アレックス・タバロック「失敗は成功の母」(2021年4月3日)

[Alex Tabarrok, “Failure is the Mother of Success,” Marginal Revolution, April 3, 2021]

Jeffrey E. Harris の新しい論文が出た:

有効な HIV ワクチンを産み出そうと数十年におよぶ努力が続けられたのは,公的・私的リソースの無駄遣いとは言いがたい.その反対に,開発過程で獲得された科学的ノウハウは,新規なパンデミック SARS-CoV-2 ウイルスに対するワクチン開発で決定的に重要な基礎として役立った.本稿では,HIV ワクチン研究が現実世界でたどった物語を語り直す――そこには,開発における水先案内の見誤りやつまづきも幾度となく現れる.この物語からは,ウイルス用ワクチンがいまどれほど洗練されているのかが浮かび上がる.HIV 関連の研究開発には,一般的な溢出効果にとどまらないものがある.それどころか,HIV ワクチン試行が繰り返し失敗したことが,今日の成功したワクチン技術の開発をすすめる決定的な刺激となっている.「HIV ワクチン開発はたんなる袋小路にすぎなかった」「最近の COVID-19 ワクチン開発は,エボラ・MERS・SARS-Cov-1 およびヒト・パピローマウイルスに対して成功したワクチンの末裔だ」という反論を,我々は反駁する.そうした成功をおさめたワクチンも,HIV ワクチン開発の変遷に負うところが大きい.

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