ノア・スミス「AI は大卒の雇用を奪ってない(けどアーティストの仕事は奪ってる)」(2026年10月1日)

今日も今日とて,「AI は雇用を奪ってるの?」の果てしない物語のページをめくろう.いくつか面白いネタが出てきてる.まず,Indeed の賃金データが出てるんだけど,これを見ると AI 曝露度が高い仕事をしてる労働者の賃金は,そんなに AI 曝露度が高くない仕事の労働者たちの賃金よりもずっと急速に伸びてる:

Source: Indeed via Daily Chartbook

これはとても素直に理解できる.AI 「曝露度が高い」っていうのは,その仕事には AI にできる作業が含まれてるってことだ.ようするに,その仕事は「AI を使える仕事」だ.そして,いまアメリカ経済で AI は一大ブームになってるわけで,「AI 曝露度が高い」仕事で需要が旺盛になっているものが増えている.すると,賃金は上がる.

2つ目のネタは,Fairlie & Wu の新しい論文だ.これによると,AI は最近の大卒者の失業率を上げていない:

本研究では,アメリカの現人口調査 (CPS) のマイクロデータを用いて,2026年6月・7月・8月にかけて最近の大卒者の失業率に AI が及ぼした効果を初めて推定する.(…)本研究では,以下の点が見出された.過去数年の夏期に比べて2026年夏に失業率の急上昇は起きていない.また,より年長の大卒労働者や非大卒の若年労働者に比べて,有意な上昇は起きていない.さらに本研究では「就業をのぞむ」と自己申告している人々を含む拡大版の失業率定義を用いて初めての分析を行う〔通例,失業率を調査する際には「仕事に就いていなくて,かつ,求職活動中である」人たちを失業者に数えるけれど,これだと仕事に就きたいと思っていても求職活動はしていない人たちが失業者に数えられない〕.この定義を用いると,最近の大卒者の失業率が2パーセントポイント近く高くなる〔通例の定義に比べて〕.だが,こうした「潜在的失業者 (sidelined unemployed)」を加えても,2026年夏に統計的に有意な失業率上昇を示す証拠は見つからない.

そのグラフがこちら:

Source: Fairlie & Wu (2026)

とまあ,以上がいいニュース.さて,お次は悪いニュース:どうやらついに,AI によって奪われている仕事のカテゴリーがひとつ見つかったようだ.翻訳者・トラック運転手・放射線医師の雇用はこの AI 時代にもみんな持ちこたえている一方で,デジタルメディアの雇用はものすごい打撃を食らっている(ライブパフォーマンスの仕事は健在なのに):

Source: Joey Politano

これも,必ずしも取り乱す理由にはならない――毎度毎度,新テクノロジーが登場するたびに,特定の職業の需要は減ってきた.ただ,デジタルアートの仕事は,多くの人たちにとって夢の仕事なんだよね――自分の創作欲を満たしつつお金も稼げる方法なわけだから.生計が立てられる雇用と個人の自己実現を組み合わせるデジタルアートの道が先進諸国の数百万もの人たちに対して AI によって閉ざされてしまうなら,すごく悲しいことだ――人間が根こそぎ AI に取って代わられていないとしてもね.


[Noah Smith, “AI isn’t taking college jobs (but it is taking artist jobs)“, Noahpinion, October 1, 2026]

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