アレックス・タバロック 「クローニー国家主義」(2003年11月1日)/ タイラー・コーエン 「オリガルヒのための緊急経済対策」(2014年12月27日)

●Alex Tabarrok, “Crony Statism”(Marginal Revolution, November 1, 2003)


ヨハン・ノルベリ(Johan Norberg)が、ロシアに関する憂鬱(ゆううつ)なニュースを伝えている。

アレクサンドル・ヴォローシン(Alexander Voloshin)が大統領府長官を辞任したらしい。このニュースは、ロシアで「シロヴィキ」――KGB(国家保安委員会)の流れを汲むFSB(連邦保安庁)の出身者で構成されるグループ――が勢力を強めている一方で、自由主義派の経済学者および前大統領のエリツィンと結び付きの強い陣営の凋落を示すさらなる兆候だと言える。ロシアにとっては、悪いニュースだ。すべては、先日の土曜日に石油王のミハイル・ホドルコフスキー(Mikhail Khodorkovsky)が突然逮捕されたことからはじまる。ホドルコフスキーとその他のオリガルヒとの違いはどこにあるかというと、際立ってあくどいのがホドルコフスキー・・・ってわけじゃない。ホドルコフスキーが社長を務めていた石油大手のユコス社は、透明性が高くて、法令をきっちりと遵守する企業として有名だ。ホドルコフスキーとその他のオリガルヒとの違いは、ヤブロコ右派連合(SPS)といった民主主義を志向する政党を支援して、プーチンに盾突いた点にある。ホドルコフスキーが逮捕される前には、ヤブロコの党本部にFSB(連邦保安庁)のガサ入れが入り、12月7日の下院選挙に備えた作戦が収められていたパソコンが押収されている。報道の自由が破壊されたと思ったら、次はこれだ。プーチンがトップに立つロシアを民主主義国家と呼ぶのは、もう無理だ。スウェーデンの作家であるヴィルヘルム・ムーベリ(Vilhelm Moberg)による造語を拝借すると、「デモクーターシップ」(“democtorship”)国家――民主主義の外面をした独裁国家――という呼び名がしっくりくる。

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●Tyler Cowen, “Stimulus for Russian oligarchs”(Marginal Revolution, December 27, 2014)


カレン・ダウィシャ(Karen Dawisha)の『Putin’s Kleptocracy: Who Owns Russia?』(『プーチン流の泥棒政治:ロシアは誰のものか?』)――日に日にその重要性が増している一冊――より。

2008年に世界金融危機の煽(あお)りを受けて、ロシア経済が崩壊しかけた時のことだ。ロシア政府は、まず何よりも先に、国営銀行の救済に向かい、総額で5兆ルーブル(およそ2,300億ドル)もの額の公的資金を注入した。その実情は、大臣たちが自分たちを救うために発動した「私的な」緊急経済対策と呼ぶにふさわしいものだった。というのも、大臣たちは、国営銀行の重役を兼務していたからである(例えば、財務大臣のクドリンは、VTB銀行の重役でもあった)。ルーブル安を食い止めるためでもなく――ルーブルは、1ドル=23ルーブルから1ドル=36ルーブルへと急落していた――、株価の暴落を食いとどめるためでもなく――株価は、それまでの2割程度の水準にまで落ち込んでいた――、「私的な」緊急経済対策のために国家予算が投じられたわけだが、その結果はというと、資本逃避を加速させただけだった。クドリンの見積もりによると、2008年10月から2009年1月までの間に、2,000億ドルもの資金が国外に流出したという。「私的な」緊急経済対策に投じられた国家予算とほぼ同額の資本逃避が生じたわけだ。

膨大な研究成果が詰め込まれている一冊だ。

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