アレックス・タバロック 「ドラキュラ伯爵の教え ~驚きに満ちている日常への感謝の気持ちを忘れるなかれ~」(2020年1月26日)

我々の今の生活は、100年前の人類の目からすると、ものすごく豪勢に見えるかもしれない。我々の平凡な日常は、実は驚きに満ちているのかもしれない。

Netflixで放映されているドラマの『ドラキュラ伯爵』(『Dracula』)を楽しく視聴した。スマートな作品だ。現代風にリメイクされていて、新しい解釈も提示されている。たったの全3話なので、多くの時間を費やさなくても満たされた気持ちになれる。

ドラキュラ伯爵が現代の世相――経済学も含む――についてあれこれとコメントを加える場面が出てくる。ドラキュラ伯爵が100年の眠りから覚めると、そこは(現代の基準からすると)ごく普通の家。その家の持ち主(キャサリン)にドラキュラ伯爵が語りかける。

ドラキュラ:あなたは大変裕福でらっしゃるに違いありません。

キャサリン:裕福ですって?

ドラキュラ:ええ。ご覧なさい、これにそれにあれを。この食事を。そちらの絵が動く箱 [1] 訳注;おそらくはテレビ。を。外には・・・ええと、ボブが言うには・・・車があるじゃありませんか。秘宝が眠っている館。それがあなたのお屋敷なんですよ。

キャサリン:オンボロ屋敷もいいところですよ。

ドラキュラ:キャサリンさん、わたくしは400年間にわたって貴族として過ごしてきたんですよ。それぞれの時代の最も裕福な方々のお城や宮殿に住まわせてもらってきたんです。でも、これほどじゃなかった。断じてこれほどじゃなかった! これほどまでに贅沢(ぜいたく)な暮らしは、ついぞ目にしたことがありません。この部屋なんて驚異というしかありません。私が知っている――あるいは、私が食らった――王や妃や皇帝のうちで、この部屋から出ていこうとなさる御方なんて一人としていないでしょう。

未来は驚きをもたらしてくれるということは知っていました。しかし、驚きが驚きでなくなってしまうなんて、驚きがごく当たり前の存在になってしまうなんて知りもしませんでした。


〔原文:“Dracula on Gratitude”(Marginal Revolution, January 26, 2020)〕

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1 訳注;おそらくはテレビ。
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