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アレックス・タバロック「イノベーション版,囚人のジレンマ」(2019年12月30日)

[Alex Tabarrok, “The Innovation Prisoner’s Dilemmam,” Marginal Revolution, December 30, 2019]

ぼくは風車って美しいなって思うけど,そうは思わない人たちも大勢いる.環境保護の意識が高いドイツにすらたくさんいる.

ブルームバーグ:(…)新しく風車の塔を建てる許可を得るのがしだいに難しくなってきている.地元の規制がいっそう厳格になってきているのだ.バイエルン州では,2014年に風車の建設地からもっとも近い民家までの距離を風車の高さの10倍でなくてはならないと決定した.住宅の密度ゆえに,この規制によって建設地を見つけるのが困難になった.バイエルン州内での風力発電の発展は,事実上,失速している.ベルリンを囲うブランデンブルク州では,集合型風力発電所(ウインドファーム)の事業者に,風車1台あたり年1万ユーロ(11,100ドル)を風車の3メートル圏内の市町村に支払うよう求める法律を今年制定した.

(…)風力発電所に対して地元で反対が起こって,新規建設をめぐって法廷で争うことになることもよくある.既存の風車を取り壊すことすら,裁判になる.風車業界のロビー団体 BWE によれば,1ギガワット(ドイツの総発電能力の2パーセントほど)を超える発電能力を有する325台の風車が告訴にあっているという.皮肉なことに,風力発電を支持する人々と同じくらい「グリーン」な人々がそうした訴えを起こしている――大きな環境保護団体 NABU も訴えを起こしている団体のひとつで,風力発電そのものに反対しているのではないと断りつつ,風車の新規建設は自然保護を念頭に計画するように求めているだけだと述べている.風車に対して寄せられる苦情の半数近くは,風車の騒音が大きすぎるというものか,可聴下の低周波を出し過ぎるというものだ.そうした主張の妥当性がどうであれ,各地の風車建設計画は,許可を得るのに必要な数々のハードルを越えた末に,訴訟を起こされている.

また,風力発電所に対して地元が抵抗する理由には,〔「なるほど結構なことだがウチの近所ではやめてくれ」という〕Nimbyism の一種もある:つまり,風車が建つことによる景観の変化を嫌がっているのだ.ドイツ語には,その忌避感を表す単語すらある.その単語 “Verspargelung” は,強いて訳せば「巨大アスパラガス汚染嫌悪」くらいの意味だ.

前にも書いたように日本語記事〕,個人の活動領域はますます狭まって,集合行動の領域が拡大している.その結果として,制度内で拒否権を発動できるプレイヤーが多くなってしまったために何事もできなくなっている.ぼくらは,みずからイノベーション版の囚人のジレンマにハマっている.どのプレイヤーも「イヤだ」と拒否できるおかげで,結果として誰もが損をしているんだ.


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