ノア・スミス「2026年アメリカ中間選挙:普通のアメリカ人は、MAGAに罰を与えた」(2026年11月4日)

普通の人々(ノーミーズ)は存在する。そして、彼らは、MAGAが限度を超えたことで怒りを示したんだ。

MAGAの人たちは、いくつもの妄想にとらわれてきたみたいだ。

第一に、MAGA派は中間選挙で壊滅的な敗北を喫したという事実に、本気で驚いているみたいだ。実際、世論調査も予測も予測市場も、ここ数か月ずっと民主党の勝利を予想していた。でも、多くのMAGA系の人々は、アメリカにはいつでもどこかに「隠れトランプ支持者」の大きな貯水池があって、みんながいつもそれを見逃している、というのをどうやら信じていたらしい。そして、この「静かなる多数派(サイレント・マジョリティ)」が共和党を救いに駆けつけて、世論調査員や予測者たちが全員間違っていたと証明してくれるのだ、と——2016年みたいにね。

控えめに言っても、そんなことにはならなかった。選挙の夜のサプライズは、実際には民主党にさらに有利に働いた。民主党は、ほとんどどの世論調査員や予測者が予想していたよりも、はるかに広範で決定的な勝利を収めたんだ。

トランプを伝統的に支持してきた人口統計上の基盤――大卒じゃない白人有権者——でさえも、今回はこぞって共和党を見捨てたんだ。

トランプはこの選挙の審判に異議を唱えようとするかもしれない——投票は不正だったとわめいたり、非常事態を宣言して憲法を停止したり、大統領権限を乱用して民意を無効にしたりすることで。でも、僕の勘では彼はそんなことしないだろう。その重要な理由はピーター・ハンビーが語ってる。

MAGA派は、トランプの敵は老人と女の集まりだと信じ込んでいる限り、〔トランプが憲法停止なんかの〕自己クーデターをやったあとに勃発するであろう街頭での衝突で、勝てるんじゃないかと空想できたわけ。でも、若い男性――とりわけ若い白人男性――がトランプの側にいないなら、何らかの内戦を始めても、MAGA派にとってはうまくいかないだろうね。

ともあれ、この記事を書いている時点で、上院選挙の結果地図は以下のようになっている。

出典:Google

カンザスは民主党カラーの青に塗られている。サウスカロライナもそう。アイオワもそう。ミシシッピもおそらく最終的には青くなるだろうね。

そして何より、〔伝統的に共和党地盤だった〕テキサスが青いんだ。上院選だけじゃない――共和党のグレッグ・アボット知事まで、民主党の挑戦者ジーナ・ヒノホサにその座を奪われた。2か月前、テキサス大学のフットボールの試合でインド系アメリカ人のファンを見て危機を煽るツイートをしたボー・フレンチも、テキサス鉄道委員選で民主党のジョン・ローゼンタールに敗れた。

「赤いテキサス」の陥落は、画期的で時代を画す出来事だ。僕はテキサスで育ったから、民主党が州全体のレベルで役職を制したのをたまには見てきたけど、それはいつも昔ながらの保守的な南部民主党タイプだった。昨日の選挙では、ともに筋金入りの進歩派であるジーナ・ヒノホサとジェームズ・タラリコが、州知事職と上院議席の一つを勝ち取った。実際、今、州全体の公職に就いている共和党員は……テッド・クルーズだけだ。

どうしてそうなったのか? 一因はMAGA派の候補者選びの失敗だった——MAGA派の予備選有権者たちは、人気のある主流派の共和党上院議員ジョン・コーニンを、トランプに奴隷のように忠実ではないという理由で追い出し、代わりにケン・パクストンにすげ替えた。パクストンは、金融犯罪や汚職で繰り返し起訴され、捜査を受けてきた男で、負けて当然かもしれない。でも、アボットは、経済運営で強い実績を持つ、人気のある主流派の共和党現職知事だった。それなのに、進歩派の新参の挑戦者に敗れたんだ。

右派は、こんなことがあり得る世界にまったく備えていなかった。つい昨日、最近インド移民をめぐって僕と討論したジョナサン・キーパーマンは、以下のようにつぶやいた。 [1]原注:実際タラリコが言ったのは、神は「ノンバイナリー」だ。

この巨大な波の選挙について唯一あり得る解釈は、それがドナルド・トランプに対する審判だったってことだ。トランプは今や、人の記憶にある限りで最も不人気な大統領の一人で、これに匹敵するのは任期末期のジョージ・W・ブッシュだけだ。ほとんどのアメリカ人がなぜトランプを心底嫌っているのか、僕は前に書いたけど、その分析は基本的に変わってない。

トランプはインフレを抑え込むために選ばれたのに、アメリカ人が海外から買うほとんどすべてのものに関税をかけて、イランを攻撃してガソリン価格まで上げた。人々が生活費について不満を訴えると、彼は、娘に買う人形を減らせと言った。トランプは中東の戦争に関わらないために選ばれたのに、僕たちを高くつく泥沼へと突き落とした。彼はウラジーミル・プーチンの利益を執拗に後押ししてるけど、普通のアメリカ人はプーチンを心の底から嫌っている。彼の奇行――グリーンランド侵攻をちらつかせて脅したり、メキシコ湾やオンタリオ湖、さらには人工知能の名前を変えさせようと人々を威圧したり、等々――は危険なほど常軌を逸しているように見える。

それから、汚職もある。トランプは自分自身、自分の家族、そして近しい政治的盟友の懐を肥やすために、容赦なくこの国を略奪してきた。

アメリカ国民は気づいていた。以下は先週の調査報道だ。

11月3日の中間選挙前、最後となるCNBC全米経済調査によれば、有権者は今や、食料品やガソリンの高値を含む他のどの問題よりも、政府の汚職を懸念している……それでもこの結果は、汚職が有権者の切迫した懸念の最上位に急上昇したことを示す、最近の他の世論調査と一致している……先週公表されたFOXニュースの調査では、登録有権者の60%が政府の汚職を極度に懸念しており、インフレや物価高への懸念を上回っていることがわかった。日曜日に公表されたワシントン・ポスト/ABCニュース/イプソスの調査では、回答者の約3分の2が、トランプは大統領職を利用して私腹を肥やしていると考えており、2025年9月から10ポイント上昇した。ギャラップは最近、米国における政府の汚職に対する認識が数十年ぶりの高水準に達したことを明らかにした。そして8月のロイター/イプソス調査では、アメリカ人の10人に7人近くが、トランプのビジネスが大統領としての決定に影響を与えていると考えていることがわかった。

この調査報道内のグラフは以下だ。

どうやら共和党は、普通のアメリカ人がこうしたすべてをただ無視するだろうという妄想を抱えていたらしい。たぶんだけど共和党は、1月6日のクーデター未遂からトランプを立ち直らせたカリスマ性が、彼を無敵にしたと考えたんだろう。アメリカ人は汚職に対してすっかり冷笑的になってしまい、他のどの大統領ならそれぞれ一つで終わっていたであろう数十のスキャンダルを無視するだろう、と推論したのかもしれない。あるいは、トランプがどれほどひどくなっても、アメリカ人のウォーク文化や進歩的な統治への嫌悪感が、常に共和党を「二つの悪のうちマシな方」にしてくれると信じていたのかもしれない。

もしかすると共和関係者は、アメリカ人が〔トランプが再選された〕2024年には本当はインフレなんて気にしてなくて、生活費への懸念より、移民やウォークへの懸念を表現しているにすぎないと信じていたのかもしれない。もしかしたら、アメリカ人はチャーリー・カーク暗殺の責任を民主党にあると考えて、投票箱で民主党を拒絶するだろうと信じていたのかもしれない。ひょっとしたら、民主党を「共産主義者」呼ばわりして、「西洋文明」について叫び立てれば、アメリカ人が民主党を怖がるようになって、遠ざけるようになると考えたのかもしれない。

〔訳注:マット・ウォルシュは保守系ポッドキャスター・コメンテーター。トランプ支持の論客として知られる〕

このウォルシュの発言にMAGAの最大の妄想を見てとれる――平均的なアメリカ人は、X上の右派と同じように物事を見ている、という考えだ。実際のところ、平均的なアメリカ人は「西洋文明」を包囲された要塞だとは考えていない。平均的なアメリカ人は、褐色の移民とその子どもたちが白人を征服しようと狙っている侵略者だと思って、一日中パニックに陥って過ごしたりはしてしないんだ。

MAGA派は、平均的なアメリカ人なんてそもそも存在しないと信じていた節がある。何十年もの間、民主党と共和党の両方のイデオローグや過激派たちは――証拠と真っ向から矛盾してることも多いのに――浮動票層なんて存在しない、二極化がすべてを支配している、穏健さや中道への訴えは無意味だ、選挙の勝利は支持基盤を動員して投票させた党のものになる、と叫んできた。

それはおそらくずっと間違っていたんだろうけど、MAGAはこの欠陥だらけの論理をさらに一歩推し進めたみたいだ。この国は「左派」と「右派」だけで成り立っていて、すべての有権者は、青い髪をしたトランスの共産主義者か、彫りの深い顎をした西洋文明の擁護者(一日中Xで性別逆転ドラコ・マルフォイのミームを投稿して〔ポリコレを揶揄して〕過ごしている)――のどちらかだ、と自分自身に言い聞かせてきたんだ。性別逆転ドラコ・マルフォイが一体何なのか、いや、なぜそれが政治的に重要だと誰が思うのか、まったく分からなくても、安心していい。あなただけじゃない。

テキサスもカンザスもサウスカロライナも、性別逆転ドラコ・マルフォイやアナキン・スカイウォーカーのミーム、その他Xや4chanの右派エコーチェンバーを飛び交うくだらない話について、積極的かつ断固として知る気にならない有権者の連合によって、民主党カラーの青に塗り替えられたんだ。それは、イーロン・マスクが「ジェームズ・タラリコはあなたの子どもをトランスにし、国境を破壊したがっている」とツイートし続けたけど、その奔流を一度も読まなかった連合だった。今週パリを焼き払っているのを、〔移民や人種で争点化しようとして〕白人のフランス人なのか、褐色のフランス人なのか、そんなことに関心がない連合だった。

結局のところ、普通のアメリカ人は確かに存在するんだ――それも実際、大勢いる。容赦ない党派主義で普通のアメリカ人を分断しておくことはできる。容赦のない「言った言わない」式の非難や、捏造されたスキャンダルで、彼らを冷笑的な無関心に追いやることもできる。普通のアメリカ人の願いを長い間にわたって無視し続けるだけで、多くの人を選挙の夜に家に留まらせることもできる。でも、追い詰め過ぎれば――汚職や失政、日々の生活の苦闘への軽蔑で、何度も何度も顔を踏みつければ――やがて奮起し、立ち上がり、叩きのめすだろう。第二次世界大戦に誰が勝ったのか、そしてなぜ勝ったのかを、思い知らせることになるだろう。

こうして民主党は、イデオロギー的に分裂しているとはいえ、当然の勝利を手にした。でも、今の民主党はリスクを抱え込んでる。トランプの自壊を見ても教訓を学ばないことだ。MAGAが、平均的なアメリカ人は右派ミームをまき散らす、自分達側だと思い込んだのとまったく同じように、民主党も、左派の活動家や進歩派の圧力団体、Blueskyのキャンセル・カルチャー戦士たちにけしかけられて、〔平均的なアメリカ人が過激左派だとする〕エコーチェンバーにどっぷり漬かってしまうかもしれない。

民主党は、アメリカ人が本当に気にかけているのは生活費ではなくパレスチナなんだ、と思い込むかもしれない。医療にもっと金をつぎ込むために政府の借金を爆発させて、金利と物価の上昇を招くかもしれない。価格統制でインフレを止めようとして、予想どおりひどい結果になるかもしれない。カリフォルニアの有権者がつい最近否決したのと同じような億万長者税に、貴重な政治資本を無駄に使ってしまうかもしれない。2024年の教訓を忘れて、また違法移民の庇護希望者をできるだけ多く受け入れようとするかもしれない。

そしてもしそうなれば、僕は2030年か2034年に、民主党大統領がなぜ中間選挙で「赤い波」に襲われたのかを説明する、この記事の別バージョンを書くことになるだろうね。

〔アイキャッチ画像:GPT-6による作成〕
[Noah Smith, “Normal Americans punished MAGA“, Noahpinion, November 4, 2026]

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↑1 原注:実際タラリコが言ったのは、神は「ノンバイナリー」だ。
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