アレックス・タバロック「アクティブ・ラーニングは機能するけれど学生のお気には召さない」(2019年9月9日)

[Alex Tabarrok, “Active Learning Works But Students Don’t Like It,” Marginal Revolution, September 9, 2019]

一貫して同じ学生と教員を対象にして注意深く実施された実験により,アクティブ・ラーニング〔能動的学習〕の授業の方が学生たちはより多く学ぶものの,このスタイルの授業を学生は嫌い,学ぶものがそれほど多くないと考えていることが明らかになった.べつにものすごく意外な結果ではない――アクティブ・ラーニングは難しくて,学生はまるで自分がバカなような思いをしてしまうものだ.それよりも,イスにふんぞり返ってご立派な講師が巧みな講義でなにもかも単純なように思わせてくれるのを楽しんでいる方がずっとラクだ.

教室での指導法としてアクティブ・ラーニングはよりすぐれていると認識されているものの,近年の大がかりな調査では,大半の大学で理系科目を担当する講師たちは伝統的な教授法をいまなお選んでいることがわかっている.本稿では,「学生と教授陣はどうしていまなおアクティブ・ラーニングに抵抗を示すのか」という長らくの疑問を取り上げる.無作為化実験のアプローチと同一の講義素材をもちいて,受動的な講義とアクティブ・ラーニングとを比較すると,アクティブ・ラーニングで教えたクラスの学生の方がよりよく学ぶ一方でその学生たちはそれほど学んでいないと感じていることがわかる.この負の相関を引き起こしている要因には,アクティブ・ラーニングの方がいっぞう認知労力が必要とされることが含まれることを本稿では明らかにする.アクティブ・ラーニングを採用した教授陣は,この誤認に介入して対処することが推奨される.また,本稿ではそうした介入の成功例も述べる.

著者たちによると,あらかじめ学生たちに,「〔アクティブ・ラーニングでは〕うまくいかず歯がゆい思いをするけれど最終的にはなんとかなる」と伝えておくと助けになることがあるそうだ.

この学び方の方がもっと深く学習することにつながるのを学生が受け入れつつ,しかも,その真逆に感じられることもままあることを認めると,こうしたアクティブ・ラーニングの成功はいっそう強化される.

これで学生が納得するか,ぼくは疑わしく思う.他に助けになりそうな案を挙げるなら,授業評価をよくするには学生を楽しませなければいけないと教員が感じなくていいように学生による評価を割り引く手がある.ブレナンとマグネスが好著『象牙の塔の亀裂』(Cracks in the Ivory Tower) で指摘しているように:

講師の雇用・昇進・終身在職権や学部への予算増加の決定に学生評価を用いるのは,臓物占いや茶葉占いを使うのと同列だ.(それどころか,茶葉占いの方がすぐれている.同じくらい馬鹿げているが,手っ取り早くて安上がりだ.)(…)もっとも網羅的な研究からは,学生評価 (SETs) がなにを計測しているにせよ,それは教授によって引き起こされた学習ではないことがわかる.

実際,学生評価と学生の学習との相関はせいぜいのところゼロに近いか,悪くすると負の相関がある.学生による評価が計測しているのは,教員がどれくらい好かれているかだ.学生たちは,楽しませてもらうのを好む.そのため,学生による評価を当てにしているかぎり,学習を後押しする方法ではなく学生に好まれる方法で教えるインセンティブを大学は教員に与えることになる.

学生による評価は役立たずでバイアスがかかっているのを考えると,いまだにこれが訴訟によって葬り去られていないのはおどろきだ.

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