ジョセフ・ヒース 「上位1%のライフスタイル ~暖められた私設車道~」(2014年3月13日)

トロントで暮らす上流階級の間で「自宅の私設車道を暖める」のが流行り出している。その理由とは?

「ラディカルな環境主義者」なんかじゃないと自任しているものの、環境汚染だとか浪費(無駄)だとかとの絡みで越えないように心掛けている境界線がいくつかある。「屋外を暖める」というのがそのうちの一つだ(あなたが屋外を暖めるのに手を出してしまっているようなら、一体全体どういう次第でその選択に至ったのかを考え直すべきだ)。例を挙げると、屋外用のヒーターを目にするたびに少々あきれてしまうのだ。隣人の女性がバックヤードデッキに屋外用のヒーターを設置しているのだが、その光景を目にするたびに、「本気かね? セーターを着ればいいだけの話なんじゃないのかね?」と心の中で独りごちるのがお決まりになっている。

これだけじゃまだ足りないと言わんばかりに、トロントで暮らす上流階級の間で新たなライフスタイルが定着しつつある。その様を目にすると、気も狂わんばかりにイライラさせられてしまう。「自宅の私設車道を暖める」のが流行り出しているのだ。私設車道に加熱コイルを埋め込んで、雪が積もらないようにしている(雪かきをしないで済ませられるようにしている)のだ。言ってみれば、放射床暖房みたいなものだ。ただし、「屋外用」の放射床暖房だ。実のところ、暖められているのは私設車道だけじゃない。私設歩道もだ。玄関先(玄関前の階段)もだ。

親愛なる隣人が私設車道と玄関先を暖めている証拠となる写真が以下だ。

「私設車道に加熱パイプを埋め込んでいる人がいる」と誰かに話しても信じてもらえないことがあるので、証拠の写真を撮っておいた。

玄関までの通路と(玄関前の)階段を暖めるのをよしとした人もいる。

何とも奇妙な話だが、家と家の間の通路(路地)までもが暖められているようだ(以下の写真)。雪が積もったところで、誰が困ると言うんだろうか? ここでもまた、加熱パイプが埋め込まれているのが確認できる(前庭に非常用の大きなガス発電機が設置されているのに注目。まるで見せびらかすかのように!)。

最後の写真になるが、庭(ヤード)全体を暖めるという荒業に出た親愛なる隣人もいるようだ(話は変わるが、門の建築を請け負った業者と揉めているらしい様子が窺える)。

この件で二点ほど指摘しておくべきことがある。まずは一点目。一軒家の持ち主は、自宅の敷地の前の歩道(市道)に雪が積もったらそれをきれいに片付けなきゃいけないというのがトロントの決まりだ。しかしながら、自宅の私設車道に加熱パイプを埋め込んでいるお歴々は、雪かきをするために外に出ようなんて気はないようだ。というのも、彼らは、自宅の敷地の前の歩道(市道)に雪が積もったら、誰かを雇って(誰かにお金を払って)代わりに雪かきしてもらっているのだ。そうだとすると、私設車道を暖めるのに一体どんな意味があるんだろうか? ちょっと待っていたら、その代役――自宅の敷地の前の歩道(市道)の雪かきをしてもらうためにお金を払って雇った助っ人――が私設車道の雪かきもまとめてやってくれるかもしれないのに。さっきの問いを言い換えよう。私設車道を暖めるためにエネルギーを浪費するのに一体どんな意味があるんだろうか? 答え:「見せびらかしの消費」以外の何ものでもない。

次に二点目。どこかの政党が「電気代(暖房代)は消費税(HST)の対象外にしよう!」と提案するのを耳にする機会があったら、そのおかげで全員が(あたかも補助金が交付されるかのようなかたちで)得をするということを覚えておいてほしいと思う。貧困層だけじゃなく、富裕層も得をするのだ。富裕層が私設車道を暖めるのを免税の対象にしたいと思う? 全員の電気代を安くするよりも、貧困層向けの給付金を増やす方が理に適(かな)ってるんじゃなかろうか?

ともあれ、上位1%(の超富裕層)がたんまりあるお金を何に使っているのか不思議に思ってきたようなら、今回のエントリーを読んでその実態がどうなっているかがわかり始めてきたはずだ。今回のエントリーは、そのことを突き止めるためのシリーズの第一弾ということになろう。


〔原文:“Lifestyles of the 1% (Vol. 1: Heated Driveways)”(In Due Course, March 13, 2014)〕

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