ポール・クルーグマン「アメリカの保守主義を再定義する」

Paul Krugman, “Redefining Conservatism in the U.S.” & “Market Domination,” Krugman & Co., March 14, 2014. [“Nation of CRINOs,” The Conscience of a Liberal, March 7, 2014; “Silicon Oligopsony,” The Conscience of a Liberal, March 1, 2014]


アメリカの保守主義を再定義する

by ポール・クルーグマン

Drew Angerer/The New York Times Syndicate
Drew Angerer/The New York Times Syndicate

ぼくらがほんとに必要としてる名称はこれだ:「名ばかりの中道右派」

『ワシントンポスト』の政治科学ブログ『モンキー・ケイジ』(おすすめ)のジョン・サイズが,この前,よく繰り返されている主張をとりあげている.その主張とは,「アメリカは中道右派の国だ」というもので,その主な論拠は,「保守派を自認する人の方が,リベラルを自認する人をかなり上回っている」のを示す世論調査にある.サイズ氏は,3月6日付のポストでこう指摘してる――あれこれの問題について見解を彼らに質問してみると,自分たちで名乗ってる名称に反して,見取り図は反転してしまう:「こう見てみると,アメリカ人の30パーセント近くは『一貫したリベラル』だってことになる――3割が,リベラルを称しリベラルな政治見解をもってる人たちになる」と政治学教授のサイズ氏は述べる.他方で,「15パーセントしか『一貫した保守主義者』はいない――保守派を自称し保守的な政治見解をもってる人たちはそれだけしかいない.30パーセント近くの人たちは,保守派を自認しているけれど,実際にはリベラルな見解を表明している人たちだ.合衆国は,名ばかりの中道右派の国なのが見えてくる.」

また,サイズ氏はこうも推測している――保守派を自称するとき,その人たちはライフスタイルの選択について語っているんじゃないか.これが意味するのは,その人たちの個人的なライフスタイルであって,必ずしも自分の選択を他人に押しつけたいという欲求ではないんじゃないか.教会に通う人たちや,配偶者に誠実をつらぬく人たちや,自分の子供に献身する人たち,そういうアメリカ人は,保守派を自称する――でも,往々にして,この人たちは最低賃金を高くしたり,いまより強固な社会的セーフティネット・プログラムを好ましく考える人たちでもあるわけだ.

基本的に,経済面の保守主義を支持する有権者はごく少数だ.それにも関わらずこれまでしばしば政策を支配してきたのだとして,それは,組織化されたお金の力と,政治的エリート層で保守的思想が人気を得ていることに関わる.

© The New York Times News Service


市場支配

このまえ,デイヴィッド・ストレイトフェルドが『ニューヨークタイムズ』に,トップIT企業が従業員をとりあって競争しない合意をしたことを取り上げた記事を書いていた.あれはほんとにいい記事だ(ここで読める: LINK).

「なんらかの技術分野を支配する競争に勝利した企業は一時的な独占者になる」という考えに.ぼくらは慣れっこになっている.それどころか,その一時的な独占は,首尾よくイノベーションをなしとげたことへの報酬だと考えられている(けど,その技術の考案者や第一人者になるのではなく,たんに早々に市場を閉じ込めることへの報酬になる場合もときどきある).その一方で,あまり言及されないことがある.それは,トップにいる少数の企業は特定の特化した労働市場も支配しているという点だ.この支配により,そうした企業には結託して賃金を低く抑えるインセンティブが生じる.そして,実際に結託しているし,ともあれかつてそうしてきた.

とあるスコットランド人は,かつてこう言った:「同業の人々は,めったに会うことがない.歓楽や気晴らしで顔を合わせることすら多くはない.だが,会話を交わせば.とかく公共に対する共謀をつくりあげるばかりなのだ」

でも,そうなるとアダム・スミスは左翼野郎だったってことになるね――つまり,彼は紙幣の方を好んでいたし,銀行規制はやった方がいいと考えていたわけだもの.

© The New York Times News Service

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  1. なんかの間違いだと思いますが、「自分たちで名乗ってる名称に反して」というフレーズが二回出てきます。

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