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マーク・ソーマ 「アートとしてのお金」(2005年12月8日)

●Mark Thoma, “Money as Art”(Economist’s View, December 08, 2005)


秀でた交換手段たるためにはいくつかの原理(条件)を満たさねばならない。標準化が容易である(品質にバラツキがない)こと、その価値を計測するのが容易であること、一般受容性を備えている(誰からも広く受け入れられる)こと、持ち運びが容易であること、貯蔵可能であること、耐久性を備えていること、分割可能であること、その数量を容易にコントロールできること。スイス紙幣(フラン紙幣)の新デザイン案は「一般受容性」の原理に抵触する可能性がある。

Swiss distressed over currency redesign”, Bloomberg News:

スイス中が騒然としている。新たに導入される予定の紙幣に胎芽や赤血球が描かれる可能性があるためだ。新紙幣のデザイン案は「ぞっとするばかりです」と語るのはヴェレーナ・グラフ氏。今はもう引退しているが、かつて銀行で文書管理を担当していた人物だ。・・・(略)・・・「私なら人間が描かれている旧紙幣を使い続けるでしょうね」。新紙幣のデザイン案は今年(2005年)の11月に・・・(略)・・・中央銀行(スイス国立銀行)主催のデザインコンペでグランプリを獲得したものだ。・・・(略)・・・「紙幣はスイスという国の名刺に他なりません」。そう語るのはジャン=クリストフ・アマン(Jean-Christophe Ammann)氏(66歳)。フランクフルトモダンアート美術館の前館長であり、デザインコンペの審査委員長を務めた人物だ。・・・(略)・・・しかしながら、審査委員会が下した判断は国民の意見を代弁したものとは限らない。スイスで銀行員として働くビジネスマンの必読紙となっているノイエ・チュルヒャー・ツァイトゥング紙は・・・(略)・・・新紙幣のデザイン案には「お金が備えるべきエロティシズム」が欠けていると断じている。・・・(略)・・・審査委員会は(チューリッヒ在住のアーティストである)マヌエル・クレブス(Manuel Krebs)氏の案に軍配を上げたが、クレブス氏の案が新紙幣のデザインとして採用されるかどうかはまだ決まっていない1。1991年にも新紙幣の導入に伴ってデザインコンペが開催されているが、その際は三等賞のデザインが新紙幣のデザインとして採用されるに至っている。・・・(略)・・・「原則としては紙幣にはスイスの国柄を象徴する何かが描かれるべきでしょうね。その『何か』として人間(スイスを代表する歴史上の人物)を描いてはダメということになれば代わりに何を描けばいいでしょうか? 山だとかチーズだとかでしょうか?」と語るのはチューリッヒ在住のコンピュータープログラマーであるトマス・ブルウィーラー氏。・・・(略)・・・(デザインコンペでグランプリを獲得したクレブス氏による)10フラン紙幣のデザイン案では表面に球形の惑星が描かれており、裏返すと同じく球形の赤血球が描かれている。(クレブス氏による) 100フラン紙幣のデザイン案では表面に胎芽、裏面に世界地図がそれぞれ描かれており、脳の図柄の透かしも入っている。(デザインコンペの審査委員長を務めた)アマン氏は語る。「スイスではお金に特別な地位が付与されています。数字と署名入りのグラフィックアートという地位です」。・・・(略)・・・

  1. 訳注;最終的にクレブス氏の案は却下され、新紙幣のデザインには次点の案が採用されることになった。 []

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