけど、億万長者税は極端すぎて設計もまずかったから、有権者はそれを否決しただけじゃなくて――将来そういう税を禁じる対抗の住民投票まで承認したんだ。

第三に、極左は本能的に悪い人たちや悪い大義と手を組む。極左の配信者ハサン・ピカーはテロリストを称賛し、ウラジーミル・プーチンによるクリミア奪取を支持してきたし、新たに当選した極左の女性下院議員ダリアリザ・アビラ・シュヴァリエは「西洋文明の完全な根絶」に捧げると称する団体を設立した――などなどだ。

そして第四に、極左思想はときにウォークに代わるものと見なされるけど、極左自身がめちゃくちゃウォークだったりする。ちょっと物見遊山に、2019年のアメリカ民主社会主義(DSA)大会の有名な映像とか、ロー・カンナ下院議員の盛大にネタにされた以下のパフォーマンスを見てみるといい。

こういう欠点は、極左がアメリカの左派を掌握する可能性にとって致命的になるはずだ――そしてたぶん、実際にそうなる。

レジスタンスを掌握しようと争ってる第二の派閥はウォーレン派の知識人たちで、彼らは富裕層――具体的にはテック業界の富裕層――を攻撃することに一点集中してる。ウォーレンは2019年には火がつかなかったけど、彼女の派閥はバイデン政権下で、自分たちの人材を権力の座に送り込むのに大成功した。

でも、なんか裏目に出たんだよね。〔ウォーレン提唱の〕新反トラスト運動は実務的にはほとんど何も成し遂げられなかったし、もっと根本的には、反トラスト法の改正をどんな形であれ一切進められなかった。何年もザッカーバーグや旧FAANG企業に怒りをぶちまけてきたけど、AIが出てきて彼らのビジネスモデルが崩れたら、ただ滑稽に見えただけだった。AIの開発をより労働者寄りの技術へ「誘導する」なんて知的運動も(それがどんな形になるにせよ)、どこにも向かってないんだ。

そもそもウォーレン派は、有権者の心にいつも火をつけられない頭でっかちの知識人たちが主な構成員ってだけでも十分なのに、それに加えて致命的な欠陥がある――標的を間違えてるんだ。民主党はトランプを憎むことに完全に集中してるのに、ウォーレン派はマーク・ザッカーバーグやジェフ・ベゾスを憎むことに集中してる。アメリカ人はそもそも、ザッカーバーグやベゾスが金持ちだってことに、それほど怒ってないんだよ。イーロン・マスクのことは概してひどく嫌ってるけど、それは彼の右翼的活動とネット上での態度のためだけだ――彼が電気自動車や再利用ロケットを売ってた単なる実業家だったころは、彼の巨万の富なんて気にしてなかったんだ。

ウォーレン派が、MAGAの右翼じゃなくて億万長者のテック野郎こそが僕らの生活様式にとって最大の脅威なんだと、国民に納得させることなんて絶対にないよ。

で、第三の派閥はアバンダンス(豊かさ)だ。三つのうち、もし選ばなきゃいけないなら、間違いなくこれを選ぶね。アバンダンス運動が掲げてるものが本当に好きだからさ。アバンダンスの政策――たとえば今議会を通りつつある超党派の〔行政効率化を目的とする〕許認可改革法案(超党派アメリカ負担軽減・雇用法案)みたいなもの――は、左派やウォーレン派がやりたがってることのほぼすべてより賢いし、政治的にも実現可能なんだ。

アバンダンスの問題は、それが主に知的運動であって、政治運動じゃないってことだ。全部政策の話なんだ――街頭を行進するんじゃなくて、お偉いさんの耳元にささやきかける、みたいな。アバンダンスの指導者たちは、エズラ・クラインやデレク・トンプソンみたいないい人(ナイスガイ)たちで、みんなが幸せになって子犬を飼えたらいいな、と思ってるだけなんだ。

それに、アバンダンスのアイデアはほぼ全部いいものだ。その多くは、特に住宅とエネルギーに関しては、実際に実行されるだろう。でも、それが実現するのは、エリートたち――一部の極左や共和党員も含めて――が論理的に「これは良い」と納得するからであって、アバンダンス運動が、何年も溜め込まれた反トランプの怒りをうまく活用して方向づけられるからじゃない。アバンダンスは勝つだろうけど、アバンダンスをやっても、民主党が勝利に必要とするすべてを勝ち取ってくれるわけじゃないんだ。

民主党には、どんな運動が提供できるものよりも、もっと何かが必要なんだ。大衆の情熱をかき立てて、しかも実際に機能する見込みのある理念が必要だ。普通の、ノーミーなアメリカ人――共和党を追い出そうとちょうど立ち上がった有権者たち――に、未来を信じる理由と、民主党が自分たちをその未来へ連れて行ってくれると信じる理由を与えてくれる何かが必要なんだ。

そのイデオロギーはあるんだ。1世紀前に、フランクリン・ルーズベルトとその後継者たちがそれを活用した。まず大恐慌と戦うため、次に第二次世界大戦に勝つため、そして最後に戦後に生まれた現代社会を築くためにね。僕が言ってるのは、リベラル・ナショナリズムのことだ。

半年前にその投稿で僕が以下のように書いた。

20世紀、アメリカには、めまいがするほど多様な背景から単一の国民的アイデンティティを築き上げることに力を注いでたイデオロギーがあった。それがリベラル・ナショナリズムだった……

フランクリン・ルーズベルトはアメリカ先住民に対する強制同化政策を終わらせ、部族の土地で彼らにもっと大きな自治を与えた。黒人の顧問団を抱え、黒人を経済的に支援するたくさんのプログラムを作り、黒人の業績を広める文化プログラムを立ち上げ、元奴隷の証言を保存した。宗教間の理解と協力を促すキャンペーンを展開して、アメリカに伝統的に根づいていた反カトリック的偏見や反ユダヤ主義を減らすのにも役立った。彼の連邦作家計画は作家を雇って、アメリカの文化的多様性を記録させた……フランクリン・ルーズベルトはまた、移民の国としてのアメリカという考えを強く打ち出した――それは、右派が排除しようとしているにもかかわらず、今なおアメリカ人の精神を深く支配している考えなんだ……

フランクリン・ルーズベルトとリベラル・ナショナリストたちは、現代の多文化主義的な進歩派じゃなかった。彼らは国民の統一を強く信じてた。これは明らかに、第二次世界大戦中の愛国心、アメリカの制度への敬意、国家目的の共有感覚を意味してたけど、それだけじゃなくもっと多くのことも意味してた。フランクリン・ルーズベルトとニューディール推進者たち――そしてとりわけ戦時情報局――は、アメリカには、アメリカ人のさまざまな背景を超越する統一的な文化、民主主義的理想、歴史観、生活様式があるという考えを推し進めた。ニューディールの歴史には、アメリカ人らしさを一種の共有された市民宗教へと鍛え上げようとする試みの例があふれてる。

民主党はその気になりさえすれば、リベラル・ナショナリズムを取り戻せる。ジョン・オソフやジェームズ・タラリコみたいな穏健派の政治家は、バラク・オバマがそうしたように、ルーズベルト的な多元主義の愛国心を使って、善き統治の中道主義やトランプへの反対を超越できる。アバンダンス運動の知識人たちは、リベラル・ナショナリズムを使って自分たちの政策に情熱を加えられる――結局のところ、僕らが物質的な豊かさに値するのは、まさに僕らがアメリカ人だからじゃないか?

今、アメリカ人は基本的にルーズベルト的な信念をたくさん抱いてるし、多くの民主党政治家・支持者は、自党の過去から受け継いだルーズベルト的な本能を今も持ってる。でも、「ウォーク1.0」の終焉で生まれた情熱とインスピレーションの空白を、リベラル・ナショナリズムが埋めるところまでは、まだ至ってない。民主党には、そのビジョンを復活させるための1年半があるんだ。

そうするには、いくつか衝突が避けられない――アメリカは悪の帝国だと信じてる極左との衝突、ビッグテック企業を国家の目的のために活用するんじゃなくて破壊したがるウォーレン派との衝突、そして統一された国民文化を推進することは人種差別的な抑圧の一形態だと信じてる〔ポリコレ〕アイデンティティ主義の活動家たちとの衝突だ。でも、これに取り組まなきゃ、民主党は反動から反動へとあてもなく漂い続けるか、さもなきゃ「とても最適とは言えない船長」たちの支配下に落ちるかのどっちかだ。

野党として未来を築く

それに、もっと現実的な問題もある。民主党が議会を握りつつ大統領職は握ってない今後2年間に、実際に何をすべきかって話だ。これは根本的に難しい問題だ。トランプは民主党が可決するほとんどどんな法案にも、あっさり拒否権を行使できるからね。ここでのいつもの戦術は、大統領がやろうとすること全部をひたすら妨害することだ。大統領の任期を失敗に見せれば次の選挙で野党に有利になる、と期待しながらね。

でも、民主党はこれよりうまくやれると僕は信じてる。まず第一に、民主党はトランプとその家族や友人の汚職を調査できるし、そうすべきだ。汚職は今回の中間選挙で巨大な争点だったことが判明した――僕が思ってた以上に重要だったんだ。

野党の立場でも、民主党はトランプ政権の終わりが見えないほど続く汚い行為の行進に、光を当てることができる。それに実際、そうなりそうな気配だ。

汚職は、共和党を追い出した有権者の懸念事項リストの首位にあった……今、新たに権力を得た民主党は、この問題を最優先課題に据えている……議会両院の民主党幹部は、まもなく手にする多数派の地位に伴う召喚状発行権限と、より大規模な調査スタッフを動員して、ドナルド・トランプ大統領とその周辺の人々が国民の負担で行ってきたと彼らが主張する私腹肥やしを調査すると誓っている……

下院民主党は、トランプが政権に復帰して以来、トランプとその家族がどのように裕福になったかを調べるための大規模な監視計画を準備している……監視・政府改革委員会の民主党筆頭であるガルシアは、トランプ一族のビジネス取引、政権によるジェフリー・エプスタイン捜査の扱い、移民税関捜査局(ICE)の活動を含む五つの優先事項を示した。天然資源委員会の民主党筆頭委員であるカリフォルニア州選出のジャレッド・ハフマン下院議員は、トランプのホワイトハウスの舞踏室やその他の建設プロジェクト、さらに鉱物取引におけるトランプ一族の役割を掘り下げて調べたいと述べた……上院では、国土安全保障委員会の常設調査小委員会の委員長に就任すると見込まれているリチャード・ブルーメンソール上院議員(民主党、コネチカット州)が、同小委員会は首都周辺でのトランプの不動産プロジェクトや、特使スティーブ・ウィトコフとの暗号資産取引を調べたいと考えていると述べた。

これはいいね。でも、これと、たぶんいくつかの超党派の合意、それにトランプの最悪の権力濫用に対する多少の妨害と監視以外に、議会の民主党は何ができるんだろう?

もう一つできるのは、〔今の〕失敗しても大きな痛手を負わない状況で、自分たちの経済政策プログラムを練り上げることだ。アメリカには大きな経済的課題が二つ迫ってきている――制御不能な国家債務とAIだ。民主党は、もし自分たちが大統領職を握っていたらこの二つの課題にどう対処するかを、示し始め、同時に考え出し始めることができるんだ。

政治的に見ると、実は債務のほうがはるかに難しい部分だよ。赤字削減はどうしたって痛みを伴う。歳出削減と増税を何らかの形で組み合わせなきゃいけないからね――どっちも有権者には不人気になりがちだ。もし民主党が歳出削減と増税を全力で盛り込んだ予算案を出しても、トランプはそれをただ拒否権で潰すだけだろうし、まだ債務削減の必要性に向き合わされてないアメリカ人は、そのことでトランプを褒めるんだ。

代わりに、民主党は最終的な赤字削減計画の一部だけを出す必要があるだろう。パススルー事業に対するトランプ減税を失効させるのは、いいアイデアの一つだ――僕みたいな人間が、自営業者だというだけで、W-2の給与所得者〔会社員〕よりも低い税金を払う理由なんて、基本的にないんだから。

AIは結局、もっと厄介な政策課題だ。AIが経済にどう影響するのか、本当にわかってないからね。でも、避けられない混乱から人間の労働を守るための措置――柔軟な福祉プログラム、雇用インセンティブ、社会的富基金なんか――を導入するのは、ほとんどデメリットがないし、民主党にとっては、テクノロジーの恩恵を公共の利益のために活用するっていうビジョンを売り込む手段にもなる。民主党は、こういうアイデアが国民にどう受け止められるかを見て、人気のあるものを2028年の党候補の政策綱領に盛り込めばいいんだ。
〔訳注:社会的富基金:政府が株式・不動産などの資本資産を保有し、その運用益を国民全体に直接分配する基金。資本の果実を労働者にも還流させることで、富裕層に偏りがちな資本所得を再分配し、格差是正を目的とした制度。〕

今回の中間選挙の圧勝は、より良い国を築き、混沌としていて、恥ずべきトランプ時代を過去のものにするための第一歩だ。でも、イデオロギーの面でも、政策プログラムを練り上げるという点でも、やるべきことは山ほどある。革命の翌朝こそが、いつも厳しい仕事の始まりなんだ。

[Noah Smith, “For the Democrats, now comes the hard part“, Noahpinion, Nov 06, 2026]
〔アイキャッチ写真提供:コンラン・ヒューストン(Openverse経由)〕

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