●Tyler Cowen, “Who will win the economics Nobel Prize this year?”(Marginal Revolution, October 10, 2015)
今年度(2015年度)のノーベル経済学賞は、一体誰が手にするだろうか? ダイアン・コイル(Diane Coyle)があり得そうな候補を分野別に数人挙げている。
環境経済学:パーサ・ダスグプタ(Partha Dasgupta) [1]主要著作;『Human Well-Being and the Natural Environment』(邦訳『サステイナビリティの経済学:人間の福祉と自然環境』)、『Economics:Very Short … Continue reading、ウィリアム・ノードハウス(William Nordhaus) [2] 主要著作;『The Climate Casino:Risk, Uncertainty, and Economics for a Warming World』(邦訳『気候カジノ』)
(追記)環境経済学の分野なら、マーティン・ワイツマン(Martin Weitzman) [3] 主要著作;『Climate Shock:The Economic Consequences of a Hotter Planet』(邦訳『気候変動クライシス』)、『Income, Wealth and the Maximum Principle』も是非とも加えるべきとの熱い声がTwitterで上がっている。
経済成長:ポール・ローマー(Paul Romer)、ロバート・バロー(Robert Barro) [4]主要著作;『Economic Growth』(邦訳『内生的経済成長論〈1〉〈2〉』)、『Getting It Right:Markets and Choices in a Free … Continue reading
経済格差(不平等): アンソニー・アトキンソン(Anthony Atkinson) [5] 主要著作;『Inequality: What Can Be Done?』(邦訳『21世紀の不平等』)、アンガス・ディートン(Angus Deaton) [6] 主要著作;『The Great Escape:Health, Wealth, and the Origins of Inequality』(邦訳『大脱出:健康、お金、格差の起原』)
イノベーション(をはじめとして幅広い範囲にわたる業績): ウィリアム・ボーモル(William Baumol)(御年93歳!) [7]主要著作;『The Free-Market Innovation Machine:Analyzing the Growth Miracle of Capitalism』(邦訳『自由市場とイノベーション』)、『Good Capitalism, Bad Capitalism, and … Continue reading
計量経済学:デビッド・ヘンドリー(David Hendry) [8] 主要著作;『Forecasting Economic Time Series』、『Econometric Modeling:A Likelihood Approach』
どれもこれも良い読みだと思う。銀行業(バンキング)の理論の発展に貢献したダイアモンド(Douglas Diamond)&ディビッグ(Philip Dybvig)の二人に、開発経済学の分野にランダム化対照実験(RCT)を持ち込んで新風を巻き起こしたバナジー(Abhijit Banerjee)&デュフロ(Esther Duflo)&マイケル・クレマー(Michael Kremer)の三人――まだ時期的に早すぎるかもしれないけれど――も個人的には候補に加えたいところだ。ここまでに挙がっている候補にノーベル賞が与えられるようなら、少なくとも(来年度のノーベル経済学賞が発表されるまでの)1年間は経済学の「科学」としての体面が保たれることになるだろう。おそらく今すぐにというわけにはいかないだろうが、貨幣経済学(金融論)の分野でバーナンキ(Ben Bernanke)、ウッドフォード(Michael Woodford)、スヴェンソン(Lars Svensson)にノーベル賞が授与される日もいつかはやってくるだろうと思う。バーナンキの回顧録(邦訳『危機と決断:前FRB議長ベン・バーナンキ回顧録』)が出版されたのはほんの数日前だし、スヴェンソンがスウェーデン国立銀行(スウェーデンの中央銀行)での職を辞してからそんなに日が経ってないから、彼らにノーベル賞が与えられるとしてもまだ先になりそうだ。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙の(誰がノーベル経済学賞を受賞しそうかについての)予想はこちら。皆さんの予想はどうだろうか? これまでを振り返ると、私の予想は当たった試しがない(候補として名前を挙げた学者が別の年に受賞した例はあるけれど)。そのため、今ここで「今年は○○が受賞する!」と具体的に誰かの名前を挙げると、その人の足を引っ張るだけになってしまうだろう。ご存知だとは思うが、今年度(2015年度)のノーベル経済学賞の受賞者が発表されるのは今度の月曜日(10月12日)である。
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