アレックス・タバロック「却下された方が論文は引用されやすくなる?(それはどうかな)」(2018年9月10日)

[Alex Tabarrok, “Rejection is Good for Citation (maybe),” Marginal Revolution, September 10, 2018]

Science に掲載されたとある論文が,923の科学誌の論文8万本以上を検討して,こんなことがわかったと言っている――却下された論文の方が一発で掲載された論文よりも最終的には引用されやすくなる.

本稿では,初回の投稿で掲載された論文と再投稿で掲載された論文にわけて引用係数を比較した(2011年7月まで,すなわち掲載から3年から6年の期間について ISI Wed of Science のデータを利用).傾斜分布を示す引用回数に対して頑健な方法を用い,ごく一握りの非常に引用回数が多い論文が結果を大きく変えないようにした.本研究では,掲載年,掲載誌(したがってインパクトファクタ),そしてこれらの相互作用について統制した.同じ年・同じ学術誌でも初回投稿での掲載に比べて再投稿での掲載は有意に多く引用されていた.

著者たちの主張では,ピアレビューによって原稿の品質が向上するというのがもっとも有望な説明だそうだ.却下されることでキミの論文はさらに強化される,ってわけだ.それはありうる.でも,ピアレビューはよりよい論文ほど却下しやすいって説明ともこのデータは整合するけどね.

経済学の論文はおうおうにして長すぎる一方で,Science の論文はおうおうにして短すぎる.さっき引用した段落を考えてみよう.このあとに出てくると予想される情報はなんだろう? 「再投稿された論文が何回引用されてるか,でしょ!」 奇妙なことに,この論文はその数字を最後まで出してくれないままだ(ぼくが見たかぎりでは).さらに,データの議論といっしょに提示されてる図も見てほしい(下記).著者たちが言うには,引用回数のちがいはすごく有意だそうだけど,この図(対数尺度を使ってる)を見ると,その差はささやかなものだ.この図はいっぱい紙幅を使ってる.じゃあ,こいつから何がわかるだろう?

数字はどうなってるんだろう? これがねぇ…オンラインの研究資料セクションをのぞいてみても,数字は出していない.ただ,ある表から推測するに,再投稿された論文はおおよそ 7.5% ほど引用回数が多くなるらしい.悪い数字じゃないけれど,初回投稿で掲載された論文の引用回数はいっこうにわからないので,7.5% 多いと言っても引用回数の差は 1回にも満たないかもしれない.

ふしぎな点は他にもある.著者たちが言うには,掲載論文の約 75% は初回投稿で掲載されているそうだ.でも,Science や Nature のようなトップ学術誌は,投稿された論文の 93% を却下してる.この2つの数字は必ずしも矛盾しない.誰もが最初は Science に投稿するか,あるいは誰もが再投稿を Science には送らないとしたら,Science の掲載論文の 100% が初回投稿の論文で占められる.それでも,トップ学術誌で却下された 93% の論文はどこかにいくことになる(そして格下の学術誌でも却下される率は高い)わけで,システム全体で 75% はありそうにないほど高い.

経済学論文を読んでいると,ときどき,基本的な結果で納得したあとに続く頑健性のテストで精根尽き果ててしまうことがある.他方で,Science の論文は文脈や解釈の基本的なところで困惑させられっぱなしになってしまうことが多い.これもふしぎな話だ.重要な論文ほど原稿は長くなってしかるべきじゃないだろうか? それとも,科学者たちの時間は経済学者どもより価値が大きいから,科学者たちの論文は書くのも読むのも短い方が最適なんだろうか? 法律分野のレビュー論文の長さから推測するに,どうやら法律家たちの時間がいちばん値打ちが低いらしい.ただ,それは彼らの相談料や賃金には反映されてないようだ.科学分野の出版物の最適な長さに関する博士論文が書かれないかな.

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