ノア・スミス「AI と雇用の現況」(2026年7月1日)

みんなのお気に入りの話題と言えば,「AI が人間から雇用を奪ってる」ネタだ.これまで,この定期小ネタ集でたびたびこの分野の最新知見についていこうと試みてきた.今回は,Kharazian, Simon, & Stevens の研究をとりあげる.この研究では,私的データを利用して,生成 AI を企業が使いはじめたときになにが起こるか検討している.

著者たちによれば,生成 AI を使いはじめた企業では,人員を減らすどころか増やしてる:

Source: Kharazian et al. (2026)

たんに人員の総数が増えてるだけじゃない.下級/新卒の人員も増えてるんだよ!

近頃,経済に「採用なし解雇なし」(No hire, No fire) の風潮が広まっているのは企業が下級/新卒の従業員を採用せずに AI を採用しているせいだという定番の説と真逆の結果を,この研究はもたらしている.

だからって,「雇用の枠が減ってるのは別に AI のせいじゃない」とまでは言えない.AI 利用法にかかわる不確実さや AI による自社の分野への影響がどうでるか読みにくい事情から,たとえ自社では AI は使わなくても企業は新しい従業員を採用するのを控えているのかもしれない.これは検討に値する研究の方向だ.いまのところほぼ誰もこれを語っていない.

ともあれ,著者の一人である Kharazian が新発見についてブログ記事を書いている.

ごく単純に概略をまとめると,こうなる:まだまだ AI は人間の労働力の補完であって,それにとってかわる代替ではない.もちろん,この秋,テクノロジーがさらに進歩していけばこれも変わってくるかもしれない.ただ,いまのところ,AI のふるまいはこれまでのふつうのテクノロジーと大差ない.


[Noah Smith, “The latest on AI and jobs,” Noahpinion, July 1, 2026]

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