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ピーター・ターチン「コロナウィルスの長期的影響」(2020年4月20日)

Long-Term Consequences of Coronavirus
April 20, 2020 by Peter Turchin
cooperation, economics, elites, health, inequality, structural-demographic

我々は今COVID-19パンデミックの中盤にいる、現状とどこに向かおうとしているのかを詮索するのに良い時期だ。例えば、人口統計学的には、このパンデミックの影響は軽微であることが既に明らかになっている。人口の1%未満しか死亡しないだろうことと、コロナによる死亡者は既に定年退職した人に大きく偏っているからだ。アメリカ合衆国だけでも既に4万人がこの感染症で死亡しているが、これは総人口の観点からはたいして、もしくは何も変えないだろう。

中期(今後数年)の疫学的見通しはまだ不透明だ。我々はウィルスを絶滅に追い込むことができるのだろうか? それとも、風土病化し秋から冬にかけて毎年再来することになるのだろうか? 通常の〔風邪やインフルエンザの〕ケースのように、ウィルスは致死性の低い形態に進化するのだろうか? 私の見解では、今後2~3年中にコロナウィルスを駆除することは十分に可能だ。問題となっているのは、この駆除目的を達成するのに、我々がどこまで自身の生態を集合的に変更できるかどうかだ。全ての旅行者や他の伝染させる可能性がある保菌者を徹底的に検査し、ウィルス感染多発地域を積極果敢に検疫隔離し、自国内の感染症を制御するつもりがない、あるいは制御能力がない国を取り囲んでの衛生的閉鎖を行うことが必要になるだろう。

しかしながら、このブログは社会的動態に焦点を当てているので、今回のパンデミックが社会的健全性にどう影響を与えるのかについて論じてみよう。前回の投稿で論じたように、現在のグローバリゼーションと大衆の窮余化の度合いを考慮すれば、致死的なパンデミックが再来する可能性は非常に高い。つまるところ、COVID-19や将来の未知の病気は、世界システムの水準からは、内在的動態の一部なのだ。しかしながら、個々の国家レベル(国家に中心を絞った私の研究枠組み)の水準からは、COVID-19は外的ショックだ。COVID-19の長期的な影響は、影響を受けた社会的制度のレジリエンス(復元力)に何よりも左右される。

ある面において、コロナウイルスは外敵である。そして、外部からの脅威は、社会の内的結束を高める傾向がある。この効果は、国家間戦争のような外部からの脅威の場合に最も強くなる。戦争が社会的協調を高めることを示す研究はかなりの数に上る(もちろん、社会内協調であり、異なる社会間の協調ではない)。伝染病は戦争として容易に概念化され(事実既に概念化されている)、社会を統一させる効力として機能することになる。

一方別面においては、あまりに強すぎる外的ショックは、社会を統合させずに、バラバラにしてしまう。周知の通り、アメリカ合衆国の社会的レジリエンス(復元力)は過去40年間に渡って衰退してきている。2019年までの時点で、我々の社会を二極化させている多くの断層が発達してきている。これらの内、貧困層と富裕層間の断絶と、リベラルな沿岸地域と保守的な大陸内部地域の断絶の2つは、コロナ・ショックによってますます深刻になっている。

感染症は貧困層により強いダメージを与える傾向があり、COVID-19も例外ではない。過半のアメリカ人は貯蓄がほとんどなく、多数の人が給料日から次の給料日まで(辛うじて)生き長らえている。ウイルスの拡散を抑制する必要性から生じた失業者の大規模な増加は、何百万ものアメリカの家庭にとって私的な大惨事となっている。(食料の無料配布を求めての長い列が示しているように)多くが文字通り餓死寸前にある。さらに、未だに仕事を続けている貧困層の多くは、移動に際して公共交通機関を避ける余裕がないため、感染するリスクが高くなっている。そして、貧困層はコロナウィルスで死亡する可能性が高い。なぜなら窮乏化の進行で、貧困層の多くはウィルスへの抵抗力を弱める結果へと至るからだ。

原理上、こういった悪影響は、政府主導による強力な集合的処置によって和らげることが可能だ。中央銀行は、失業者や中小企業の経営者を延命させるために、大量の資金を供給する必要がある。移動しなければならない人の安全を維持するために、防護服を大量に生産する必要がある。ウイルスへの大規模な検査を行えば、感染多発地域の検疫隔離が可能になるので、感染地域を閉鎖するだけで済み、国の残りの非感染地域では通常活動が行えるようになる。何をなすべきかは非常にハッキリしている。しかしながら、それがなされるかかどうかが問題になっている。

危機当初は、民主・共和両党はいつもより協調し、コロナウィルス法案を迅速に通過させている。しかしこの協調はもうほとんど終わってしまっている。我が国の政治階層は、内輪での口論に戻り、さらに悪化している。これの最も目立った兆候は、内陸部を支持母体としているワシントンDCの大統領と、沿岸部の州知事達との間の亀裂だ。

コロナウィルスのショックは、国家内で社会的連帯を作り出す可能性と、国を分断する可能性の両方を持っている。私の推測では、ノルウェーとデンマークの北欧の二カ国は、前者の最適ルートを通る可能性を保持している。20年前だと、〔北欧が最適ルートを通る〕反応に何の疑いも抱いていなかっただろう。しかしながら、この10年において北欧モデルが綻び始めそうな兆候が見られる。

アメリカ合衆国に関してだが、私の見通しは非常に悲観的だ。統治しているエリート達は利己的で、分裂しており、内輪揉めに陥っている。なので、私の予測では、アメリカの人口の大多数が苦境に陥るだろう。政府債務はまだまだ爆発的に増加を続けるが、そのほとんどは大企業や銀行の延命に使われることになるだろう。格差は拡大し、政府への信頼はさらに低下し、社会不安やエリート間での内輪の争いが増加することになる。大筋で、構造人口統計に基づいた負の動向の全ては、加速されることになるだろう。

この悲観的な予測が間違っていることを私は強く願っている。


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