タイラー・コーエン「ITによって郊外の地位は高まりそう」

[Tyler Cowen, “Suburbs will soar on the wings of tech,” Marginal Revolution, September 29, 2016]

――ってことを『ブルームバーグ』の最新コラムに書いた.ひとつ抜粋しよう:

自動運転車がいちばん助けることになりそうなのは,郊外だ.郊外で最悪なのはなにかと言ったら都市部や他の郊外地域への通勤だ.でも,通勤時間に(安全に)読書したりテキストメッセージをやりとりしたりTVを見たりできたら,どうだろう? 電車や飛行機に乗っているあいだにいつもどおりに仕事を片付けられたらどうだろう? そうなれば,通勤の苦痛はずっと小さくなる.自動運転車が進化して,自動車の車内空間を仕事や余暇に使いやすくなれば,通勤のストレスは楽しみに取って代わられるだろう.

ドローンはどうだろう? ドローンも,便利な品物やサービスにアクセスするのが〔都市部より〕むずかしい遠隔地にとって有利なように思える.ドローンは,郊外よりもさらに遠くの郊外周辺の住宅地や田園地域にいっそう役立つかもしれない.他方で,いちばん得にならなそうなのが都市だ.側道を自走するタイプのドローンは,人で混雑した都市ではうまく走れないかもしれないし,飛行型ドローンにとって,高層ビルが林立する都市はあまり飛びやすい地域ではない.人口密度が高いと,ドローンが落下して誰かに当たるリスクが高くなるかもしれない.

さらにもうひとつ:

「スマートホーム」やモノがつながるインターネット (IoT) の到来を考えてみよう.コンロ/コンピュータ/3Dプリンタ/ロボットに話しかけるのって,よさそうじゃないか.「ちょっとピュレ・スカッシュをつくってよ」なんて.この話題についてなにをどう予測してみても,空想みたいに思える.それでも,郊外の方が新しい住宅や新しい機器をよく見る場合が多い.なぜなら,都市の古い集合住宅を建てなおしたり設備を入れ替えたりする方が難しいからだ.だから,スマートホームの登場も,やっぱり郊外に有利になるんじゃないかと思う.

リンク先のコラムにはもっといろいろ書いてる.かつての「テレコミューティング革命」〔家に居ながらにして会社の仕事をするスタイルが普及してなんかすごいことになるぞって話〕とちがうところに注意.テレコミューティングは都市にとってなんら痛手にならなかったけれど,こうした変化の多くは,情報だけでなく実際の人やモノの移動の速度を上げる.そうして生じる効果は,1950年代や60年代の州間ハイウェイによく似ている.州間ハイウェイは,都市ではなく郊外に有利にはたらいた.

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