ノア・スミス「トンマなアンケート調査に気をつけて」(2024年3月9日)

2ヶ月ほど前,こんな調査結果がメディアを騒がせた――アメリカ人の若者の20%がホロコースト否定派だというんだ:

The Economist/YouGov の新しい世論調査によれば,18歳~29歳のアメリカ人の5分の1が,ホロコーストは迷信・でたらめだと信じている.

この質問で調査対象になったのは約200名の人たちという小さな標本でしかないが,反ユダヤ憎悪の高まり――とくに,アメリカの若者たちのあいだでのそれ――に対する懸念に信憑性を加えている.

この調査の問題点はとにかく次の一点につきる――調査はまるっきりのゴミなんだ.この調査は「オンラインでのオプトイン方式世論調査」だった.つまり,インターネットでこの世論調査を見つけた人が誰でも回答できるものだったんだ.自分からネット世論調査を検索しにいきやすいのはどういう人たちだろうね? ネットの匿名荒らしと,あとは,世論調査にふざけた回答をしたくてしょうがない人たちだよね.これこそ,調査実施者が接触する相手のリストを選別する調査に比べて,オプトイン方式の世論調査はたいてい大きく品質で劣っている理由だ.

それにもちろん若者たちが回答者に含まれる調査だととくに品質は低くなる.若者は,ネットで世論調査をしっちゃかめっちゃかにしてやろうと企ててるネット荒らしやいたずら好きである見込みがとても高い.たとえば,2022年の調査では,18歳~29歳の回答者のうち 12% が,「自分にはオハイオ級原子力潜水艦を操縦する資格がある」と答えている(本当の数字は,事実上のゼロだ):

Source: Pew

そういうわけで,オンランの世論調査はぜんぜん信頼できない.もっと高品質な調査だったらどういう回答になってるだろう? ピューリサーチの “American Trends Panel” という,ずっと注意深く実施された調査によれば,ホロコースト否定派のアメリカ人の若者は 3% でしかない.これは,他の年齢層と同じ数字だ:

Source: Pew

それに,こんなに低い数字ですら,わざと虚偽の回答をした荒らしやいたずら好きによって実態より大きくなっているかもしれない――およそありとあらゆる世論調査を悩ませている,いわゆる「トカゲ人間の定数」ってやつだ.

というわけで,ここでの教訓はこちら:《大勢の人たちがどうかしてることを信じてると示してる単発の世論調査にうろたえるべからず.》 少なくとも,うろたえる前に世論調査の手法を確かめよう.できれば,他の世論調査でも同じ調査結果が確証されるまで待った方がいい.ゴミ世論調査に大騒ぎするのは労力と注意と精神衛生の無駄遣いだ

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