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「無償教育は貧乏人にとってはタダじゃない:教育における汚職と格差」by FORHAD SHILPI

FORHAD SHILPI “Free Schooling is Not Really Free for the Poor: Corruption in Education and Inequality” (November 18, 2013)


包括的経済成長を推し進めるうえで、教育が最も重要な政策手段の一つであるということは、研究者や政策決定者の間で広く合意を得ている。例えば、Stiglitz (2012, P. 275)では「機会は、他の何よりもまず教育へのアクセスによって作り出される」としているし、Rajan (2010, P.184) は「…不必要な所得格差を減らす最善の方法は、より良い人的資本へのアクセスの格差を減らすことである。」と主張している。貧困層の人的資本形成に力点を置くことは、一石三鳥だ。というのも、(1)人的資本はあらゆる貧困層が”保有する”唯一の資産であり、(2)譲渡不可能であるために収奪されにくく、これは法の支配が欠けている多くの途上国において重要な利点であるし、(3)技能に傾いた技術変化があるために、教育によるリターンはグローバル化によって時とともに高まると思われるからだ。こうした教育の特徴的な役割を念頭に、普遍的な教育無償化(少なくとも初等教育において)や女子奨学金、無料図書、給食といった政策に対し、多くの途上国が過去数十年に渡って重点的に投資を行った。これには、こうした政策は貧困家庭が子供を教育する負担を軽減し、ひいては教育及び所得格差を減らして貧困家庭の子供の階層移動を容易にするということが根本的な前提となっている。しかし、そうした広く受け入れられた政策的視点は、途上国の学校における汚職の効果を見逃しているのだ。

途上国の学校では、汚職が根強くはびこっている。バングラディッシュでは、約半数の家庭が子供の教育のために何らかの形で賄賂を払っていると回答している。アフリカ7か国に関する研究では、44%の親が子供を学校に通わせるために非合法な料金を払わなければならなかったことが分かった(World Bank (2010))。ニューヨーク・タイムスによると、中国では入学時にとどまらず賄賂が蔓延しており、教室の最前列の席が売りに出されてさえいるという。ワシントン・ポストは、中国の名門公立学校の入学における汚職について最近報じた。世界汚職報告書(The Global Corruption Report (2013) )は、「汚職は貧困層に対する追加的な税として働き、とりわけても教育のような基本的サービスへとアクセスしようとする際に、貧困層は賄賂の要求に頻繁に苦しめられている。」としている。

汚職は特に貧困層を苦しめるという一般的な通念とは対照的に、汚職についての標準的なモデルでは実のところ富裕層こそが賄賂を払う可能性がより高いと予測する。支払い能力が高いからだ。途上国において収賄に関する処罰を受ける確率とその軽重が、あらゆる家庭において同一であるという疑わしげな仮定にそうした予測は依っている。途上国では法の支配が欠けており、貧困層には交渉力がほとんどないために、法執行はしばしば貧困層の不利益になる方向へと選択的で偏重している1 。先般発表した論文「あなたのパパがお金持ちじゃなきゃ入学はタダじゃない:途上国の学校における汚職の分配的効果(Admission is Free only if Your Dad is Rich: Distributional Effects of Corruption in Schools in Developing Countries)」においては、教師による収賄に対する処罰可能性が家庭の経済的地位に依存するというより現実的なモデルを私たちは構築し、賄賂は逆進的である可能性が高いことを示した。そこでさらに、このモデルの予測をバングラディッシュのトランスペアレンシー・インターナショナルが集めた家計の水準に関する調査データを用いて検証した。農村地域の家計所得の内生性を調整するにあたっては、各村における10年間の平均降水量変動を用いた。その結果、バングラディッシュの学校における汚職は二重の意味で逆進的であることが分かった。すなわち、貧困層は賄賂を支払う可能性がより高く(控えめな見積もりでも所得弾力性は-0.73)、そして贈賄者の中でも貧困層は所得に占める贈賄額の割合が高いのだ。操作変数法による結果は、教育のために支払われた賄賂の額に対する家計所得のプラスの影響を示している最小二乗法(OLS)の結果とは対照的なものとなっている。したがってこの結果はOLSによる回帰が賄賂の偽の累進性を導出した可能性を示している。つまるところ「無償教育」は富裕層に対してのみ無償なのであって、汚職は貧困層に不利な競争を生み出すのだ。

(本エントリは世界銀行のウェブサイト使用条件に従って掲載しています。The World Bank: The World Bank authorizes the use of this material subject to the terms and conditions on its website, http://www.worldbank.org/terms.)


参考文献

●New York Times, “A Chinese Education, for a Price“, November 21, 2012.
●Rajan, Raghuram (2010), Fault Lines(邦訳「フォールト・ラインズ 「大断層」が金融危機を再び招く」新潮社), Princeton University Press.
●Stiglitz, J (2012), The Price of Inequality(邦訳「世界の99%を貧困にする経済」徳間書店), W. W. Norton and Company.
●Transparency International (2013), “Global Corruption Report: Education“, Routledge, New York.
●Washington Post, “In China, parents bribe to get students into top schools, despite campaign against corruption“, October 7, 2013
●World Bank (2010), Silent and Lethal: How Quiet Corruption Undermines Africa’s Development Effort, IBRD/ World Bank, Washington DC.

  1. 訳注;賄賂を要求された場合、富裕層であれば経済的・社会的費用をかけて賄賂の要求者への公的処罰を与えることでしっぺ返しできるが、貧困層は言いなりになるしかないという意味 []

Comments

  1. 森岡のおっさん says:

    重箱の隅をつつきますが、Bangladeshはベンガル語でも英語でも「バングラデシュ」とカナ表記できるような発音でしかも日本の外務省でもバングラデシュだからバングラデシュと表記した方がよくありませんか?

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