ぼくなりの候補はある.アレックスと共著で書いている論文から抜粋しよう:
第三者を口寄せして答えさせた方が,回答がより限定されてよくなることが多い.試しにやってみよう:「インフレの原因にはどういうものがありますか.ノーベル経済学賞を受賞したミルトン・フリードマンならどう解説するか考えて答えてください」
フリードマンの名前を出すことで,潜在的な回答空間のなかでもより知的な部分に GPT を誘導することになる.単純に「インフレの原因にはどういうものがありますか」とだけ尋ねるのよりも,この方がよりよい回答を得られやすい.同様に,質問に使う単語すべてを知的な響きのあるものにする必要がある.もちろん,インフレに関するフリードマンの見解に賛同しかねる場合もあるだろう.さまざまな論点について幅広く執筆している有名な経済学者たちを一握りだけ挙げよう:
ポール・サミュエルソン
ミルトン・フリードマン
スーザン・エイシー
ポール・クルーグマン
タイラー・コーエン
アレックス・タバロック
とはいえ,このリストを暗記するにはおよばない.また,暗記しようとすまいと,このリストはまだ数が少ない.なにか疑わしく思ったときには,関連する専門家にどういう人がいるのかを GPT そのものに聞くといい.これはどうだろうか:「国際貿易について質問があります.過去30年間の経済学者たちのうち,国際貿易に関する質問に関してもっとも賢明な人の候補として考えうるのは誰でしょうか?」 きっと,モデルは喜んで教えてくれるはずだ.それから,さらに〔その人物ならどう答えるかというかたちで〕質問を進めていけばいい.
もちろん,この助言は経済学に限定されず広く一般化できる.著者の友人は,ノルウェーの作家ヨン・フォッセについて GPT-4 に質問して,誤った回答を得た.彼は,ヨン・フォッセの専門家ならどう答えるかというかたちで,同じ質問を投げた.すると,回答の内容はとてもよくなった.
アレックスと書いている論文のタイトルは,「GPTをはじめとする大規模言語モデルで経済学を学ぶ方法・教える方法」という.だが,やはり,その助言の大半は GPT による教育にとどまらず,広く一般化できる.GPT の各種モデルをより効果的に利用するヒント満載なので,おすすめしたい.
想像してほしい.もしも人類が大きく2種類に分かれたとしたらどうだろう:かたや,プロンプトに「馬鹿げた要素」をちょちょいと足すのをいとわない/恥じない人たち,かたや,それをいとう/恥じる人たち.GPT モデルを使ってできることの差は,両者で大きく開くはずだ.もしかして,プロンプトにもう一手間くわえる気を起こさないエリートや学者も多いんじゃなかろうか.たった一文の質問だけを投げればそれで事足りるにちがいないとでも思っていないだろうか.GPT モデルへの依頼に追加の文脈を提供するのに不慣れな性質の持ち主だったりしないだろうか.
いずれ,そのへんもはっきりしてくるだろうね.
[Tyler Cowen, “What is the single best way of improving your GPT prompts?” Marginal Revolution, March 20, 2023]〔一般社団法人経済学101は皆様の寄付によって運営されています。活動方針にご賛同頂ける方がいましたら、寄付金の振り込みページからのご支援をよろしくお願いします。皆様の温かい支援をお待ちしています。〕