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ポール・クルーグマン「不誠実な言動をやってきた連中がどの口で礼節を要求するのかね」

Paul Krugman, “Some Arguments Deserve to Be Uncivil,” Krugman & Co., September 26, 2014.
[“Wild Worsd, Brain Worms, and Civility,” The Conscience of a Liberal, September 14, 2014]


不誠実な言動をやってきた連中がどの口で礼節を要求するのかね

by ポール・クルーグマン

MEDI/The New York Times Syndicate

MEDI/The New York Times Syndicate


ストーニーブルック大学の金融論教授ノア・スミスが,『ブルームバーグ』にこんなことを書いてる――意見がちがう人たちに無礼な態度をとらない方がいいよ,だって相手の方が正しいってわかるときがくるかもしれないでしょ,だって.たしかにね:オーストリア学派経済学のことを「脳寄生虫」呼ばわりして,いったいなんの役に立つだろう?(ノアが『ブルームバーグ』コラムでこの前やってたみたいに

というか,ノアは「脳寄生虫」呼ばわりをしたときに正しいことをやっていたし,「礼節を重んじるべし」論では道を踏み外してるんじゃないかとぼくは思う.

まず,生き生きと目に浮かぶ言葉づかいは,正しく使えば大事な目的に役立ってくれる.「言葉は少々野卑であるべきだ」と経済学者のジョン・メイナード・ケインズは書いてる.「なんとなれば,無思慮の徒に対する思考の攻撃だからだ.」 なんなら,こんな風に言えなくはない――「わたくしは拡張的緊縮策の主張について疑いを抱いております.この主張が立脚している実証的な証拠は疑問の余地がありまして,…Zzzzzzz…」 あるいは,緊縮派は「信認の妖精さん」を信じてると非難したっていい.ほんとにダメダメな経済論を批判するのに,どっちの方がより効果的だろう?

さらに,礼節は尊敬を示す身振りだ――で,案の定っていうか,いちばんでっかい声で礼節を要求してるのは,尊敬を勝ち取るようなことをなんにもしてこなかった連中だ.あのときのノアは,オーストリア学派をあざけるだけの正当性があると感じていたんだろう(し,実際,正当性があった).だって,オーストリア学派は誠実な議論をしてこなかったからね.インフレがどんどん進むという自分たちの予測が盛大に外れたとき,彼らは間違いを認めることも,外れた理由を説明しようと試みることもしなかった.そのかわりに,彼らはとにかく現実を否定したり,「インフレ」の意味を再定義しようとしたりした.

さて,いろんな人たち,たとえば…えー,ぼくなんかが,無礼な物言いをしてるのを見かけたときには,その人たちはだいたい共通して,不誠実な議論をしてる連中を標的にしているのがわかるはずだ.ぼくはしょっちゅう,「ゾンビ説」だの「ゴキブリ論」だのと言う.ゾンビ説ってのは,証拠のヘッドショットをかましたはずなのにヨタヨタ徘徊し続ける考えのことだ――たとえば,「いまヨーロッパで困ってる債務国はどれもこれも危機以前に無責任財政をやっていた」なんて主張がこれにあたる.

「ゴキブリ論」ってのは,退治したと思ってたのに次々と沸いてくる考えのことだ.たとえば,「いまのような債務水準に直面した状況では,ケインズも財政刺激策をけっして提唱しなかっただろう」みたいな主張がコレ(ちなみに,1930年代のイギリスはいまよりも国内総生産に対する債務の比がずっと大きかった).で,いまぼくがやってるのは,不誠実な経済論の追及だ――すでに反駁されたのになんども持ち出される経済論を追及してるんだよ.

ゾンビ説やゴキブリ論だけが不誠実な主張のすべてじゃない.ぼくに関するかぎり,最悪なのは,実際にやった発言の責任を頑としてとろうとしないやつだ.「髙インフレが実現しないからといって,必ずしも私が間違っていたことにはならない,なぜなら私はたんにそうしたリスクがあると述べたに過ぎないからだ」だの,「オバマケアの支出によって赤字は1兆ドル増加すると私が発言したとき,私はなにも読者の誤解を誘おうとしていたわけではない.なぜなら,適正価格医療保険法が全体として赤字を減らすことを否定していたわけではないからだ」だのと,連中は言う.で,もちろん,この種の不誠実なことをやっていた連中は,都合がわるくなると,礼節がどうのこうのと大声でわめくわけ.

正直で誠実な経済論争をやってるときなら――たとえば,量的緩和の効果をめぐる進行中の論争なら――ぜひぜひ礼儀正しくやろうじゃないの.

だけど,ぼくの経験では,礼節の要求を言い立てるのは,ほぼいつでも,そうやって要求してる尊敬の権利をとっくに剥奪されてる連中なんだよ.

© The New York Times News Service


Comments

  1. 原田 大介 says:

    いつも拝読しております。
    誤植と思われる箇所を発見したので、記載しておきます。

    必ずしも私が間違っていたことにはならない,んぜなら私

    なぜなら私~

    ですよね。細かくてすいません。

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