ギャレット・ジョーンズ「移民はアメリカを救うか?」(2026年6月4日)

いや、移民がアメリカを救うことはない…

いや、移民がアメリカを救うことはないだろう。なぜなら、アメリカは自国を本当に立て直せるほど大規模で、高度人材を重視した移民政策を採用するつもりがないからだ。では仮に、アメリカが優れた移民政策によって国を再生しようと本気で考えたとしたら、それはどのような政策になるだろうか。

必要になるのは、アメリカ人の平均IQを3〜6ポイント押し上げられるほど大規模で、かつ高度技能に重点を置いた移民受け入れだ。そのためには、ノーベル賞受賞者を何人か招くだけではまったく足りない。現在のアメリカ平均より少なくとも1標準偏差(IQで言えば15ポイント)高い能力を持つ移民を、およそ1億人規模で受け入れる必要がある。

人口比で見れば、これは19世紀後半から20世紀初頭にかけての「最初の大移民時代」を上回り、おそらくその2倍近い規模になる。それによってアメリカの生産性は18〜36%向上するだろう。しかも効果はそれだけではない。財政の健全化が進み、より優秀な有権者や官僚が増え、イノベーションも活発になる。こうした変化を総合すれば、それは文字どおり「アメリカを救う」と呼べるほどのインパクトになるはずだ。

実は、こうした「大置換」1の小規模版は過去にも起きている。1865年から1924年にかけての最初の大移民時代だ。この移民の波によって、アメリカ社会の人口構成は大きく変化した。Comin、Easterly、Gongらの研究を手掛かりにすると、その結果としてアメリカ人一人当たり所得は6〜9%ほど高まった可能性がある。つまり、平均的なアメリカ人はその分だけ豊かになったということだ。

では、高度人材の移民を活用して国力を高めるとしたら、どうすればよいのか。一つの方法は、SATやGREのスコアを重視したポイント制移民制度を導入し、能力の高い人材を大量に受け入れることだろう。

だが、もっと良い方法がある。優れた移民政策は、個人の履歴書だけを見るものではない。その人が育った国の「履歴書」にも目を向ける。なぜなら、個人の経歴はいくらでも飾れるが、国の歴史や実績はごまかせないからだ。そして特に第二世代以降を見れば、「子は親に似る」という原則は、かなりの程度当てはまる。これこそが私の移民観の核心だ。重要なのは短期的な影響ではなく、移民の子や孫の世代が最終的にどう育つかという長期的な視点である。


その点については、AlesinaとGiulianoの次の指摘を忘れてはならない。

文化的な価値観というものは驚くほどしぶとい。人々がまったく異なる制度の国へ移住したとしても、その価値観はそう簡単には変わらない。変化するとしてもゆっくりであり、二世代以内に大きく変わることはまれだ。

その最も分かりやすい例が、貯蓄行動である。人々は出身国の文化から貯蓄に関する考え方を持ち込み、それを子どもたちにも伝える。貯蓄する文化もあれば、そうでない文化もある。そして、その違いは移住後もかなり長く残り続ける。たとえばアメリカでは、アメリカ生まれの中国系アメリカ人の退職に備えた貯蓄額は、同じくアメリカ生まれのハイチ系アメリカ人のおよそ3倍に達する。


また、韓国系アメリカ人二世の貯蓄額は、エルサルバドル系アメリカ人二世の約6倍だという。
これは福祉支出の削減につながる可能性がある。もっと重要なのは、一部の文化には他よりも強い「将来志向」があることを示している点だ。将来のために計画を立て、目先の利益に飛びつかない人々は、たいてい人生全般でも良い結果を残す。アメリカはそういう人々を積極的に受け入れるべきだ。


こうした「文化の移植」は貯蓄だけの話ではない。女性の就業行動、自助と政府依存への考え方、他人への信頼度など、さまざまな分野で確認されている。結局のところ、人はそう簡単には出身文化から切り離されない。だからこそ、賢明な国家であれば、その事実を移民政策に反映させるはずだ。

移民政策を誤った場合の代償は非常に大きい。悲しいことだが、歴史的に不利な条件を抱えてきた集団は、その不利な要素を新しい社会にも持ち込む傾向がある。

ここでBryan Caplanの興味深い比喩を紹介したい。

仮に、すべての移民がペストを運んでくると想像してみよう。そんな人々がある地域へやって来たら、地元住民は恐怖のあまり逃げ出し、不動産価格は暴落するだろう。


ジョーンズは、低技能移民の流入が地域社会に与える影響を、この比喩になぞらえる。

Filipa Sáの研究では、イギリスにおいて低学歴移民が1%増えるごとに住宅価格は1.7%下落したという。単純計算すると20%増なら約30%の下落だ。ジョーンズはこれを「カプラン的ペスト」と呼んでいる。

同様の現象はアメリカでも確認されている。Leah Boustanは、南部から北部へ移住した黒人の増加が白人住民の流出を招いたと報告している。またEllora Derenoncourtは、その人口移動が殺人率や警察支出、収監率の上昇を伴っていたことを示した。

こうした生活環境の悪化は住宅価格の下落や住民流出として現れる。一般には移民が増えれば住宅需要も増えると考えられがちだが、これらの事例では逆の結果が見られた。最後に、Bryan Caplanの『The Myth of the Rational Voter』に触発された言葉で締めくくりた
い。

将来の隣人は慎重に選ぶべきだ。

なぜなら民主主義においては、将来の隣人こそが、やがてあなたを統治する人々になるからである。

  1. 「大置換」は原文の great replacement に対応する。著者は、高度人材の大量移民による人口構成の変化を指して、この表現を意図的に用いている。 ↩︎

[Garett Jones, “Will Immigration Save America?”, Garett Jones (Substack), June 4, 2026]

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