スコット・サムナー 「1963~73年の大恐慌」(2011年3月17日)

マクロ経済の効率性を損なう政策と、景気循環を引き起こす政策を混同するなかれ。
DiscoverQuotes.com(https://discoverquotes.com/adam-smith/)より。

●Scott Sumner, “The Great Depression of 1963-73”(TheMoneyIllusion,
March 17, 2011)


1950年代半ばにこの世に生を受けた世代――私もそのうちの一人――の脳裏には、「1963~73年の大恐慌」の記憶が残っている。その引き金となったのは、・・・そう、ケネディ大統領の暗殺だ。国中で広がるケネディへの同情の声に力を得て、連邦政府は歳出面・税制面・規制面でやりたい放題をした。インフレが加速し、価格統制が実施された。

1965年に(公的医療保険制度である)メディケアとメディケイドが成立。「貧困との闘い」(The War on Poverty)も開始。民間の企業に対してアファーマティブ・アクション(人種差別の是正措置)が求められた。インフレの昂進(名目額の所得の上昇)により、高い税率区分に押しやられる人々が続出。そして、1968年にはリンドン・ジョンソン政権下で所得税率が引き上げられた。労働安全衛生局(OSHA)および環境保護庁(EPA)によって、民間の企業に(労働安全衛生の確保および環境保護を求める)厳しい規制が課せられた。(1971年に)ブレトンウッズ体制が崩壊し、金融政策の行方に関する不確実性がいや増すことに。1971年までに国中の至る所で賃金統制・価格統制が試みられた。何たる混乱ぶり!

これだけの混乱に見舞われたら「大恐慌」に陥ってもおかしくないように思えるが、実のところ、1963~73年のアメリカ経済は、人類の歴史の中でもまたとない好景気(ブーム)の一つを謳歌(おうか)することになった。それはなぜなのか?

アダム・スミスの有名な言葉がその答えの候補の一つだ。曰く、「一国を襲う混乱の種は、ごまんとある」(“There is a great deal of ruin in a nation.”)。

あるいは、金融政策が名目GDPの急速な伸びを支えたおかげという答えもあり得る。景気循環(景気変動)を左右するのは、構造的な要因ではなく、金融政策なのだ。

ところで、カール・スミス(Karl Smith)が似たような感想を漏らしている。

クルーグマンも同じ過ちを犯している・・・とは思わないが、マクロ経済を家計の資産運用の延長のようについつい考えてしまいがちだ。家を購入したものの、ローン(住宅ローン)を返済できそうにないというのは、かなり「まずい」状況に思える。その「まずい」状況に国中の誰もが置かれているとしたら、一国経済にとっても当然「まずい」はずのように思えてしまう。

ここで、心に留めて決して忘れないでいてもらいたいことがある。不況というのはどんな時かというと、不幸な出来事が積み重なる時のことじゃない。一国全体の生産量が落ち込む時のことなのだ。例えば、ボツワナでのエイズの蔓延は、ボツワナで暮らす何百万もの人々にとってゾッとするような出来事だ。大勢の人生をめちゃくちゃにし、家族を破壊し、約束を守れなくする。その挙句に、大勢の孤児が生み出される。

しかしながら、エイズが蔓延してもボツワナのGDP成長率はマイナスにならなかった。ボツワナのGDP成長率は、リーマン・ブラザーズが破綻するまでマイナスに転じずにいた――世界金融危機の勃発に伴って、マイナスに転じた――のだ。

世界金融危機は、死や病が横行しても起きなかったことを引き起こしてしまえる力を備えていたのだ。このことは、不況の本質とは何かを物語る重要な手掛かりだ。

不況というのはどんな時かというと、差し押さえにあって持ち家を手放したり、エイズで親を失ったりというような「まずい」出来事が重なって起こる時のことじゃない。一国全体の生産量が落ち込む時のことなのだ。

「まずい」出来事と、一国全体の生産量の落ち込みとを結び付ける役目を果たす媒介役をどうにかして見出さなくてはいけない。通貨や信用の供給量(通貨量や信用量)こそがそれだと言ってほぼ間違いないというのが私の意見だ。

オバマケアのせいで企業が負うことになるコストこそが「真の問題」だ・・・って考えをまだ捨てずにいたりするだろうか? 確かに、オバマケアは「問題の一つ」ではある。1963~73年に実施された政策の多くが「問題」だったのと同じように。そういう数々の「問題」は、長期的に見ると、景気循環よりも重要な意味を持っているかもしれない。そうだとしても、マクロ経済の効率性を損なう政策と、景気循環を引き起こす政策を混同しちゃいけない。そんな愚は避けようじゃないか。

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