ノア・スミス「なんで Twitter にいるアメリカ人学者たちはあんなにヤな奴なの?」(2024年7月1日)

Prashant Garg & Thiemo Fetzer の愉快な共著論文が新しく出てきた.主題は,Twitter で投稿してる学者たちについて.著者の Garg が研究結果を要約してる連続ツイートをこちらで読める.一般に,学者たちは読者が予想してるとおりの人たちだ――世間一般の人たちに比べると,より合理的で,それほど回りにとって厄介な人じゃなくて,それほど自己中心的でなく,社会主義寄りで,文化面ではより自由尊重で,気候変動についての懸念が強い:

Source: Garg & Fetzer (2024)

でも,それは他のいろんな国々の人たちもふくめた学者全般の話だ.アメリカの学者たちは,ヨソの学者たちとはちょっとばかりちがってる.アメリカの学者たちは有意に自己中心的で厄介で感情的な度合いが高い:

Source: Garg & Fetzer (2024)

どうしてアメリカの学者たちの方がひどいんだろう? 他のいろんな変数から一目瞭然の説明は飛び出してこない.最上位ランクの大学にいる学者たちは他の学者たちに比べてちょっとだけ自己中心的ではあるけれど,それはべつに意外でもない.理数系の学者たちに比べると人文学の学者たちはちょっとばかり厄介でありつつ自己中心度は少し低い.これが何を物語っているのか,ぼくにはよくわからない.

説明の候補は3つある.一つ目は,エリート過剰生産だ――アメリカは工場生産のような規模で新しい PhD 持ちを次々に世に送り出しているけれど,縮小しつつある大学業界が雇えるのは,そのなかのほんの一握りだけだ.これによって,アメリカの学者たちには厄介な人になる理由が生まれる.また,自己中心的になるインセンティブもここから生じる――競争に勝っていいご身分の仕事についた人たちにとってすら,そうなるインセンティブが生まれる.

二つ目は,大学業界の活動家傾向だ.一部の学術分野で教授職に必須の要素として社会変革活動がいかに重視されはじめているかについて,Steve Teles がとてもいい論考を書いてる.近年,歴史学や社会学の分野でぼくらが目の当たりにしたことの一部とたしかに合致している.

三つ目の有望な説明は,社会の騒動だ.2010年代中盤に,アメリカはとりわけ不穏な社会的騒動の時代に突入した.こういう時代には,誰もが少しばかりやかましく厄介な人になりやすい.

もちろん,いま挙げた3つの要因が絡み合っている可能性もある.活動家学者の方が,騒動の時代になるとソーシャルメディアに出て行って大声を上げやすい.さらに,最悪な雇用市場によって彼らはいっそうストレスでイライラしやすくなるだろう.ともあれ,アメリカの大学業界の文化でなにかがおかしくなっているという証拠がまたひとつでてきたわけだ.


[Noah Smith, “Why are American academics such jerks on Twitter?” Noahpinion, July 1, 2024]
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