タイラー・コーエン 「タイムマシンの開発に助成金を出すべき? それとも、税金を課すべき?」(2011年1月9日)/マーク・ソーマ 「タイムマシンの経済学 ~未来へのタイムスリップは技術的には可能だ~」(2007年9月29日)

●Tyler Cowen, “Should we subsidize or tax research into time travel?”(Marginal Revolution, January 9, 2011)


政府は、タイムマシンの開発に助成金を出すべきだろうか? それとも、税金を課すべきだろうか? ただし、助成金を出すにしろ、税金を課すにしろ、財政収支には一切影響が出ないように埋め合わせがなされるとしよう [1] … Continue reading。つまりは、景気対策としての財政政策という観点を抜きにして、どうすべきかを問おうというわけだ。あるいは、こう考えてもいい。あなたが全人類の安寧を願う慈悲深い慈善家だとしたら、タイムマシンの開発を支援すべきだろうか? それとも、タイムマシンの開発をどうにかして阻止しようとすべきだろうか?

時間旅行の根底にある科学的な原理を突き止めている人なんて一人もいないと思われるが、昔のSF映画の中で描かれている通りになる可能性もなくはない。すなわち、誰かしらがタイムマシンに乗って時間旅行をすると、歴史の流れが変わってしまうかもしれない。そのせいで、これまで慣れ親しんできた世界がどこかに消え失せてしまうかもしれない。歴史の流れが良い方向に変わる可能性もなくはないが、元の世界が失われてしまうかもしれないというのは時間旅行に備わるマイナス面としてカウントするとしよう。

時間旅行に備わるプラス面に話を移すと、人類がいつの日か何らかのかたちで滅亡してしまうおそれがあるようなら、タイムマシンはそのような危機から逃れる安全な避難所を用意してくれる可能性がある。小惑星が地球に衝突しそうになるたびに、タイムマシンに乗って数日前か数十年前かにタイムスリップすれば、小惑星が地球に衝突する瞬間を永遠に迎えずに済む。不死(あるいは、若返り)を実現する――あるいは、コンピューター上に脳の情報をアップロードする――テクノロジーがいつの日か開発されて、それもタイムスリップする先に一緒に持っていけるようなら、人類滅亡の危機が迫るたびに過去へのタイムスリップを繰り返す魅力はさらに高まることだろう。

まとめると、こういうことだ。タイムマシンに乗って過去に逃れることができるおかげで、地球最後の瞬間に立ち会うはずだった人類の多くが永遠の命を手に入れる可能性――人類が滅亡しない可能性――が一方である(それに加えて、過去へのタイムスリップを繰り返しているうちに、小惑星の軌道をずらして地球に衝突するのを防ぐ術が見つかる可能性もある)。タイムマシンに乗って時間旅行をするせいで、歴史の流れが変わってしまう可能性――元の世界とは別の世界が生み出される可能性――がもう一方である。

それでは、再び問うとしよう。タイムマシンの開発に助成金を出す(タイムマシンの開発を後押しする)べきだろうか? それとも、税金を課す(タイムマシンの開発を妨げる)べきだろうか?

————————————————————-

●Mark Thoma, “The Economics of Time Travel”(Economist’s View, September 29, 2007)


タイムマシンを作ろうとしたら、どれくらいの費用がかかるんだろうと疑問に思ったことはないだろうか? 「ある!」とお答えの御仁に、耳寄りの情報だ。

“Time machine possible says professor, Gold Coast News” [2] 訳注;リンク切れ。代わりに、例えば次の記事を参照されたい。 ●“Time travel may be possible but won’t be economical”(Phys.org, October 8, 2007)

未来へのタイムスリップを可能にするタイムマシンは、最早(もはや)SFの世界の中にだけ存在する空想上の機械ではない。ただし、あなたがタイムマシンを作るつもりなら、途方もないお金持ち(兆万長者のさらに上)でないといけない。

オーストラリア国立大学で相対性理論と量子力学を教えているクライグ・サベッジ(Craig Savage)博士によると、未来にタイムスリップするのは技術的には可能だが、莫大な費用がかかるという。

サベッジ博士は語る。「光速の4分の3のスピードで移動する宇宙船を作れたとしたら、乗船中は1時間先の未来に行けるでしょう」。

そういう宇宙船はこれまでにいくつも設計されているが、いざ作ろうとすると、想像もつかないほど莫大な費用がかかってしまうという。「障害になっているのは、技術的な問題ではありません。金銭的な問題なのです」とサベッジ博士。

「タイムマシン」を動かす(操作する)のにどれくらいの費用がかかるかというと、10兆ドル単位の電気代がかかるというのがサベッジ博士の推計だ。

References

References
1 訳注;助成金を出す場合は他のいずれかの歳出(政府支出)が同じ額だけ減らされ、税金を課す場合は他のいずれかの税金が減税されて税収が一定に保たれる。
2 訳注;リンク切れ。代わりに、例えば次の記事を参照されたい。 ●“Time travel may be possible but won’t be economical”(Phys.org, October 8, 2007)
Total
0
Shares

コメントを残す

Related Posts