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ティム・デュイ「イエレン議長デビュー」

Tim Duy “Yellen’s Debut as Chair“(Tim Duy’s Fed Watch, February 11, 2014)


ジャネット・イエレンが下院金融サービス委員会においてほぼ一日中続くような骨の折れる証言を行ったが、これは彼女が連銀議長に就任して以来初となる公の発言だ。この証言によって、かなりの政策継続性を期すべきことがはっきりした。事実、彼女はそれを明言した。テイパー1 は続くものの、2015年まで続くゼロ近傍の金利予想もそれは同じだ。Fedが現在の道程から別の方向に舵を切るには、何らかのよりずっと興味深いデータが必要とされるだろう。

証言の中で、イエレンはこのところの経済の改善を強調したが、続いて目下過少雇用を示している指標について焦点を移した。

しかしながら、労働市場の回復は完全とは程遠いものです。失業率は連邦公開市場委員会(FOMC)委員が持続可能な最大雇用と整合的であると考える水準を依然としてかなり上回っています。こうした失業者のうち、6か月以上に渡って職を離れている人の割合は増大を続けて著しいものとなっており、パートタイムで働きながらもフルタイムの仕事に就きたいと考えている人の人数も非常に多いままです。アメリカの労働市場の状況を計測するに際し、こうしたデータについては失業率よりも強く注意を払う必要のあることが浮き彫りとなっています。

この点についてのグラフを貼っておこう。

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これは、失業率が労働市場の改善を過剰評価していまうために政策決定の際にはそれを割り引く必要があるというFedの見方をはっきりと示すものだ。したがって、Fedの政策決定者たちは長期間に渡って(for an extended period)金利を下限にしっかりと固定する余地があると信じている。正確を期すれば、こうした見方にはFedの内外から異論も出ている。例えば、フィラデルフィア連銀総裁のチャールズ・プロッサーは今日、資産購入はすぐにやめるべきであるという彼の考えを再度述べるとともに、Fedが金利についても手遅れになってしまうだろうと苛立ちを見せている。ブルームバーグから引用しよう。

ニューアークのデラウェア大学におけるスピーチの終了後、プロッサーは金利の引上げについて「我々が手遅れになりつつあるということを憂慮している」と記者らに述べた。投資家が金利の引上げを見越して行動するならば、「市場の後追いはしたくないと私は思っているが、結局はそうなってしまう可能性がある」

こうした見方はFedでは依然として少数派だ。ビジネス・インサイダーのマシュー・ボースラーによると、UBSのエコノミストであるドリュー・マータスとケビン・クミンズは、長期失業者がインフレに蓋をするというイエレンの考えに異論を唱えている。

私たちは長期失業者は必ずしも「今すぐ働きたい(ready for work)」ということではないと考えていて、したがって彼らが賃金の上昇圧力への重しになる効果というのは限定的だと思っています。言い換えれば、この著しく高い長期失業者数は、自然失業率が上昇したということを示しているのです。事実、私たちが様々な失業率についてインフレの予測する能力を検証したところ、労働統計局が発表している他の全てのより広範囲な指標よりも、標準的な失業率のほうが大きく優れていたのです。ただ長期失業者についてはイエレンと考えを異にしていても、私たちの研究は、これはおそらく驚くことではありませんが、パートタイム労働者の数についてはこれがインフレを抑える効果を持っているということを示しています。

どちらかといえば私は、これについては失業率がさらに6%近くに寄らないかぎりははっきりしないだろうと考えている。過去においてはこの6%という水準が賃金の上昇圧力と関係していた。

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賃金上昇が加速すれば、Fedがそれを労働力参加の下落は基本的には構造的なものだという説明の信用性を担保するものと見てとる可能性は高い2 。そうした場合、Fedが市場のオーバーシューティングにどの程度関心を払っているかによっては、彼らは金利の期待経路について見直しを始めるかもしれない3 。しかしインフレ圧力についてのそうした初期兆候がなければ、Fedは少しずつしか金利を上げないことで満足するだろう。

金融政策に関して、イエレンは彼女が現在の政策を立案したうちの一人であることを再認識させてくれている。

金融政策については、FOMCの金融政策への取り組みに相当程度の継続性を見込んでいることを強調させて頂きたいと思います。現在の政策戦略が策定された際に私はFOMCの委員でありましたし、雇用の最大化と物価の安定という連邦準備制度の法的責務を果たすよう設計されたこの戦略を私は強く支持しています。

イエレンは現在のテーパリングのペースが続く可能性が高いことを明らかにしている。

目下の労働市場条件の改善とインフレ率の長期目標への回帰というFOMCの予想を、今後出てくる情報が概ね裏付けるのであるのであれば、FOMCは資産購入のペースをこの先の会合でさらにゆっくりと減らしていくでしょう。

その後、質疑応答の時間の中でイエレンはしかしながらテイパーの停止の可能性も示している。ウォール・ストリート・ジャーナルのペドロ・ダコスタとヴィクトリア・マクグレーンは次のように書いている。

「FOMCがテイパーの停止について検討するのは見通しに大幅な変更があった時だと思います」とイエレン女史は議員らに述べた(中略)

(中略)「12月と1月の雇用報告には驚かされました。雇用創出のペースは私が予期していたものよりも下回っていました。しかしこの報告が意味するものを解釈するにあたっては結論を急がないよう非常に慎重になることが必要です」とイエレン女史は述べた。氏はこのところの悪天候が経済活動の足を引っ張った可能性があると付け加えつつ、現在の傾向が真に意味するものを理解するにはしばらく時間が必要だろうとも述べた。

1月の雇用報告は色々なものがごっちゃになっていて、失業率が6.6%へとさらに下落をした一方で非農業部門就業者数はわずか11.3万とまたしても(!!!!4 )がっかりなものだった。それでも、これが経済活動の現在のペースに関する読者諸兄の認識を劇的に変更すべきものとは私はまだ信じていない。非農業部門就業者数の上下は普通のことであって、例外的なことではないのだ。

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イエレンがこうした数値に落胆させられたことによって、私としてはそうなると強く考えているわけではないものの、2月の報告でまたしも悪い数字が出た場合にテイパーの停止が試みられる可能性がでてきている。私の基本的な考えとしてはしかしながら、たとえ2月の数字が悪かったとしても3月のFOMC会合の決定に影響は与えることないが、もしその次も悪い数字が続くのであれば4月の会合はその限りではないというものだ。Fedは資産購入をやめたいと考えていることは覚えておく必要がある。フォーワードガイダンスがうまくいっていると考えている限り、彼らはテイパーを停止することをためらうだろう。

新興市場のこのところの騒ぎはイエレンに行動を思い留めさせるほどではなかった。

国際金融市場のこのところの変動を私たちは注視しています。私たちの認識としては、現在の展開は今のところアメリカ経済の見通しに対して大きな危険性をもたらすものではないというものです。私たちは無論、引き続き状況を監視してまいります。

イエレンは、フォーワード・ガイダンスについて現在のエヴァンス・ルール5 の枠組みを繰り返し、その閾値が変更される可能性については触れていない。ウォール・ストリート・ジャーナルのジョン・ヒルゼンラートは、失業率が6.5%という閾値を下回った際にはFedは質的フォーワード・ガイダンス6 へと単に切り替えることを意味するものとこれを解釈している。どちらかといば私もそれに同意だ。

結論:状況は、Fedに現在の政策経路から逸脱することを促すほどには変わってはいない。

  1. 訳注;大規模資産購入の購入ペースの減少 []
  2. 訳注;賃金上昇が加速するならば長期失業者がインフレに蓋をするというイエレンの考えが間違いで、長期失業者というのは構造的要因であるとする上記のUBSエコノミストのほうが正しいとFedが考えを改めるという意。 []
  3. 訳注;過剰なインフレをFedがある程度心配しているのであれば、それを防ぐために現在の予想よりも前倒しで金利を引き上げるかもしれないという意。 []
  4. 訳注;このリンク先にあるように、デュイは1月の非農業部門就業数を20万と予想していたのであり、市場の予想も12.5万~27万というものだった。またデュイは12月の数字についても楽観的な予想をして外している。 []
  5. 訳注;シカゴ連銀総裁のエヴァンスが提唱したもので、インフレ見通しが2.5%を超えない限りにおいて、失業率が6.5%以下になるまでは現在の低金利政策を継続するというルール。2012年12月から採用されている。 []
  6. 訳注;明確な数値での閾値ではなく、「一定期間に渡り~」といったような質的表現によるガイダンス。なおこれまでのガイダンスの変遷については、拙訳ながらこのあたりを参考のこと。 []

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