アレックス・タバロック「プラットフォームの経済学」(2020年11月17日)

[Alex Tabarrok, “Platform Economics in Modern Principles,” Marginal Revolution, November 17, 2020]

どうして Facebook は無料なんだろう? どうしてクレジットカードは無料どころかお金がもらえたりするんだろう? 独身者向けのバーはたまに女性限定でドリンク無料にしつつ,男性にはそうしないんだろう? こうした問いは,どれもプラットフォーム経済学の領域に属してる.プラットフォーム経済学は,うまれたばかりの分野だ.ティロールとロシェが書いた2003年の重要論文が,事実上,この分野を生み出したにひとしい―――あと,その論文は,2014年にティロールがノーベル経済学賞を受賞した理由のひとつにもなっている.新しいとはいえ,プラットフォーム経済学は,現代経済にとって必要不可欠な財を取り扱っている.そこで,プラットフォーム経済学の背後にある直観をいくらかでも『現代経済学の原理』で教えなくちゃと,ぼくとタイラーは考えた.とはいえ,学生たちが学ぶべき新しい題材はもう十分にあるので,ぼくら2人は自分たちに試練を課すことにした―――すでに学生たちが知っている原理を使って,プラットフォーム経済学の直観的な部分を解説するという試練だ.意外にも,プラットフォーム経済学はたった2つの原理で教えられる:外部性と弾力性だ.

〔『現代経済学の原理』で〕外部性を扱った章では,学生にパズルを1つ出している.どうして一部の企業では従業員に無料でインフルエンザ予防注射を提供しているんだろう? この動画で憶えやすく図解しているように,答えはこうだ:そうした企業は「外部性を内部化している」んだ.従業員が予防注射を受けると,その企業の他の従業員たちも病気にかかりにくくなる.原則として,従業員たちがお互いにお金を払い合うかたちであってもこれに劣らない結果をえられる.でも,それには取引コストがかかってしまうから,この解決法は実践しがたい(コースの定理).他方,企業はすでに従業員たちとの取引にたずさわっている.その結果として,予防注射の価格に対する弾力性と,ワクチン接種した従業員に対する病欠日数の弾力性におうじて,企業は予防注射のお金を代わりに払える.

さて,これが Facebook にどんな関わりがあるんだろう? 広告を見ることを,予防注射を受けることに少し似たものだと考えてみるといい―――広告を見るのは,見る本人に便益があるけれど,ちょっぴり面倒でもある.だから,選択肢さえあれば,広告をあまりたくさん目にしないですませるかもしれない.他方で,広告主たちは,みんなに広告を見てもらいたがっている―――つまり,広告を目にする Facebook 利用者たちは,広告主たちに正の外部性をうみだしている.プラットフォーム企業の Facebook は,この外部性を内部化している.つまり,読者たちに無料で Facebook を売ることで,広告を目にする費用をかわりに払ってるんだ.『現代経済学の原理』でも書いたように:

ひとつ想像してみよう.読者と広告主の両方に Facebook がプラスの価格を提示したとする(PR>0 かつ PA>0).でも,読者たちはこの価格に敏感に反応する見込みが大きい.このため,価格を少し下げると読者数は大きく増える(とても弾力的な需要があるってことだ).じゃあ,Facebook が読者向け価格を下げて,読者数を増やしたと想像してみよう.読者が増えると,Facebook は広告主たちにもっとたくさん請求できる.つまり,PA は上がる.それどころか,広告主への需要が十分に増えれば,〔広告主たちは〕読者にもとめる価格をゼロにすべく Facebook にお金を支払うことすらできる.このように,Facebook の意志決定のカギとなっているのは,[1] 価格を下げたときに Facebook の読者がどれほど増えるかってこと(読者の弾力性),[2] そうした読者たちが広告主たちにとってどれくらい値打ちがあるかってこと(広告主にとっての読者の外部性),[3] 広告主にもとめる価格を Facebook がどれほど高くできるかってこと(広告主の弾力性),この3つだ.

さらに詳しくは教科書の方で!


※訳者より:元記事についていたコメントを1つ:

ちょい待ち.

図に欠けてるものがあるね:外に出回るコンテンツを提供する(読者以外の)コンテンツ提供者がいない.

プラットフォームの *上に* コンテンツ提供者を置くといい.そしたら,多角的なプラットフォームができあがる.

ぼくはここのコメント欄のコンテンツ提供者で,しかも,お金をもらってない.みんなここに来るのはコレ目当てなのに.

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