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フランシス・ウーリー 「フリマの経済学 ~同じ機種で色違いの中古の電話機。値段に差があるのはなぜ?~」(2013年8月23日)

●Frances Woolley, “Flea Market Economics”(Worthwhile Canadian Initiative, August 23, 2013)


(カナダは)オンタリオ州のパース市で開かれている蚤の市(フリーマーケット)に足を運んできたのだが(「ガラクタ買います。アンティーク売ります」がスローガン)、並べて売りに出されている二台の中古の電話機に目が留まった。違いといえば機体の色と値段だけ。その他はどこをとってもそっくりな二台。

(機体の色がベビーブルーの)青電話の言い値は160ドル。一方で、(機体が黄色の)黄電話の言い値は90ドル。青電話の方が70ドルも値段が高いわけだが、それはどうしてなのだろうか? その答えは至ってシンプル。「供給」と「需要」のバランス。それが答えだ。

ダイヤル式の電話機の製造は既に中止されている。そのため、どちらの色にしても販売可能な量は一定で変わらない。言い換えると、ダイヤル式の電話の供給曲線は垂直になるわけだ。以下の図にあるように、ダイヤル式の電話の供給曲線は現存する台数を表す横軸の点からまっすぐ上に伸びる直線として描かれることになる。

青電話の値札には「希少品」(レア物)との説明が書き込まれているが、このことは青電話と黄電話の値段の違いの原因は供給サイド(現存する台数の違い)に求められる可能性を示唆していると言えるだろう。

同じ機種なのに色が違うだけで製造台数に大きな差があるのはどうしてなんだろう? 若い読者の中にはそのように不思議がる人もいるかもしれない。その理由を語るには時計の針を1960年代まで戻さねばならない。当時のカナダでは一般人が電話を買うことはできなかった。家に電話が欲しければ電話会社からレンタルしなければならなかったのである(電話会社は各州に一社だけ)。

電話機の裏側に貼ってあるステッカー。電話会社の所有物である旨が明記されている。

一般家庭にレンタル用として貸し出される電話の中でも標準的な型はダイヤル式の黒電話だった。ダイヤル式の黒電話はその多くが電話会社の独占状態が終焉するのに伴って海外に流出することになったが(左の画像はキューバに持ち出された黒電話に貼ってあるステッカー)、国内の古雑貨屋にも大量に眠っていることだろう。電話会社から電話をレンタルする際には特別なオプションを選ぶことも可能だった。黒色とは別の色の電話機をレンタルすることもできたし、一家で二台以上の電話機をレンタルすることもできた。1970年代になると押しボタン式(プッシュ式)の電話機をレンタルすることもできた。ただし、特別なオプションを選択するとダイヤル式の黒電話を借りる場合よりもレンタル料は高めだった。ベビーブルーの電話機を借りるためにわざわざ余分にお金を払う気のある人はそんなにいなかったのかもしれない。あるいは、電話会社の側でベビーブルーの電話機を借りる人なんてそんなにいないだろうと判断して在庫をそこまで用意していなかったのかもしれない。細かい理由はともあれ、現存している青電話の台数はそんなに多くないようだ。

青電話と黄電話の値段の違いには需要サイドの要因も絡んでいる可能性がある。黄色一色の電話機よりも青一色の電話機の方が見た目(デザイン)的にクールでカッコイイと思われているのかもしれない。あるいは、これまでに青電話が黄電話を上回るペースで値上がりしてきているのを観察して儲けられそうな投資対象として(売買差益を手にすることをあてにして)青電話を持っておこうとしているのかもしれない。

最後の留意事項: 二台の電話機の値段はあくまでも言い値に過ぎない。青電話の言い値(160ドル)にしても黄電話の言い値(90ドル)にしても市場を均衡させる価格(均衡価格)とはほとんど何のつながりもない(ずれている)可能性だってある。フリマ会場でファビアンの”Hold That Tiger!”のレコード(LP)にいくらの言い値が付けられてると思う? 50ドルだよ。

ファビアンのレコードを買って帰ろうかと真剣に悩んだのだがやめておいた。家にあるベビーブルーのダイヤル式電話と並べて飾った場合にしっくりいくかどうか何とも判断がつかなかったものでね。


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